06

「大丈夫ですか!?」

その声にイタチがゆっくりと目を開けると、サクラが心配そうに顔を覗きこんでいた。意識がはっきりすると先のことを思い出す。ナルトを止めなければと、すぐに寝台から下りようと体を動かした。

「…っ!!」

足が上手く動かずによろめくイタチをすぐさまサクラが支えた。

「無理しないでください」

「早く…ナルト君の所に……」

「ナルトのことなら私が治めておきました」

「…っ!?」

えへへと笑いながら拳を見せる。その返答に唖然としていたが、すぐにクスリと笑みを浮かべる。
こんなことが出来るのは深い仲である証だ。彼女達にとってサスケもまたその一人。
やや俯いた視線にサクラのもう片方の手に視線を止める。
赤く分厚い本であるが、それが何かは分からない。背表紙を隠すように持っているあたり、見られて困るような内容だろう。

「…それは?」

「え、あ、あの…これは…」

けれどここに持ってきたということはどうしても伝えなければならないものなのだろう。それが何についてかは、ある程度察しはついている。
既にサクラの伝える内容を受け止める覚悟はできていた。
そのイタチの気持ちを視線で感じたのか、サクラも切り替えるようにしっかりと目をイタチに向けた。

「サスケ君についてお話があります」

「サスケとなら…先程会った」

「えっ!?あ、あの…もしかしてナルトが…?」

「あぁ、見舞いに行くと言ったから同行したんだ」

サクラが沈鬱な表情になる。

「サスケ君…一部の記憶喪失みたいなんですけど……原因が分からないんです」

予想通りだった。
サスケの様子が可笑しいことは今更だが、原因も分からないのではないかと。
悲痛に堪えるように目を暫く閉じてからイタチは言った。

「今のサスケについて知ってることを話してほしい」

イタチの気持ちを汲むと到底辛いことである。全て抱え込んでしまうイタチの辛さが心痛である。

「……分かりました」










私がサスケ君と会ったのは今日のお昼のことでした。
ずっと怪我で入院していた男の子が退院したのでその見送りに外に出たんです。手を振り返して男の子が見えなくなった時でした。

「…サクラ」

後からサスケ君の声がして振り向くと、イタチさんを抱えたサスケ君が立っていました。

「コイツ、診てやってくれ」

イタチさんはぐったりとしていて、口から血の跡もあったので、私はイタチさんを抱えてすぐに寝台の上に運びました。
すぐにシズネさんが来てくれたので、イタチさんについて聞いたことを私はサスケ君に伝えにいきました。

「何でオレに話すんだよ」

そこで私はサスケ君の異変に気付きました。冗談ではないとすぐに分かったので、私はサスケ君からイタチさんをどこで見つけたのかを尋ねました。
その状況についても一応話しますね。サスケ君のことについて何か分かるかもしれませんから。

朝から修業のために森に居たサスケ君は、酷く頭痛がしたそうです。そのせいで暫く気を失って倒れていたそうです。
それから起きたのが昼前のことだったそうで、ふと隣を見るとイタチさんが居て、呼びかけても返事がないので病院まで運んできたそうです。


「この事はナルトやイタチさんには言わないでおくつもりでした。二人ともすごく苦しむだろうから…でもいつか言わなきゃいけない時がきますよね」

言い終えて笑うサクラにニコリと笑みを返す。真剣な面持ちだったために、慌てて笑みを繕っただけであったが、どうやらサクラは気付いていない。

「あの…何か分かりましたか?」

不安げなサクラを落ち着かせるために頭を撫でる。サクラの顔が一瞬で朱に染まる。

「ありがとう。何か思いあたることがあれば君にも話そう」

はい!と答える満面の笑みに昔のサスケを思い出す。叶うと信じて笑う心を裏切る自分は、あの頃と何も変わっていないと心を痛めた。





















久しぶりの長編です。
そしてちょこっと追記。
サスケは熱中症だから一応入院しています。ナルトは兄さんと見舞い行って初めてサスケが頭イカれてる(酷)と知りました。

2011/8/23

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