諸恋 「Un arco iris」のゆうき様に捧げたもの。 両想いのサスイタです。 「イタチ」 振り返るとすぐにサスケがイタチの頬に手を当てる。いきなりのくすぐったさにイタチは目を細めた。それから優しくイタチを抱きしめる。 「おはようサスケ」 優しいイタチの声。その声はいつもと変わらず穏やかなものだ。 もうずっと触れられることはないと思っていた。イタチが起こしたあの夜の事は悲しみから怒りに変わり、そして真実を知り、絶望となった。 だがイタチは生きていた。それを知った時は飛び上がる程に嬉しかったが、会ったイタチは満身創痍の状態で病のこともあって、かなり衰えていた。今にも冷たくなりそうなイタチをサスケは抱えて必死に看病した結果、回復し、今に至る。 しかしサスケには悩みがあった。 「久しぶりに出かけようか」 抱きしめられるサスケの温もりを直で感じながらイタチは言った。今日は体調も良さそうだ。サスケはすぐに承諾した。 着いたのは団子屋。 イタチが嬉しそうに軽い足取りで外の赤い番傘の下の椅子に座る。先に座ったイタチは後から歩くサスケに手招きした。 昔は見慣れていたその光景も今になれば懐かしい。だが昔とは違う。そんな思いを抱えながら足取りを速めることなくイタチの隣に腰を下ろした。 「フフ、昔のように駆けてこないか」 「当たり前だろ、もうガキじゃねぇから」 今、あの頃に戻れたのなら。サスケはそう思うことが何度となくあった。だが今更どうしようもないのも事実。結局思考を停止するのが常であった。 「団子2皿ですね、少々お待ち下さい」 え、と横を振り向くと団子屋の娘が店内に消えていき、イタチがニコニコと笑っていた。 「…2皿食べる気か?」 「違う。お前の分だ」 「あのなぁ…」 続く言葉よりも先に運ばれてきた2皿の団子。2本並ぶ団子を見ながらため息をつく。 自分が食べないことを知ってるくせに。横ではイタチが待ってましたと言わんばかりに早速1つを口に入れて咀嚼している。 やはりイタチは分かってないのだ。自分の想いさえ分かっていないのだからそれはそうだろう。 何度も想いの込めた「好き」を伝えたところで、返ってくるのは兄弟としての「好き」だった。 「愛してる」そう言えば伝わるのだろうか。 この鈍感で綺麗な兄に。 「…食べないのか?」 団子を飲み込んでから、首を傾げる仕草にまた鼓動が高鳴る。あの動く白い喉、傾げたときに揺れる流れる髪…サスケはイタチから視線を外して答えた。 「食べれる訳ねぇだろ」 もういっそ愛しい人にあげてもいい。もうこのまま伝わらなくていい。 サスケは投げやりになっていた。 ため息をつこうとした時に頬に伝わる柔らかい感触。まさかイタチが……!と思い横をみる。 それはイタチが持つ団子だった。イタチが団子を持って頬を突っついていた。 「何してんだ」 「食べられないんだろ?」 そういう意味じゃないっ! どこまでこんなやり取りをしなければならないんだとサスケは苛立つ。自分の悩みも上手くいかないのだから余計に怒りが増すが、愛しい人相手に怒りをぶつけられずにいる。そんな悪循環に苛まれていた。 「嫌いだってこと知ってるだろ」 抑え切れない部分の苛立ちを表しながら言うも、イタチは平然としている。 「好き嫌いはよくないからな」 そしてなおも団子を向けてくるイタチに仕方なく折れることを決めるが、一向に団子を離す気配がない。 まさか…と二度目の思いを巡らすが、どうやらそれであるようだ。高鳴る鼓動や心臓が跳ね上がりながら、イタチの持つ団子に顔を近づけ一つ口に含んだ。 「……甘い」 行為が、である。そんなこと気にも止めずイタチは残りを食べると店内に向かって「ごちそうさまでした」と言った。 一方のサスケはというと、先程のことが感覚として残っていて、もういっそこのまま突き進んでやろうと決心したので立ったイタチの腕を掴んで早足で団子屋を去る。イタチより先に進む自分が表情を見られることはない。 「好きだ」 「オレもだ」 「…愛してる」 「オレもだ」 「!!?」 同じ調子で言うから聞き間違えたかと振り返る。真っ赤な顔を見られることも構わずに。 サスケが見たイタチは普段通りニコニコしていた。 「そ、それって…」 「帰ろう」 紡ぐ言葉はイタチに掻き消され、逆にイタチに引っ張られる。 先のことは冗談か本気か、今だ呆然としているサスケは、引っ張る兄の表情を知ることにまで気にかける余裕がなかった。 私の憧れであるゆうき様に相互記念として捧げる「サスイタで両想いな生還設定」です。 かなりリクが遅くなったことを先にお詫び申し上げます…ごめんなさい! 両想いでもきっとサスケは一人悶々と考えているような気がします。(当サイトのサスケはよく一人で葛藤してます) ゆうき様、これからもよろしくお願いします! 2011/8/29 ←top |