青い鳥を手に入れる努力は並大抵のことじゃない | ナノ

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 長谷部先生を連れてきたことに堅太は驚いた。
 驚いたからかシュークリームの件は忘れられたのか触れられなかった。
 堅太がもし玖波那の言うとおりにアレを浮気だと判断したなら俺はどうすればいんだろう。
 嘆いたところで信頼は戻って来ない。
 だが、俺は繰り返そうとしていた。
 愚かさゆえというよりも堅太への欲望が抑えきれない。
 弟様は堅太と家族であるという事実は元より堅太のファーストキスの相手じゃないのかと睨んでいる。
 放任の両親が堅太の唇を一番に奪ったとは考えにくい。
 きっと弟様だ。
 大穴で猫だろう。
 それなら俺と弟様がキスをしても何の不思議もない。
 堅太との間接キス、いいや堅太のキスを取り返そうと思えばむしろ俺は弟様と唇を合わせないとならない使命感するら湧いてくる。
 
 後日、これを玖波那に語ったところ「じゃあケンちゃんが陛下を犯したい奴や陛下に犯されたい奴に襲われてもいいていうんだ!?」と怒られた。堅太を犯した人間も堅太に犯された人間もただで済ますつもりはないが真っ先にする必要があるのは堅太の心のケアだろう。
 堅太が自分を襲った人間をボロ雑巾にしてい欲しいと言うのなら俺は情け容赦など持ち合わせずに裏も表もすべて含めて対象者を抹殺することに躊躇はない。
 
『陛下のあほっ。ケンちゃんが襲われるリスクを考えて陛下は考え方を改めてッ』
 
 と恒常的に正しい玖波那翔悟の言葉に真っ青になった堅太が頷いていた。
 世界は怖いものばかり。
 堅太はやはり自宅警備員という名の玖波那つきで家にいるべきじゃないだろうか。
 
 
 長谷部先生と堅太はヒソヒソ話しながら室内を巡る。
 俺は基本的に機械は専門外なのでソファに座っていた。
 一般生徒の部屋とは違い、生徒会長の部屋は広い。
 リビングにテレビと棚とソファーを置いて少し離れた場所に食卓用のテーブルが余裕で置ける。
 六人掛けのテーブルは生徒会役員全員が一か所に集まることが出来るように考えられているのだろう。
 俺は役員を自分の部屋に読んだことは一度もないしプライベートでの会話をした記憶もない。
 会計の土並に関しては堅太とのことを祝福してくれる関係で比較的多く会話を交わしている。
 どうやら土並は以前堅太におむすびを貰ったことがあるらしい。
 あっちこっちで餌付けをしている堅太の恐ろしさ。
 気を抜いたら俺を置いてどこかに行く気なんじゃないだろうか。
 
 そんな不安は聞こえてきた猫の声に立ち消えた。
 やはり奴はいる。
 
 俺は周囲を探るように神経を尖らせたが何も見えない。
 霊能者ではないので当然かもしれない。
 置物に憑依したからこそ俺にも感じられたのだ。
 そんなことを思って俺はクッションを抱きしめて堅太を待った。
 今日の夕食はスズキのホイル焼きだ。
 いい匂いがする。
 メイン以外にも小鉢がいくつかテーブルに置かれている。
 サラダは二種類。あっさりさっぱり豆腐サラダとアボカドとトマトがクルミが上に散ったいつも堅太が瓶に入れているサラダ。
 堅太は急な来客にも対応するようにか余分に料理を作るので先生の分も問題ない。
 誰も食べないのなら翌日のお弁当にしたり弟様や玖波那の朝ごはんにすればいい。
 俺の暮らしを楽にすることを生きがいにしているような堅太に愛を感じるのだが弟様は苦笑い。
 きっと堅太は好きでやっているから俺のためとは違うと言いたいのだろう。
 ひとりだったとしても堅太はカップ麺で食事を済ませることはない。
 俺がいなくても料理は作るだろうが俺がいるからこそ魚料理が出てきた。
 病院から消化にいい何より本人が望んだものを食べさせるように言われていた。
 俺は取り扱い注意の狂人のレッテルが張られた。
 それは構わないが堅太に対してくれぐれも気を付けるようにいうのはどうだろう。
 家庭の医学や栄養学を忙しい中、勉強する堅太。
 堅太はこの世界の誰より俺を愛していると思う。
 感動する俺に「これはどちらかというと俺のためだ」と木佐木冬空に何かがあると繭崎堅太が困る発言。そこにはきっと愛しかない。
 

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