青い鳥を手に入れる努力は並大抵のことじゃない | ナノ

  3



「俺の人生に堅太は必要なんだ」
「恋愛的な意味は抜きで?」
「それで傍に居てもいいって言ってくれるならそれでもいいって……言いたいけど、俺は堅太に気持ちよくなって欲しいから自慰の手伝いとかはしたい」
「どうしてそんなに明け透けなんだ」
「気にしなくてもいい。堅太のアナルに俺のペニスが挿入されても、それは堅太の自慰でしかない」
「そんなわけない」
「……そう思えば気にならなくなるかと思ったんだが無理か」
「ムリだ。……だって、そういうのは好きな人とするものだろ」
 
 俺は今更、ものすごく衝撃を受けた。
 
「堅太は去年、俺と親衛隊が好き合っていると思ったのか!?」
「セックスをするっていうのはそういう事だ」
「まさか……そんな……」
「なんでショック受けてんだ」
「同性におけるセックスは男女間のそれとは違い肉体的快楽を得るためのものであるって」
「誰から聞いたんだ、親衛隊?」
「ネット」
 
 一般的なゲイというものがどういうものなのか調べた結果、俺はハッテン場というものを知った。
 アナルセックスによりエイズが広がる理由とかそういったものを知り、同性の場合の性行為をするハードルの低さを知っていた。
 
「俺はゲイではないが男を抱いて男を好きならゲイっぽい行動をとって問題はないだろう」
「ゲイの人が浮気性みたいに言うな! 決まった相手がいなかったり、出来ないから同じ性癖のもの同士で発散するのと恋人がいて恋人から嫉妬や怒りを欲しがって自分を好きだと言っている相手を利用するのは全然違うだろう」
「そうなのか?」
 
 親衛隊と俺の距離感の問題だろうか。
 俺が思うよりも親衛隊というものは俺に密着したものなのかもしれない。
 玖波那が俺の姑だって言ってたしな。
 そういうものなのかと痛みを忘れて頷いていると堅太に頬を両手で挟まれた。
 痛みに声が出たが「俺は去年の内にビンタの一発でもしておけばよかったな」と言われて固まる。
 別れの言葉以外、俺は堅太から何かを貰ってはいない。
 本当は殴られて「ふざけるな」の一言があるべきなんだろう。
 
『ふざけんなっ、てめぇ!』
 
 倒れる前にそんな言葉を聞いた気がする。幻聴だろうか。
 ジッと堅太を見ていると首を傾げられた。
 かわいい。愛しい。大好きだって思いが溢れる。
 
「堅太の正しさで裁いてくれて構わない」
「それは無意味だろ」
「俺が反省していないと言いたいのなら、それは違う。反省や後悔よりも愛が上回っているから堅太から離れたくないんだ」
「我が儘だ」
「好きな相手と一緒にいるのはそんなにおかしなことなのか?」
「どうしてそんなに堂々と開き直れるんだ」
「好きだから以外の理由がない。俺は堅太が作り出す料理も空間も堅太自身の感情も全部が好きだ」
 
 どこか堅太は歯噛みするように微妙な顔をして俺を見る。
 瞳がずるいと言っている。
 本当のこと、事実を口に出すのは悪いことだろうか。
 
「俺がどういう気持ちでそういう言葉を聞くか分かる?」 
 
 嫌なのだろうか、こういうことを言われるのは。
 俺は堅太がそう言ってくれたら嬉しい。自分がされて嬉しいことをするのは自然なことだ。
 そこで思うのが頬というか額から顔全体の怪我。
 
 俺は堅太が宇宙人に侵略を受けても果たして変わらずに愛を囁けるだろうか。
 頭の中まで征服されてしまった堅太は俺が愛した堅太と言えるのか。
 答えは否。俺の堅太は宇宙人に侵略されたりしない。
 もし転入生である宇宙人に心を許して身体を明け渡していたのなら俺は堅太を忘れられないまでも近づくことはしなかったかもしれない。俺の堅太ではなくなった堅太を実感するのは苦しい。自分からわざわざ傷つきに行く人間はいないだろう。
 それに転入生の瞳を堅太が求めるのなら俺は不要になる。
 俺が渡した指輪は意味をなくしてしまう。
 
 だから、俺は宇宙人を脅威だと思った。

prev / next

[ アンケート ][拍手][ 青い鳥top ]

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -