Story | ナノ
02-02
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「なぁ、一皐…」

 一皐の後に続いてリビングに入ってきた燈架琉が少し笑みを含ませて声をかけてきた。
それに若干気味悪がりながらも燈架琉に視線を向ける。

「今日歩きで帰ってきたのか?」
「……?」

 燈架琉の言葉の真意が分からなかった。
確かに、何時もは大抵シェルシェの力を利用して数秒で学校から家まで移動している。

「あぁ…。今日はシェルシェが先に帰ってたから…」
「ふ〜ん…」

まただ。
また変な笑みを含ませた。

「…なんだよ、」
「一皐、気づかないか?」
「は…?」
何が、と問うような一皐の耳に元気な少年の声が飛び込んで来る。

「僕知ってるよー!
 家の前にに人間二人くらいが一皐を追うようにして来てるよ!」

「……!」
「お、流石…」

 夕方の、何の面白みもないワイドショーを見ながら弾んだ声でシェルシェが教えてくれた。

「えへへ…」
燈架琉の言葉にシェルシェは目を細めて笑う。

「……」

シェルシェの言葉に引っ掛かり、何か思い出そうと口元を抑え、暫く黙っていた一皐。

「…!」
が、思い立った様に反射的に顔を上げ、慌ただしく廊下に出て行った。

「…〜、」
「…?」

そんならしくない一皐の挙動に燈架琉は笑い、シェルシェは首を傾げる。
シェルシェの頭をぽんぽんと叩き、
「ちょっと待ってろな?」
「わ…ぅ、うん。」



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――ドタドタ…

ガチャッ

「…!」
「……、」

 勢い良く玄関の戸を開け放つと二人の女子が軒先にいた。

一人の見知らぬ少女は目を見開き、一皐の登場を驚いているようで、もう一人の見知った少女は気まずそうな様子で視線を反らした。

「…………なに、…やってんの…?」

 怒りで、自分でも声が震えているのが分かる。
こんな無神経なのは心底嫌なのだ。

 楓花は、その一皐の鋭い視線で殺されるんじゃないか、とさえ思った。

「あ、あのね…これには深い訳があって…」
「どうせくっだらない理由なんだろ…?」

訳を聞いてくれる気は全く無い様だ。
まぁ、怒られても当然。
自分がされたら…絶対に嫌だ。

「ほーん…一皐お前、学校じゃモテるのかぁ…」

「…!」
「…ちっ、」
「………?」
上から咲希、一皐、楓花の順。

 一皐の後ろ、玄関から顔を覗かせて笑顔を見せる青年がいた。
金髪で、右目を少し長い前髪で隠している。
柔らかい笑顔がとても良く似合うお兄さん…。

「よ、楓花!」
ニカッて笑って楓花に手を上げる青年。

…誰だろう…?
疑問に思っていると青年が近づいてきた。
丁度、一皐と楓花の間を割るように入ってきた彼は無邪気な笑みを浮かべて、
「燈架琉だよ。燈架琉。」

「…?…………ぁ…」
「え?え?誰あのカッコイイ人…」

燈架琉と名乗った青年に指さし問うてくる咲希に苦笑を零した。

「あのね、一昨日私が倒れたところを助けてくれた人なの…」
顔は今初めて見たんだけどね、て言ったにも関わらず、咲希の声に見事に潰された。

「え!!?うっそ!羨ましいよ!!」
「………」

 …どうも咲希にとって、男性は顔が良ければ良い…様だ。
呆れて言葉を発さ無い楓花。
それを見て燈架琉は瞬間に悟った。

「なぁんで、一皐を着けるかね。」
「うぅ…私は何度も止めたんです…」
「あぁ…ハイハイ…」

後の一皐の機嫌を取るのに苦労するだろうな、と溜息をつき、咲希をチラ見する。

「ああ…そうだ。
 夕飯まだなんだよ。良かったら家で食ってかね?」

「…え?」
「えッ?!」
楓花よりも声量のある咲希の声に、咄嗟に一皐は両耳を塞いだ。
物凄く迷惑そう…。

「あの…」
「私!!
 …凄くご一緒したいんですケド…今日パパに外食の約束してて…っ」

…遮られた。
こっちは塾があることを伝えようとしたというのに…だ。

「あ、そうなの?…残念。」
全く残念そうには聞こえない声の調子で燈架琉は言った。
「また来いよ。一皐も喜ぶしさ…」
にっこり笑って咲希に言う燈架琉の脇で一皐が露骨に嫌そうな顔をした。

「……誰が、」

「う!はい!!是非!」

彼女の耳はとても都合が良い。
一皐の悪態も聞こえていなかった様だ。

「あ、あの…」
私、塾が…
言おうとしたら咲希が猛ダッシュで帰って行った。
連れを置いて行って。




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