Shield

※あらすじ
最近暗部に入隊したイタチは、期待されてどんどん任務が入ってくる。
一方、任務ばかりで本来の目的を見失っているのではという不安から一族の監視が強まる。

そんな背景を知るシスイの元に任務から帰ったイタチがくる。人数多くて返り血だらけで家に帰るわけにもいかず、森の池に行くことになった。



髪を掻き上げて顔を水に浸す。
絹のように長く美しい漆黒の髪は背で緩く束ねられている。髮止めに手をかけると、その髪は背に自然と流れた。

「わざわざすみませんシスイさん」

少し離れた距離にいるシスイに話しかける。パチパチと火の粉が舞っている音がする。匂いがしないことと、時間的に先程ということからしてまだ生焼けだろう。

「別に気にすることねぇよ」

木を火に焼べながらシスイが答える。森の中とはいえ安心はできない。おおらかに笑って答えながら、真剣に周囲に気を配る。気配はない。どうやら監視はされていないようだ。

「シスイさん?」

反応して声の方を見ると、先程渡した着物を身に纏ったイタチの姿が視界に入る。深い藍染めの着物はイタチの落ち着いた雰囲気をより一層際立たせるだけでなく、白い肌も強調させていた。

「…イタチ」

同じ性別であるにも関わらず息を飲む程美しい。昔からその容姿のせいで何度も目をつけられていたというのに、本人は全く自覚していない。

「お前…女だったか?」

「何寝ぼけたこと言ってるんですか」

かなり癪に障ったのか、むっと眉間に皴をつくる。殴られなかっただけマシかと苦笑を漏らした。
だがそれだけでイタチの気が晴れる訳がない。

「悪かったから機嫌直せよ、な?」

よしよしと撫でてやるが機嫌を直す気配はない。仕方なく生焼けの魚を一本持ちイタチに渡した。

「全然焼けてないですよ」

「食べるんじゃねぇよ、持っとけ」

細い指先で串を持ち、じっとシスイの方を見る。その目がまた誘っているような上目遣いであるから、シスイは魚を見ることぬ専念した。
素早く印を組んでチャクラを練り、火遁を発動させて魚を程よい加減に焼き上げた。

「ほら、喰っていいぞ」

ぱちぱちと幾度かの瞬きを繰り返す。見上げてくる視線を笑って受け止めてやれば、すぐに魚に目を戻して口へと運ぶ。

「…美味しい」

「そりゃあ良かった」

焼き加減が強かったかと思ったが大丈夫なようだ。イタチは気分が晴れたらしく、嬉しそうに頬張っている。その様子は年頃の子供となんら変わりはしない。
年相応であればいいのに。
そう思うも、イタチ自身がそれを拒む。周囲の期待に応えるために背伸びをする姿はシスイにとって胸が痛かった。


「お前が無理することはねぇよ」

そう伝えたときもあったが、イタチの反応はそれ程いいものではなかった。
更に悪いことにそれが原因となって喧嘩までしたものだ。かなり苦い思い出となって刻まれている。だがそれからイタチは自分の前では素直で、無理はしなくなった。シスイにとってそれは抱きしめたくなるくらい嬉しかった。無論イタチには叱れたのだが。
それからだった。余計に目の前にいる年下が愛おしく感じるようになったのは。

「…イタチ」

頬に流れる髪に触れる。まだ乾いていないため、少しばかり濡れている。その髪に触れているうちにそれだけでは我慢できなくなって、イタチの背後に回って後ろから抱きしめた。

「な、何するんですか、こんなところで!」

「…大丈夫だ。誰も見てねぇ」

それでも遠くにまだ居るかもしれない。あるいは気配を消して近くにいるかもしれなかった。
それでも構いはしなかった。

「どうしたんですか?」

いつもと違うと違和感を覚えたイタチが尋ねる。こんなに強く抱きしめられるには訳があるに違いない。
だがシスイはそれには何も答えなかった。

(死んでもお前を守ってやる)

イタチを抱きしめたまま、届かない思いを胸に誓った。




















ひっさびさの更新です。
そして初のシスイタでした。
本誌影響で書きはじめたものを仕上げました。
(かなり放置してました!)

シスイさんについてはまだまだ判らないことありますけど、兄さんを当時唯一守ってあげられることができた人ではないかと思います。

2011/9/13

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