夏休み

一体どうしたというのだろう。
少し先にある金魚掬いを誘おうと、サスケの名を呼ぼうした矢先に後から口を塞がれたまま引っ張られてきてしまった。
着いたのは本堂の裏。境内は提灯の明かりで賑わっているが、鳥居をくぐった先の本堂はまるで深い森のようにひっそりとしている。そんな本堂の裏なのだから、暗くて何も見えない。
ただ地に押し倒されてる今、雑草とその間の土の感触と危険な状況であることは掴めた。

「少し付き合えよ」

暗い上に押し倒された勢いでコンタクトが外れたため視界がぼやける。何をされるか全く把握出来ない今、声のする方を警戒するしか出来ない。

「ーッ!?」

いきなり両腕を掴みあげられ、本堂の壁に押し付けられる。両腕はすぐにロープで縛られた。殆ど時同じに一人がイタチの上に跨がってきた。手も足も動かせない今、必死に首を振って抵抗する。

「アンタ、綺麗だな」

顎を持ち上げ、耳を舐める。びくりと肩を震わせる様が楽しく、しつこく舐めていると、次第にイタチの体から力が抜ける。
それを見計らって髪から簪を抜く。するりと絹のような髪は散らばり、荒い息も相まって美艶に魅せている。

その姿態にぞくりとしたのは、おぞましかったからではなく、そそられたからだ。
少し熱の帯びた顔は赤く、体は汗ぐんでいる。長い髪が肩や顔にくっついており、なまめかしい。

手を鎖骨辺りの着物に触れる。
まさか、とイタチが思ったときには既に左肩は外気に触れていた。しかし、イタチは目の前の光景に呆気にとられていた。

先の男は離れたところで伸びており、変わりに見知った男が自分の近くにいた。

「サ…サスケ」

「ったく何やられてんだよ」

いきなりのことで驚いたままのイタチの浴衣を直してやる。
サスケが来てくれたことの安心感に浸る間もなく、イタチはあっと立ち上がろうとした。
しかし腰が抜けたのか、立てないままサスケの肩にもたれ込む。

「どうしたんだよ」

「さ、さっきの奴が簪取って…」

はぁ!?と呆れた声を出してから、イタチを抱えて男に近付く。だが簪は既に割れており、修復不可能な状態にあった。

「サスケから貰った…簪……」

「もう簪とも分からねぇな」

はぁと落ち込むイタチに苦笑する。暗いため、本堂の正面に回るために移動し、石段に座る。

「別に簪くらいどうってことねぇだろ。それより」

ペチッとイタチの額を叩く。
ぼやけたイタチの視界ではサスケがどんな表情か分からない。

「ホストの次はキャバクラか?」

「そんなんじゃない」

むっと頬を膨らませる隣のイタチはサスケのよく知った兄の表情だ。これじゃあ格好良いも綺麗もないな、と家で思ったことを思い返して可笑しくなる。
ふいにイタチがこてん、と頭をサスケの肩にもたせ掛ける。

「簪…また買ってくれるか?」

甘えた声にドキンと心臓が高鳴った。まだ本堂も暗いから顔色なんて伺えないところで安心する。

「あぁ…それくらいいくらでも買ってやるよ」

自分のすぐ下でイタチが微笑んでいるのが分かる。
もう耐え切れなくなって握りしめていた拳にぐっと力を込めた。

「好きだ」

「あぁ…オレもだ」

「そうじゃなくて!」

怒ったサスケの声に酷く驚いてすぐに首をもたげた。
何故怒らせてしまったかは分からないが謝らなければと慌てる。

「サスケ…その…あの……」

「こういうことだ」

いきなりのことで頭からも口からも言葉が出てこない。甘い口づけをした後でサスケが更に顔を赤くした。

「…好きだ」

イタチは暫くリスのように目をしばたかせていたが、俯いて言葉を紡いだ。

「オレもそういう意味で言ったんだ」

「ーーッ!!」

二人の間にしばらく沈黙が流れた。




















やりたいこと沢山詰め込んだらこんなことになりました。
もはやお題の現パロでなくても良いじゃないか!な出来ですが、こんな両思いのサスイタもいいかなーなんて。
現パロ楽しかったです!(自己満足かよ)
真理様、書かせて頂きありがとうございました!また宜しければご参加してやってくださいませ。

2011/8/23

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