Story | ナノ
02-04
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「一皐はさ…、多分後ろめたさを感じてんだよ。」
「後ろめたさ…?」

なんでだろう…?
疑問に思っていると、
「まぁ…諸事情でって事で…」
と燈架琉は苦笑する。
とても言いづらそうに…。

「もう、着くぞ。」

「…え?あ…はい。」

 ずっと考えて歩いていたら燈架琉の声で意識を戻す。

なんかさっきから自分、考えてばかりだ…。
頭を軽く振って脳裏から思考を飛ばした。

 因みに、夕飯はカレー。
楓花も一緒に作れるものが良いと燈架琉が提案した献立だ。

「お前、塾平気?」
「あ、はい…。…今日は、遅めの授業なんで…。」
ホントはちょっと危ないけれど…。

「そかそか、」
けれど、嬉しそうに燈架琉は頷いたから楓花は黙っておくことにした。

そして何故か、どさくさに頭をわしゃわしゃと撫でられた。

…撫でる意味が分からない…。

「ただいまー。」
「ただいまです…」

「おっかえりーー!!」

 帰っても誰も挨拶しないだろうな、と思っていたが意外にも元気で明るい声が返ってきた。

「え…?」
「よぉ、シェル。」
「お帰り、燈架琉ー!」

 シェル、と呼ばれたのは不思議な、翠色髪をした幼い男の子だった。
何か瓶詰を両手に抱えて階段から顔を覗かせていた。

「燈架琉、今日ご飯は?」
「カレー。コイツと一緒に作るから、」
そう言って燈架琉は、楓花を指差す。
すると彼の瞳がぱぁ、と輝いた。

「あ、ふーか!」
「え…?なんで私の名前を…?」
「う?」

 この子とは初めて会った…筈。
こんな不思議なコントラストの子、絶対に忘れる筈ないけどなぁ…。

彼の赤い瞳をじっと見つめ、考えてるとシェルは、はっと思い立ったかの様に目を丸くした。

「一皐がね!一皐がさっき言ってたんだよ!」
えへへ、と無理に笑うこの子の笑顔…。
…何か怪しい…。

「…あぁ、成る程。
 俺もなんで知ってんのかなってびっくりしたぞ?」
「うー…!ごめんごめん。」
てへへ、と笑い頭に手を置くシェルに燈架琉も小さく笑いかけた。

その間で一人取り残される楓花。

 …何だか…何か、ごまかされたような。
でも話を纏めた燈架琉は中に入って行ってしまったし、心残りを感じながら楓花も家の奥へと歩いて行った。

「あ、紗暮くん。」
「……」

 リビングに入ると直ぐに一皐の姿が目に止まった。
彼はラフな私服に着替え、ソファーに腰掛けていた。
「今日、カレーだよ。」
「…アンタが作んの?」
「うん。ヒカさんの手伝いだけど…」
「………」

すると手元に置いてあった読み掛けらしい週刊誌を閉じ、一皐は楓花を真剣な表情で見つめた。

「………?」
なんだろう…、と首を傾げると
「失敗すんなよ?」
「むっ…!」
「お前、料理とか全く、出来そうに見えねぇから…。」
「…むっ…かーぁ!」

 ゙全ぐを強調された。全く、を…。
確かに料理は作ったことないし、手伝った事も…ない。
けれどその言い種はないじゃないか。

「紗暮くんだってやったことなさそうだよ?!」
「やったことないね。
 俺は女がそんなんで大丈夫かって言いたいだけだ。」
「ぐうぅ…」

そう開き直られるとなんと返して良いのやら…。
物凄くカンに障るが…事実だ…。

「はは…、なにお前等随分と仲よさ気だな?」
そこに入ってきたのは、準備を着々と整えている燈架琉の声。

「なっ、何処がですか!?」
「……」

「ハイハイ…。
 とっとと作らねぇと時間なくなっちまうよ?」
「あぁ…と…、そうでしたっ」

「…なんかあんの…?」
「あ、えーとね。」

 珍しく疑問を投げかけてきた一皐に向き直ると、後ろから手が伸びてきた。

「あわ…」
「お喋りは良いけど、手ぇ動かしながらな?」
そう言って、抱く体制で楓花にエプロンを巻く燈架琉。
真っ正面からの視線が一瞬氷の様に冷たかった気がした。

「はい、完成。」
「おお!」

「ガキか、お前は…」
「え…、ガキに見えますか…?」

「……」

 気が付けば二人は出会った当初より大分親しくなっていた。
一皐はそれを暫く黙って見つめる。

…なんだか、気持ちがもやもやする…。
意味が分からない。



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