Story | ナノ
01-13
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「…大丈夫だから言ってもらえないかな?
 やっぱり知りたい…」
「……」

楓花の言葉に一皐はそちらを見、言葉を選ぶために考えた。

 耳にしても、当たり障りのない言葉。

「……゙あれ゙はとある研究に使われた動物達。」
そして一皐から伝えられた一言は楓花の想像から大きく逸れた言葉だった。

「あいつらは、生命理論から外れだ力゙を求めて研究施設から脱走した。」

「…生命理論から外れた、ちから」

 不思議な言葉だった。
然しながらそんな言葉を何か悩むように口にする一皐は真剣そのもので、楓花も真剣にそれに聞き入っていた。

「そう。成功作ば力゙を使える。
 失敗作は…それを求める。苦しいから。
 ゙それ゙さえあれば完璧に為れる。」

「……」

 ずきん、と胸が痛んだ。
それが何なのか、理解はしていないけど、
とにかく胸が圧迫されたみたいに…

「…最近研究員が次々に殺されてる。
 理由は研究員が焼き付けた記憶。
 それに、完璧に為るためのものが含まれてるから…」

「…記憶にも反応できるの…?」

「……あぁ、」

頷く一皐。
しかし、まだ楓花の疑問は解決していない。
それを問おうとした時、一皐の口が開いた。

「奴等が襲う者は2つ。
 研究施設内での記憶を持つ者。
 それか、成功作。この2つ。」

「…うん、」

「此処で気になるよな?お前が襲われた理由。
 まず、後者の、成功の被検体ってのは無いとして…その記憶を持ってるかどうかってやつ。
 ……どうなの…?」

「私は持ってないと…思うけど…」
困ったような楓花の回答に、そうだよな、と呟き納得してくれる。

 暫く考えているような一皐に、
「゙力゙ってなんなの?
 紗暮くんがさっきから言う感じでは、何か特別なものみたいだけど…」

「……、そうだな…」

言っても大丈夫か、と頷き、楓花を見た。

とっても鋭い瞳で……

「…!」

 なんでだか…身体が跳ねた。
怖かった訳ではない。

「…楓花…!」

「…?」
名前を呼ばれた。初めて。
しかも下の名前を。

びっくりしている楓花に全く気を止めず、彼は立ち上がった。
彼の真っ黒な髪がふわりと柔らかく舞う。

「…国家重要機密機関がある。」

「…へ…?」
急に告げられた言葉に楓花の躊躇いの声。

「……それは来たるべき国家侵略…侵略防衛の為に行われている研究を行ってるもの…」

「大気中にあるものに少しの異常を加え、物体に触れなくても物体を破壊、製造、変形させる力を持つ生き物を製造、研究…。」

難しい言葉を呟きながら、一皐は徐に歩きだした。
それを座ったままの楓花は視線だけを送って聞く。

 何も無い場所に向かって歩いていく。

それに楓花は段々と疑問に思い、同時になんとも言えない不安感に苛まれる。

何をするのか…

まさか…?

「そんな下らない研究…。だけど成功例は少なからずいる。3人だけ…
 その1人…、」

ガシャ、……

何かが軋んだような音に気が付いて、はっとした。

一瞬、彼が宙に浮いてるように見えた。

けど…それ以上に危険な光景がそこにあった……

「…その1人……
 恨めしいけど、それが俺……」

「え…?」

 彼は両手を広げた。

不安定な場所で。
フェンスの上で。

「まるで…まほーみたいな…」

にっ、と彼は優しく笑った。
今までの彼から全く想像できない表情だった。

「すずくれく…」
「俺は…さ、゙まほーつかい゙っての?
 人間じゃない力を使える。バケモノ…」

 …だかラ、空ヲも飛ベル…ッ…―――

 彼の足がフェンスを蹴り、彼の身体は落ちていく…、



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