Story | ナノ
01-08
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『プルルルル…』

 電話呼び出し音を暫く聞き、相手を待つ。
待たされている間、どんどんと緊張感が競り上がって来るが今更切る訳にはいかず、固まったまま待っていた。

暫くすると繋がった音が聞こえ、勝手に背筋が伸びた。

「………もしもし…?」

 少し不信感を含ませた声の相手に繋がった。
冷たい声だ。
感情がない声。

それにこちらが不安になってしまった。

「あ、あの…
 結月楓花なんですが……あの、昨日家まで運んでもらった…」

「…………、」

「……え、と…」
「身体、平気か…?」
戸惑いをあらわにすると思ってもいない言葉。

「え…?あ、はい。」

慌てた様子でこくりと頷く。
その楓花の行動を見て、依鈴は可笑しくなり笑っている。

「……あいつに代わる。」
「え…?」

ピ、と短い電子音の後に保留音が聞こえた。

 正直どうして良いか分からない。
と言うか現状把握出来ないでいた。
どうしようもなく待っていると、また短い電子音が聞こえた。

「もしもし、お電話変わりました。」

次に聞こえたのは軽い口調の男性の声。
あまりの雰囲気の違いに内心混乱しつつ、短く返事をした。

「あ、楓花ちゃんだっけ…?」

「えと、゙サクレ゙さん…?」
「ん…?」

楓花の問いに相手は不思議そうな声になる。

番号を間違えたかと不安になっていると向こうから笑い声が聞こえた。

「…それ、サクレでなく、スズクレ。
 同じクラスにいないか?紗暮って名前の奴…。」

「………、」

 羞恥。その他に驚きと納得をし、電話口だと言うのに手をパタパタと動かした。

「え、じゃあ……、紗暮一皐くんのお、お兄さんですか…?!」

紗暮、と聞いて依鈴が反応し、どういう事だと耳打ちしてくる。
しかし、余裕がない楓花。

「そうそう。
 身体、平気かぁ?」

「あ、はい。……じゃなくて…、」

次に頭をぶんぶんと振る。
「道端で倒れてたんですよね?私…」

「ん…?んー、そう。倒れてたよ。
 すっげぇ心配した。」
少し真剣な調子で言われた。
ちょっと低い男性の声に耳打ちされたような感覚が起きた様な…
意識もしていないのに顔が熱くなるのがわかった。

「あ、えと…ありがとうございました。
 その、重かったですよね、私…。」

楓花の控えめな言葉に彼は笑い、
「びっくりする程軽かったよ。ちゃんと飯食ってるのか?
 今はそっちが不安だよ。」
と言うのだった。

「今度、家に来いよ。色々話したいこともあるしな。」
「え…?」

「厭…。あっと、もう仕事いかないとなんだ。
 また今度な。」
「え…あ、はい。わかりました。
 本当にありがとうございました。」

言い、電話を切った。
ふぅ、と息をつく。

 何だか優しそうな人だった。

「…あれ…?」

そういえば、最初に出たのは…。

思い返してみると聞いたことがある声だった。
ついさっき聞いた彼の声。

「……?」

でも、さっき見送ったばかり。
家に帰るのが早すぎはしないだろうか…?

 疑問に頭を巡らせていると両肩を捕まれた。
ガッシリと。

「ふ、楓花?!で、電話の相手、誰だったの…?!」

そしてガクガクと揺さぶりをおもいっきしかけられ、頭ががくんがくんと動く。

必死に舌を噛まないようにしてされるがままに揺さぶられ、彼女の興奮が冷めるのを待った。

「ちょっと、楓花!!なんとか言えッ」

「ぐぉ〜ー…」

 喋りたくても喋れないんだって。
頭で思うだけで、唯唸るだけ。

でもどうしよう。
頭、すっごく痛いや。
特に後頭部とこめかみあたりが…。




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