Story | ナノ
01-04
--------------------+


しかし鳥類の首だ。
今にもずるずると落ちてきそう。

「全部拾ったのか…?」
一皐の質問に、ちょっと不機嫌そうに
『この姿じゃなきゃもっと早かったよ、』
と悪態をついた。
少し恨めしい視線を一皐に送っている。

「冗談。そんなことの為に力なんて使えるか、」
『ぶー…』

すたすたと行ってしまう一皐に仕方なさそうにフラフラと着いていく。

『ねーぇ、』

少し早足な一皐の後ろに付き、声をかけるシェルシェ。
しかし、呼び掛けても反応しないのが一皐。
それでもめげずにシェルシェは続ける。

『一皐、一皐、この人間一皐と歳が一緒なんだね〜』
「ふーん、」
『ついでに言うと学校も一緒みたいだよ〜』
「……」

 学校。その単語が出てくると何かを思い出しそうだ。

『結月ぃ?ふーかって名前みたい。』
 知ってる?と尋ねられる。

「結月(ユイヅキ)楓花……」

知っている気もするが…
なんだったか。思い出しそうで中々出てこない。
喉元まで出かけているのだが…

『3年のぉ、よん?組だってー』

「……、」

 出た。思い出した。
と、同時に自然に舌打ちが出た。
それにシェルシェがびっくりしたように一皐の横に並び、彼の顔を伺う。

『な、なになに…?まさか、なんか思い出したの?』

「うっさ、」
『う〜……』

一皐の酷い言葉に内心傷つきながらも、
『絵の具、踏まれちゃったりしたのも拾って来たけど…』

「別に。後で治すし。」
『うん〜…。
 その力、今の僕に費やす気はないだろうか…』
「ねぇ、」
『ぶー…』





+----------+



………………

…………

……



「ぶあッ!!!!」

 勢い任せに上体が起き上がる。
健やかな朝。
楓花はいつもと同じ朝を迎えた……



一章 ゙操魔゙と言う力...



 珍しく今朝は悪夢で目が覚めた。
上半身だけ起こし、夢に浸る。
思い返して肌が粟立った。

 そう。昨日訳の分からない生き物に襲われたんだ。
そしたら男の子が………、

「………、」

 口元を抑え、考える。
これは……夢……?

でも普通にここにいるし…。
でも…

脳内でぐるぐると迷走してみるも全部が全部、立証できなくて…

取り合えず、ベッドから出る。

「……、」
ふらふらと自分の部屋だと言うのに、他人の部屋にいるかのように歩き回る。
なんだか落ち着かない。

「……あ、そうだ。」

確か夢では転んで足を擦りむいて、画材道具をばらまいたんだ。
そしてその幾つかが踏まれ、絵の具は多分使い物にならない筈。

思ったら居ても経ってもいられなくて、画材鞄を取り出し、絵の具類全部の箱の蓋を取り、中身を確認する。

「…あ、うん。」
何かを納得したように一言。
夢だ。完全に。
だって昨日、画塾で使った時のままだったから。

「……あはは…」

恥ずかしそうに笑うとわたわたと画材道具をしまっていく。

 夢を現実だと思って恥ずかしい…
そんな心境で片付けを終わらせ、制服に着替えた。

着替え終わると自室にもはっきり分かるほど、朝食の匂いがしていた。
それに気が付くと、せかせかと準備をし、廊下の階段を駆け降りる。

「おはよぉ〜!」

挨拶を交えてリビングの戸を開けると母親が朝食をダイニングテーブルに乗せているところだった。

「あら、おはよ。」

ふと笑いかける母に楓花も笑いかけ、自分の席に着いた。




- 5 -
-front- | -next-
Site top




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -