「手ェでけぇな、アンタ」
ぴたりと手のひらを合わせて、明王が呟く。体温の低い小さな手のひらが、道也の乾いた手のひらに隙間もなくくっついている。
「お前は小さいな」
「るせぇ」
からかえばふてくされたように唇を尖らせた明王に手のひらを引っ掛かれた。くすぐったいだけだった。
白い指が、節張った手指で遊ぶ。道也の手はとうに成人した男の手で大きく、しかしそれと比べたにしても明王の手は小さかった。末端まで栄養が行き届かなくて、小さな蕾を開かせることすら儘ならないような路傍の花を思い出させた。
「ずるいよな」
ポツリと落ちた言葉に、道也は本に落としていた視線を上げた。右手を恨めしげに睨み付ける明王は、ずるい、と再び呟いた。
「アンタもうちょっと縮めよ」
「無理を言うな」
「できるって、アンタならできるできる」
やけっぱちのように言いながら、明王は道也の手の甲に爪を立てた。地味に痛い。
「お前もそのうち、大きくなる」
「アンタには追い付けねぇ気がする。だから今、さっさと縮め」
「無理だ」
「……ばーか」
ふんと鼻を鳴らして、明王は右手を解放した。手から体へ目を向ければ、明王は細い背中を向けていた。
「……不動」
「ぁに」
「お前は、そのままでいい」
形の良い頭に手を置いて、そのまま撫でる。明王は振り向かなかったが、不服そうに、しかし耳まで赤く染めていた。
そのままでいい。
いまは、そのままで。
もっと、愛で肥えて、そうしたら、
余った分で、おおきくなればいい。
あまり大きくなるなよ。ちょうど腕の中に収まる体を抱き締めながら言えば、剥き出しの後頭部を顎にぶつけられた。
抱き枕のサイズ
20101214