ありがとうございました!
お礼はねこあきおのおはなしです。苦手な人はにげて!
まだかあさんのお腹に居た頃(真っ暗であったかかった)、俺はナマエがなくて、
かあさんのお腹から出たあとは、ナマエはもらえなくて、おっきく(かあさんのおっぱいがいらなくなった)ころに、俺はひとりで、ソトに連れて行かれた。
はこにふとん(俺のツメがひっかかったせいでぼろぼろだ)といっしょに入れられて、ヒトに運ばれて、俺ははじめてソトに出た。
「むかえにくるからね、まっててね、ごめんね、ごめんね…」
ヒトの声がきこえて、俺はその声にわかったとこたえた。たぶんヒトはわからなかったと思う。
ヒトは俺をソトに置いていった。やわらかい手をぎゅっとにぎって、下を向いたままいってしまった。
(むかえにくる、って、いってた)
しけってきた空気に顔をなでながら、はこの中で丸くなった。
雨のにおい。俺はふとんにしがみついた。
ざあざあと耳がぺったりするような音といっしょに、雨が俺にふりかかってきた。
シャワーと似てる。でもやさしくない。つめたい、いたい、
はやく、むかえにきて
急にまわりが暗くなって、俺は夜になったのかと思って顔を上げた。
そうしたら、おっきなヒトが真っ黒な目で俺をじっと見てた。俺はそいつが誰だかわからなくてじっとしていた。
おっきなヒトは俺をじっと見てたかと思うと、急にはこごと俺を持ち上げた。
また俺の顔をじっと見て、ちいさく、俺にしかきこえないくらいちいさく、かえるぞ、と言った。
いつのまにか、雨はやんでた。
おっきなヒトといっしょに、うちに帰った。でもうちはまえのうちとはちがくて、俺はがんばってにおいを覚えた。
おっきなヒトに抱っこされまたまま、こんどはホントのシャワーをあびた。
いつもの手よりおっきな手も、ふとんよりふわふわのふとんもきもちよくて、俺はついのどをごろごろ鳴らしてしまった。
ヒトのひざの上は、とても居心地がよかった。ごつごつした手が俺をやさしくなでる。
俺はずっとそうしていてもらいたくて、ヒトのひざにぎゅっとしがみついた。
「……お前の名前は、不動、だな。」
ヒトがちいさく言った。フドウ。俺は、フドウ。
「不動。」
ヒトがやさしく、俺を呼んだ。
俺は、やっと、生まれた。
猫のきもち
20100811
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