Story | ナノ
01-12
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「…?…わ、」
一瞬、開いていないのでは?と思うほどの重さの扉に驚いたが、瞬間、びっくりする程軽く開いてバランスを崩した。

「……何やってんの?」

「え…?」

見上げれば扉を開けた体勢で不機嫌そうな紗暮一皐の姿。

「あ、えっと…」

「良いから早く出てくんないか?
 これバレるとヤバい…」
転がった楓花の弁当を拾い上げ言う彼。

「う、うん…」
そんな彼に慌てて返事をして屋上に出た。

「わぁ…」

 風がふわりと舞って心地良い。
学校にもこんな場所があったのか、と空を見上げて声を上げた。

「……入口で何やってたんだ?
 …暫く居たみたいだけど…」

「え…?あ…、」

 恐怖に足がすくんでいたなんて言えない…。
そんな心境でいた楓花を察したのか、彼は溜息をついてその話を打ち切った。

『あー!!あの時の人間!!!』

「うっさ…」
「あれ…?」

出入り口より先に進むとあの翠の烏がフェンスに止まっていた。

『いっさ!こいつ!!こいつがね!!』
「五月蝿い。静かにしねーと羽毟って油で揚げるぞ…」
『うッ!!』

その凶悪な言葉に烏は黙った。
物凄く何か言いたそうに楓花をちらちらと見ながら…。

「えっと…しぇるしぇ?」

『えー!?何で知ってるの??』

声を上げるシェルシェ。
それを鬱陶しそうに見る一皐。

「一昨日、紗暮くんが君をそう呼んでたからだよ。
 宜しくね、シェルシェ。」

 相手に手はないけど一応手を差し出してみた。
するとシェルシェはフェンスを蹴って、差し出した手に止まった。

『ヨロシク、ふーか』

嬉しそうに目を細めて返してくれた。

「……」

「えへへ、宜しくね。」
『うん!』

 何だかシェルシェのその感じが可愛らしい…。
子供のような子だな、と考えて本題を忘れてしまっている楓花に一皐は小さく溜息をつく。
「用はすんだ?だったら帰れ」

「あ…!」

一皐の声に慌てて向き直った。

「紗暮くん、私聞きたいことがッ!」
完全に緊張感がなくなった楓花の表情を見て、知ってるよ、と胸中でツッコミを入れつつ、用件を促した。

「あの私を追い掛けて来たのは何?
 なんで私が追い掛けられたの?
 なんで…」
「ちょっと待て。」

「あ……ゴメン、なさい……」

一気に質問を受けた一皐はちょっと迷惑そうな…鬱陶しそうな表情をしていた。

それに気まずくなって顔を俯ける楓花。

「………あれは生物の成れの果て。
 進化を誤ってああなっだもの゙。」

ぽつりと呟く様に言われた言葉に楓花は顔を上げた。

「しんか…?」

「……、」
楓花の問いに、先を躊躇うような彼の表情。
シェルシェは腰掛ける一皐の隣に止まると、ぽつりと彼の名前を呟いた。

「……言っても信じてもらえない…」
ふい、とシェルシェや楓花から顔を背ける。
そんな一皐に楓花はどうして良いか分からずにいるとシェルシェが口を開いた。

『いっさ、平気だよー…きっと』

静かに投げかけるシェルシェの声色は何処か寂しげで、楓花は少しそれが気になった。

「……、」

「…?!」

 細められた瞳がこちらを向いた。
ドクン、と心臓が叩かれたように跳ねる。

「……これを他人に伝えたら俺は…お前を殺さなきゃならない…」
「…!?」

 殺される…。
そう頭が理解した時、楓花の中の記憶が恐怖を呼び起こしそうになる。

なんだか……

何か大事なことを忘れているような……

でも思い出してはいけない。
そんな感じがした。

頭を振って払おうとするが、脳内に刻まれた紅色の記憶はそう簡単に剥がれてゆくものではない。

「…?!」
 恐怖に身体が震えて出した時、右肩を叩かれた。

「…平気か?」
「……ぇ、…あ…」

「…一昨日の事を思い出したか…?」
「うん……ごめんなさい。」
俯く楓花に
「別に…」
と小さく声をかけた。




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