Story | ナノ
01-07
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 早くも、時刻は午後三時を迎えた。
午後のホームルームも終え、部活に向かう生徒、帰宅する生徒が廊下に溢れ返っている。
教室にも数名。仲良しグループで集まり、楽しそうに戯れていた。

そんな中に楓花と依鈴の姿。

「じゃあ、絶対に一緒にいてね…?」
「わーかってるわよぉ!」

楓花の言葉に何故だか依鈴はノリ良く答える。
絶対に楽しんでいるのだが…

「……、ぁ…、」

 依鈴の調子に呆れたように視線を外すと教室の出入口付近、紗暮の席が目に止まった。

まだ、彼は帰宅の準備をしているらしく今はまだ帰る様子がない。

「………」

「…?!」
しばらく彼の様子を見ていると、頬にブスリと何かが刺さってきた。
痛みに身を引くと嫌な笑みを満面に浮かべた依鈴がこちらを見て、楓花の視線の先を見た。

「紗暮くん?彼がそんなに気になるわけ?」
「あ、いや…ちがッ…」

ぶんぶんと頭を振ると依鈴はわざとらしく耳打ちしてきた。
「顔も、行動も、頭も良いから周りの女子に人気だけど、性格、すっごい悪いらしいよ。」

「…へぇ…」

 性格…と言うより態度と言葉遣いが悪いのでは、と思った。
まあ、夢で見たイメージだけれど。
実際はどんな子なのか、わからない。

「……、」

「…………!」

 目があった。
じっと彼はこちらを見てくる。

「……」

すっ、と目が細められ、一瞬彼の視線が彼の机に向けられ、またこちらに戻る。

「………?」

゙机の上を見てみろ゙

そんな風に言われたような気がした。

「……」
「…どうしたの?そんな青ざめて…」
丁度、依鈴には見られていなく、楓花の表情を見て視線の先を見る。

「……、」

 ガタンと椅子を乱暴に退かして立ち上がった楓花はもういない紗暮の席に向かった。

「……これ、」

「なになに…?」

驚愕の表情を浮かべる楓花の後ろからひょっこりと顔を覗かせた依鈴は良く分からず首を傾げた。

「……なにこれ…?」

 机の上には鳥の大きな風切り羽。
固い羽根を手に取り、くるくると回すように眺める。

「…これ…」

烏の羽根だ。
魔烏と名乗ったシェルシェの羽根。
緑…厭翡翠色の淡い翠。

――ガタン、

「…!!ちょッ…」

 依鈴の呼び掛けに答えず、教室を出た。
そして廊下を歩いていく彼に…
「紗暮 一皐くん…!!」

「………、」

名前を呼ぶと、彼は特に驚いた風でもなくこちらに視線を向ける。

「………これ、」
羽根を見せる。
「これ、シェルシェって烏の羽根だよね?!」

言うと、小さく微笑まれ、さぁ…と返された。
絶対に何かを知っている風に。

「…………、」

そのまま立ち去ってしまう一皐を唯黙って見ていた。

 多分…昨日のは、夢じゃない。
そんな風に言われた気が…した。

暫くそうしてると隣から聞き慣れた声が。
「……楓花…?」

「…え、ぁ……ああ!!」

声に現実に戻された楓花は変に飛び退き、依鈴に向き直った。

「紗暮くんと知り合いなの…?」
「…え、な、なんで……?」
「だって、なんか知ってる風だったし…。
 と言うか、紗暮くんがあんな優しそうに笑ったの、初めて見たよ?」

 優しそう…?
絶対に違う。
あれは馬鹿にしたのだ。絶対…。

胸中で悪態付いたが、声には出さないでおいた。
だって、そこまで紗暮一皐とは親しくもないし、知人かどうかも不明なのだから。

「…………、」

 手に持っている羽根を眺める。

どうしてこの羽根を自分に渡したのだろうか。
それが分からない。
だけど、捨ててはいけない気がしてブレザーのポケットに入れた。
なんだ少し不思議な気分。

 この話しは終わり、と踵を返し教室に戻ろうと楓花は動いた。
その後を慌てて依鈴は着いていく。

少し乱暴に席に着くと携帯電話を開き、
「じゃあ…もう、電話するね…?」

「うんうん。」
待ってました、と言う感じに笑い、頷く依鈴を見て、携帯電話に番号を入力していく。

「……」



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