Story | ナノ
02-01
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「で、結局どうな訳?」
「どうもこうもと言われましても…」

 楓花の目の前で仁王立ちの咲希。
今は放課後で唯一の味方依鈴は用事があるかだとかで先に帰ってしまった。
教室の中には今かなり生徒が残っている。
あの紗暮一皐も。

「知り合いは確かでしょ?」
「うんん、まぁ…」
困ったように、唸ったように返事をする楓花に煮え切らない気持ちでいっぱいになる。
何とかして情報が欲しい。

「…!」
そして名案が浮かんだ。

「楓花、まだ紗暮くんいるし…紗暮くんをつけちゃおう。」
「はぁ?!」
「しー!うっさいよ。」
人差し指を唇に押し当て言う咲希に信じられないものを見るような視線を向ける楓花。
そんな楓花の視線を全く気にしていないらしい咲希は更に無茶苦茶な事を言うのだった。

「あぁー、楓花もしかして嫌なの?
 楓花、紗暮くんと仲良いから皆に取られるの嫌なんだ…」
「……」

 なんでそうなる、と楓花。
「もしかして楓花、紗暮くんの事好きなの?だからだ。」
「………、…分かったよ。行くよ…」

 聞き捨てならないから…。
別に恋愛感情うんぬんでなく、塾があるからだと少し苛々としながらうなだれる。

さっき、塾があると言った筈なんだけど…
とやりきれない気持ちでいっぱいになる楓花。

しかし空気の読めない咲希は一皐が席を立つのをじっと見て追跡の準備を整えていた。
それに楓花は倦怠感の含んだ溜息を小さく零した。

「あ!行ったよ。行くよ、楓花!」

 弾んだ声で言われ、思考がストップし強引に連れて行かれる楓花。
もうなんでもなれ、な気持ちでとぼとぼと咲希に付いて行くことにした。


2章 魔烏シェルシェとゼロの者



「紗暮くんちって結構人っ気がない住宅街なのねぇ…」

 …と言う訳で此処は楓花の塾近くの住宅街。
こちらには全く気付いていない様子の一皐に内心安心しつつ楓花は咲希に着いて行っている。
ここまで付き合う楓花も楓花だが、逃げると言う手段を考えないと言うのが彼女なのだ。

「ねぇ楓花、この辺って楓花の画塾近いじゃん。」
「…そ、そうだねぇ…」
だから?と一瞬思う。

「あれ、」
「…」
そして一皐はとある一軒の家に入って行った。
大きい、ぱっと見新築の外見。
沢山の家族が住んでそうな…。

「………」
「お金持ちなんだぁ〜!」

 でも弁当やご飯は兄の燈架琉が作ると聞いていた。
あのお喋りのとり…烏のシェルシェは母親や父親の話しを全くしていなかったし…。

「………」



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 ――ガチャ、

 帰宅の挨拶もせず無言で玄関の扉を閉める。
そして振り返ると見たくもない顔と直ぐさま対面した。

「おいおい、無言で帰宅か…?」
「……うっさい」
「あのなぁ…」
靴を脱いでそのまま燈架琉の脇を過ぎてく一皐に落胆の様に肩を落とし溜息をついた。
何をどうしても、どう言ってもかなり前からこんな感じなのだ。
仕方ないのだが…、

「あんさぁ、言うことあるだろ?」
「……」

 脇を通り過ぎた一皐の腕を掴み、低い声で言ってやる。
すると一皐はじっとこちらを見た。物凄く表情が欠落した瞳で。

「………老けた?ここ、一本シワ増えたぞ。」
ここ、と言い口元を指して言う一皐。
もう注意する気も完全に失せる。

「…お前…、」
「小姑みたく小言ばっか言ってるからじゃないのか?」

そして興味も失せた様に燈架琉からあっさりと視線を外し廊下の先にあるリビングへの扉を開き、勢い良く閉めた。

「……、」

 どうしようもないな、と燈架琉は溜息をついた。
何やっても一向に心を開こうとはしない。
何を言っても自分の欲求を伝えたりしないのだ。
若干、それで困る節があるのだが…。

「…?」

 玄関の扉……。
多分気のせいじゃないな、と感じふと笑みを零す。



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