Story | ナノ
02-03
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「…なんかあの子面白いな子だなぁ…」

 隣で愉快そうに紗暮一皐の兄、紗暮燈架琉(スズクレ ヒカル)が笑っている。
楓花は隣で笑っている燈架琉を見上げ、
「あの子、男の人には態度が変わっちゃうんです。」
苦手なのかな、と呟く楓花に燈架琉は鼻で笑った。

「苦手って感じに見えるか?」
「え?うーん…。」

燈架琉はそんな楓花の顔をじっと見つめる。

 今楓花達は外にいる。
夕焼けがかった住宅街の道…そんな閑散とした道を燈架琉と二人、並んで歩いていた。
楓花の隣にいる彼は両手にスーパーの袋をぶら下げ、楓花も小さな袋を持っている。
丁度買い物帰りの帰路の最中。

「俺はその逆に見えたけどね…。」
「逆…?得意って事ですか?」
「そそ。男が好きだから目移りして、ああなんじゃないの?」
「うううぅうんー…」

 さっきの咲希の様子の内が読めない。
一皐を附けようと言った咲希の心理…。
…の癖誘った楓花を置いて帰ってしまった考えはどうも彼女には理解できない様子。

そんな鈍感で純粋な思考に燈架琉は思わず笑った。

「まぁ、楓花が理解できないならそれで良いんじゃん。
 楓花は楓花なりの考えがある訳だしな?」
「え?…はい…。そ、うですね…。」
「まぁ、俺が考えるにあの子は男にめっぽう弱い子だよな。
 女友達の関係より男との関係を大事にするタイプ…。」
「えぇ、そんなコト…」
「それが悪い訳じゃねぇよ?楓花がそんな子の考えを許せれば、また友人関係深く結び付くんじゃねぇの?」

 もっともな大人の意見に楓花は肩を落とした。

「ま、そーいう子は大多数の女子に嫌われるんだけどな。
 大切な友達ならしっかり見守ってやらんとダメだぞー?」
「…う。はーい…」

 そう言えば咲希には自分等以外の親しい友人はいないかも…。
そんな事を考えるが、自分が彼女の特性を理解できるかは…かなり不透明…。

「そう言うヒカさんは女の子好きそうですよね…?」
「……ゔ…。痛いトコ突かれたな。」

楓花の冷たい視線が刺さる。
そんな視線を受けながら頭を無造作に掻いた。

…確かに燈架琉は女性好きな面も…ある。

「まぁ、そう言うのも悪くないさ。」
「…悪くはないですけど…」
あまり近付きたくは…ないな、と胸中で呟いた。
流石にそれは本人には言えないけれど。

「一皐も案外女好きな面もあるぞ?」
「それは…分からないです…。なに考えてるか分からないし。」

「ホントに…?
 なんかちょっとは伝わる事、ねぇ?」

 ふと燈架琉の顔を見てみれば、困ったような…何かに縋るような瞳をしていた。
「………」

 なんだかちょっと驚いた。
何かに気付いてくれ、と言わんとしているような…。

「……あの…、ヒカさんの事が嫌いみたいでしたけど。」
一皐の事で気付いたのはそれくらい。
確か、嫌がっていた気がする。

最初は燈架琉が嫌な人間だからかも、と思ったがどうも違う。
逆に弟想いの優しいお兄さんだ。

そう言えば…
「ヒカさんと紗暮くんって顔とか全然似てないですよね?」
「お?分かった?」
燈架琉は目を細めて無邪気に笑いかけた。
なんかその感じが妙で印象付く。

「俺等、血繋がってねぇし。」
「…え…?」
「はは、俺等二人とも孤児院出身。
 互いの親の顔も知らねぇよ、」
と笑った。

 多分、気まずい空気になるのが嫌なのだ。
だから笑っているのかも。
そう思うと燈架琉と一皐への何とも言えない虚しい感情が生まれた。

けれど楓花は笑って、
「凄く弟想いなお兄さんだなって思って…」
と言う。
そうすると燈架琉は嬉しそうに、恥ずかしそうにはにかんだ。

その笑顔が少し可愛らしく見えたのは内緒。

「昔はあいつ、すっごい可愛かったんだぞ?
 俺に一々付いて回って、無邪気に笑ってくれた。優しい、他人想いの子だった。」

「へぇ…」
意外、と楓花は声を上げた。
それに燈架琉は嬉しそうに笑って、
「そんな一皐を守ってやりたいんだ。
 だってさ、俺等唯一の家族だし…。」

 優しいお兄さん…。
なのにどうして一皐は嫌っているのだろう?
こんな兄、なかなかいないのに。



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