Story | ナノ
02-06
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 あからさまに驚いた風の少年と、キッと目を細めた一皐の反応を見て確信する。
そして楓花はにっこりと笑った。

「すごい、シェルシェ!人のカタチにもなれるんだ…?」
「…ぅ……、うん…」
明るい調子の楓花とは裏腹に、少年は俯いて仕切に脇をちらちらと見ている。

「……、」

 二人の様子を伺うようにソファーに腰掛けていた一皐は立ち上がり、シェルシェを引き寄せた。

「…ぅ、一皐ぁ…」
「…良いからコレ出せ。」
困ったように見てきた彼に目線を合わせるように腰を下ろした一皐は、言いながら彼の口からティッシュの固まりを取り出し、ごみ箱に放り投げた。

「……」
「…」
「?…どうかしたの…?」

 何だか気まずい雰囲気。
シェルシェだと理解した少年と一皐は同じ場所をじっと見ていた。
それに釣られて視線を辿ると、怖い顔をした燈架琉の姿。

「…一皐、シェルシェ、…あと楓花。」

「はひっ!」
「…、」
「え…?」

シェルシェはピンと背筋を伸ばして返事を、一皐は燈架琉を睨み伺っていた。
楓花は何が何なのか分からない様子で燈架琉と一皐、シェルシェをキョロキョロと見ている。

「…話しをしないといけない。お前ら全員そこに座れ。」
「え?」
「…ちっ、」
「は、はい〜…」

 真剣な燈架琉の剣幕に何も言えないまま三人は、燈架琉の向かい側で並んで腰掛けた。

「…一皐、楓花は何でシェルシェの事を知ってる?」
「…………た、からだよ…」
言いづらそうに、しかし声は怒りの色を点していた。

「あ?」
「会わせたからだよ。俺が、楓花とシェルシェを、今日学校で…っ」
「はーん…。
 あれば楓花が見た夢゙だったって事にするって話し、したよなぁ…?」

 今までの燈架琉の声の調子ではない。
口調と言い、目つきまでも怖い調子で楓花は身を固くした。
しかし、そんな燈架琉の目の前だと言うのに一皐だけは全く今までの態度を変えない。

このピリピリした空気から早く抜け出したい…。

「ハァ?だから?
 俺がアンタの言うこと、聞くと思ってんの?」
低脳だな、と付け足す一皐の目つきは人を殺せるのではないかと思うくらい冷めきっていた。

「…一皐、良いか?コレはお前だけの問題じゃない。
 下手したら消されるぞ?」
「ああ、そりゃあ有り難い。消してくれんの?」
「…!」

 隣で悍ましい発言が聞こえた。
楓花は咄嗟に一皐の顔を見る。
が、相変わらず燈架琉を冷めた目で見ている。
本気か冗談か…全然分からない。

「…アンタ等は俺を消したくても消せないんだろう?
 出来もしない事言うなよ。馬鹿馬鹿しい。」
「けど、一皐…!」
「うっせぇ…!俺をこんなにしたのはお前等だろう?!
 これは俺が決めた事だ。好き勝手は言わせない。
 もしこれ以上俺に指図してみろ、お前等共々所員全員焼き払ってやる…!」
「……ッ、」

ガタン、と大きい音を立て立ち上がった一皐はそのままリビングを出て行ってしまった。
それを残りの三人は黙って見守るだけ。

 紗暮一皐があんな感情的になるなんて…
驚きを含ませた色で楓花はリビングの扉を見つめていた。
すると燈架琉の方から溜息が聞こえた。

「…わりぃな、怖がらせて。」

さっきまでの優しい調子。
気まずそうに楓花を見、頭を掻いている。
かなりの困惑が伺えて楓花は俯いた。
「…あの…何か私…大変な事をしたのですか?」
「………。
 お前が、て言うより一皐がな。」
更に溜息をついて苦笑気味に一言。

「あ…僕…」
この場の雰囲気に気まずそうにシェルシェが立ち上がった。
「一皐のとこ行ってくる…。」
「シェルシェ…?」

楓花の問い掛けに答えず、彼は二人の顔も見ずにリビングから出て行った。

「………」
「……」
出て行ったシェルシェを燈架琉は仕方なさそうに見て溜息をついた。

「…楓花には悪いが、本来こっちの事情に関わった一般人は放置しなきゃならないんだよ。」

「……え?」
「アイツがお前を助けたろ?
 アレ、ホントは禁止行為なんだ。
 あぁ…禁止にさせてるって所がな…」

「……国家機密研究機関…?」
「……、なんだ。そこまで聞いてた…。」
一瞬瞳を見開いた燈架琉は、困ったなと呟き、また頭を掻いた。

「……はぁ。
 一皐が…他人と違うってのは…」
「はい。伺いました。」
「…ぅ、そうかぁ…。くそ、アイツ…」

うなだれて見せる燈架琉に楓花は首を傾げて、
「なんで助ける行為が禁止行為なんですか?」
「………なんでって…」

楓花の質問に、質問自体を笑うように嘲笑して視線を反らす燈架琉。
「機密機関だよ?認知した人間を生かして置いて良いと思ってんの?」
「……っ、」

 嘲笑の顔に冷めた瞳。
燈架琉のその瞳は一瞬、背筋が凍った。
一皐程鋭くない。
…けれど、一皐よりも窺い知れない恐怖を感じた。

恐怖に唾を飲む。

「なーんてな!
 殺すはやり過ぎだけど、記憶は消すよなぁ。
 まぁまぁ…………お?」
「………うぅ…」

 ずるずると崩れる楓花を燈架琉は覗き見、小さく笑った。

良かった。
さっきの優しい調子に戻った…。


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