Story | ナノ
01-09
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……………

………



次の日。


 ――バサバサ…ッ

 羽音と共に羽根が舞う。

瞳を閉じてその音を聞き、腕を天に向けて差し出すと指に硬い感覚が絡み付く。

顔に一枚、羽根が舞い落ちた。

目をうっすらと開けると指を足場に翡翠色の鳥が羽繕いをしていた。

「………」

ゆっくりと手を下ろし、寝転んでいる自分の胸に彼を着地させた。

「…一皐…?」

「……」

そしてまた目をつむる。
すう、と息を吸い、静かに吐き出す。

そんな一皐を静かに見守るシェルシェは、くわぁと欠伸をした。

「…一皐、そろそろ授業じゃないの…?」

「………」

「一皐…?」
「うるせぇ。少しくらい静かにしてくれないか…?」
「う、…うん〜」

不服そうに返事をするシェルシェを無視し、またうっすらと瞳を開けた。

「………あいつ、…」

『…え?』
「…厭…、」

 昨日、結月楓花と接触した。
その事で兄、燈架琉に色々問われたが、勿論何も答えなかった。

なんだか気掛かりなのだ。
彼女と言う存在が。

「……なんでだ……?」

ぽつりと呟いた言葉をシェルシェは理解したらしく、威嚇したように羽根を広げ
「結月楓花って子が被検動物に襲われた、アレ?」

「……あぁ、」
それに呟きの様に返事をした。

『あの子、なんか不思議だよね』
「…なんでそう思う…?」
『ん?…んー』

一皐の問いに考えるような声をあげ、
『゙あそごで感じたような感覚があった…、よ?』
「…そうか…、」

 ゙標゙を司るシェルシェは感知能力に優れている。
だから一皐はそれを素直に受け止め、頷いた。

「……」

『わぁッ…!!』

 急に立ち上がった一皐に驚き、シェルシェは宙に舞う。
『な、なにッ?!』

「…授業………行ってくる、」

『あ、…あぁ…うん。』





+----------+





「あ、いるいる!」

 毎朝恒例の依鈴との会話に乱入する人物。
「あぁッ、咲希ちゃん。」

彼女は楓花の隣のクラスで小学生からの友人、坂田 咲希(ハンダ サキ)。
元気だけが取り柄の今を生きている茶髪少女。
勿論、学校教諭からは目を付けられ、何かに付けて文句を言われている…らしい。

「おはよ。咲希ちゃん。昨日は忙しかった?」
「寝てたよ。」

「……、」
「…ぉ、おお…そうか…、」

苦笑のままの楓花の変わりに依鈴が、こちらも苦笑を交えて返事をした。

「…じゃあ、学校来てないんだね?」
躊躇いがちに楓花。
「うん。」
当たり前のように咲希。

「だってさ、一昨日の校長がやる受験面接練習の待ち時間、お腹に激痛走っちゃって…で、体調不良で帰ったのに激怒電話がその日の夜に来たんだよ?
 あたし何も悪くないのに怖くなっちゃってさ〜。」
と、実に暢気。

「……、」
 楓花失笑。
隣の依鈴には笑顔はなく、
「…で、あんた無断で帰ったの?」

「うん。そう。……あ、」
笑顔で頷いた咲希の視線が他へと泳いだ。

「……?」

その咲希の呆然とした表情を見、彼女の視線の先に目を向ける。

「………」
「…?」

依鈴は核心的に何かを理解した。
しかし、隣の楓花は首を傾げている。

「……紗暮くんって不思議系だよねー…」
ぼう、とした声音で咲希は言った。

 不思議系…?
と、楓花の脳内は更に訳がわからなくなった。
どちらかと言えば根暗で予測不能なのではないか…?

席に着く一皐を眺め、考えていると依鈴の笑い声が。

「…咲希、どうやら楓花は紗暮くんと何かしらの関係があるみたいよ、」
「え、うそッ?!」

バン、と机が叩かれた。それに楓花の思考は戻され、頭を思いっきし横に振った。

「なんにもありませんッ!」

 本当は今彼にいろいろ聞きたいことがあった。
だけどこんな雰囲気では流石に無理だ。
楓花でも今回は察して、ぐっとこらえた。

凄くうずうずするが…。



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