温泉旅館一泊二日の旅 あおい様からのキリリク小説です。もう一ヶ月以上も経ってしまったことにお詫びお詫びしてもしたりない気持ちでいっぱいいっぱいでした。本当にごめんなさいごめんなさい にっきにて申し上げた通り当サイトのうちは兄弟(サスイタ)をさらけ出してます。 「ただいま」 返って来ない返事の代わりに答えたのは一枚の紙だった。 「温泉旅館一泊二日の旅」 任務から帰ってきたサスケが見つけたチケットにはそう書いてあった。 一枚だけ、ということは既に兄は向かっているのだろう。サスケは場所が記されていないチケットを見やりながら小さく舌打ちをした。 そこに一声鳴いて舞い降りてきたのは漆黒の鳥。一点普段見かけるものとの違いを見つけたサスケはすぐに兄の口寄せしたものだと分かった。 「案内してくれ」 コクリ、と一つ烏が頷けばすぐに飛び立つ。サスケもそれに続いて外へ出た。 着いた先は一軒の宿。 古風な造りで、長年続いてきた老舗を感じさせる。それ程人がいないところを見ると、隠れ名所のような場所だろう。静かに建つ美麗なこの建物を見てサスケは一言呟いた。 「…兄貴らしい」 「そうか?」 ふいに聞こえた愛しい声。愛しいなんて口が裂けても言えないが、鼓動が高鳴った原因は驚きだけではなかった。 サスケが振り向いたときには既に烏はイタチの腕に止まっている。優しい手つきで烏を撫でている。契約した動物だと言い聞かせなければ嫉妬で胸が裂けそうだ。 サスケが安堵したのは、烏をイタチが消してからだった。 「いい場所だろ?」 「…あぁ」 部屋も結構広い。イタチは窓辺に座ってそこからの景色を眺めている。サスケも覗いてみれば里の巨大な門が見えた。 どこかしら里が見える場所であるのは予想していた。どこまでも兄らしい宿の取り方に口元が綻んだ。 「オレは先に入ったから早く行ってこい」 イタチが自分の髪を指さして言う。濡れた髪が色っぽいなと考えるのを止めて返事をしてから温泉へと向かった。 「…ハァ」 いい加減この靄を晴らす方法を考えなければ。しかしナルトからのアドバイスのように直接伝えるなんて出来やしない。 しかしいつまでも抱え込んでいたって仕方がない。兄に今日こそ思い切って打ち明けてみることを決意し、湯から上がった。 「…いねぇ」 部屋にはイタチの姿はなく、紙一枚さえない。先ほどの決意は何だったのかと一瞬でも考えれば薄れていく。反対に膨らんでいくのは不安と心配。急いで部屋から出て廊下を渡って探す。 ふと考えれば居場所なんてすぐに分かった。イタチが行きそうな場所は部屋以外にあるならここしかない。 「心配かけやがって」 サスケが辿り着いたのは縁側。そこにイタチは居た。こちらが少しだけだが走り回って探したことなんてお構いなしに、ゆるりと座って池に手を浸けている。 定期的にカランと添水が音を鳴らす。 「すぐ戻ろうと思っていたんだ」 サスケには目を向けず池を見ている。池の中の錦鯉が時々餌と思ってイタチの手をつつく。それが面白いらしく、イタチも笑っている。戻る気ないなと小さくサスケは溜息をついた。 サスケが来なければずっとイタチはここに居ただろう。 「折角温まったのに風邪引くぞ」 まだ夏は終わったばかりだが、夜の空気は冷たい。病弱なイタチならば尚更冗談にはできない。 そんなサスケの心配を他所にイタチは手だけでは飽き足らず、足まで浸けた。無論着物も水浸しである。 「何やってんだよ!」 見てられなくなったサスケはすぐにイタチを引き上げる。きょとんとしているイタチに反省の色はない。 サスケはイタチをひょいと腕で抱えた。ニコニコと微笑んでいる姿に怒る気力も失せていく。 「一旦部屋戻ったら風呂だからな」 「お前もな」 クスクス笑うイタチの言葉にはっとして水浸しの自分の着物に気付く。イタチを引き上げた時にサスケも水浸しになったのだ。 溜息と同時に風呂ど考えていたことを思い返した。言うタイミングも見ないまま再度風呂に入るのかと思うと気が進まない。 「好きだ」 楽しそうに言うイタチの言葉に一瞬ビクリと反応するが、鈍感で天然な兄のことだから池の鯉か始終のこのやり取りのことだろう。 どうやら自分の想いを伝えられるのも遥か先になりそうだ。 「…悪くねぇ」 兄はどう受けとったのか、とても嬉しそうに微笑んだ。 サスケは伝えようと思えばいつでも言えるけど、兄が何度言っても兄弟としてのものとしてしか理解してない。ならいっそそれでいいよ、なサスイタが根っこ。 兄は何し出すか分からないから弟の心配増えて心配性になるんだろうな(当サイトの兄は奇怪です) そんなことは置いといてあおい様本当に遅くなってすいません! もっと早く作れば良かったんですが…(TДT) キリリクありがとうございました! 尚、キリリクについては日記に時たま載せますのでよろしくお願いします。 2011/9/20 |