しばらくうろうろと辺りを浮遊していると、青と黄色のユニフォームが走ってきた。銀白色の頭と、ドレッドゴーグルマント。豪炎寺と鬼道だ。先ほどの少女…妹と一緒だ。豪炎寺妹は先ほど立っていた辺りに立って、辺りをきょろきょろと見回している。恐らく不動を捜しているのだろう。ゆっくり近づいて、妹の視界にギリギリ入か入らないかの位置に立ってみる。豪炎寺は困惑顔で妹に何事かを訊ねている。妹は何事かを訴えながら、不動の姿を捜していた。
辺りを見渡していた妹が、不動の姿を捉えた。そのまま不動を指差し、豪炎寺の手を引いて駆け寄ってきた。

「ほら、ここ、ここにいるよ」

妹が指差す先、不動のいる辺りを豪炎寺と鬼道も見るが、二人には何も見えていないらしい。顔を見合わせて首をかしげている。そんな二人の様子に妹はここにいるの、本当だよと訴えた。
豪炎寺は泣きそうな妹をなだめ、鬼道は不動のいる辺りを見ている。ゴーグル越しなので本当に見ているかはわからない。

「夕香ちゃん、不動の声はきこえるのか?」

鬼道が訊ねた。妹の名前は夕香と言うらしい。夕香はわからないといった風に首をかしげた。
涙目のまま夕香は不動を見上げた。こっちみんな。ぼそっと呟くと、夕香はきこえるよ!と嬉しそうに笑った。鬼道はうなずくと、今から質問するから、不動の答えを聞いてくれと言った。


「不動、今までどこに居た?」
「響木サンとこ」
「なんで…その、幽霊になっている」
「事故った。横断歩道渡ってたら軽トラに突っ込まれた」
「…死んだのか?」
「わかんねえ。今体は、そこん中にいるけど」

そこ?と鬼道が首をかしげた。鬼道には不動の姿は見えていないのだった。夕香が不動の指差した先、病院を示した。鬼道に目配せされた豪炎寺がうなずいて、病院へ走っていった。

「夕香ちゃんが、雷門まで知らせに来てくれた。もうすぐ円堂たちも来るだろう」
「来なくていいんだけど」
「馬鹿なことを言うな」

ぴしゃりと叱られてしまった。なぜか夕香も首を竦めていた。鬼道は溜息をひとつ吐くと、中庭に移動しようと言った。不動には移動の必要は無いが、どうやら他の面子を中庭に呼んでいるらしい。
空中を滑るように移動すると、夕香がすごい、すごいと歓声を上げた。何が凄いのかと思ったが、不動自身も楽しんでいたので何も言わなかった。





20101118





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