何て悪趣味な夢だ。不動はいやに高い視界で思った。
地面が遠い。今不動が居るのは、自動車用信号機の上だ。流石に人がゴミには見えねぇな。心内で呟いて、不動は不動を乗せようとしている救急車を見下ろした。
ヒトって呆気ねぇ。ちょっと頭をコンクリートに打ち付けただけでタマシイとやらが飛び出てる。弱くて、脆くて、まるで『ゴミのようだ』。
不動が鼻で笑ったとき、救急車がサイレンを鳴らして走り出した。警察はその場で何やらバインダーに書き込んでいる。あれはどこに持っていかれるのだろうか。救急車を追うために一歩踏み出すと、何かに引かれるように体が滑り出した。



着いた先は雷門にある病院だった。流石に処置室には入る気になれず、不動は入り口の前で止まった。不動の体をすり抜けて、看護師や医師が走り回る。奇妙な感覚だ。
不動が処置を受けているであろう扉は、どこかで見たことのある眼鏡医師を入れて、それきり開かなくなった。扉に手を触れようとしてみたが、すり抜けてしまった。特に面白味はなかった。

くるりと方向転換をして、外に出てみた。今日は快晴、風は強かったが、そんなことは今の不動には関係のないことだった。ふわりと浮き上がって、上昇。病院の屋上まで昇る。常なら足がすくみそうな高さではあるが、恐ろしいとは思わなかった。
高いところは色々なものが見える。背の低い不動には新鮮な視界だ。ちょっと楽しくなった不動は、また地上へと戻ってみた。
行き交う人並みを眺めていると、不意に一人の少女と目があった。どこかで見たことがある顔だが、思い出せない。少女も目を合わせたまま首をかしげている。
そのまま見つめ合って数十秒後、ふと気がついた。
何故あの少女は、いわゆる『幽霊』の不動が見えているのか。
気付いたと同時に、あ、と驚いたような顔をして、少女は慌ててきびすを返して走り出した。
少女の背中を見送ってからようやく気付いた。あの少女は確か、イナズマジャパンでともに世界と戦った豪炎寺の妹だ。空港で一度だけ見たことがある。どこに行ってしまったのだろうか。





20101118







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