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堅太が俺を求めた理由を忘れていた。
『とあ、とあの髪、サラサラだな……。撫で心地がそっくりだ』
微笑んで俺の頭を撫でる堅太。
人に頭を触れられるなんて嫌で堪らなかったのに堅太には許せた。
じゃれついて「にゃー」なんて言ってくる堅太は死ぬほどかわいい。
『とあ、……なあ、俺のこと好き?』
もちろんだと答えれば堅太は嬉しそうに満面の笑み。
それは二人で部屋にいる時だけ。
俺は四六時中でも堅太と一緒に居たかった。
それができない理由が呑み込めなかった。
だから親衛隊を使って堅太に揺さぶりをかけた。
一度二人の関係が堂々とした形で表に出せばいいと思っていた。
堅太が嫌がるから部屋以外での過度な接触はしていないが俺はいつでも堅太のそばに居たかった。
それを叶えるための画策の一環で堅太を傷つけたとしても最終的に理解してくれると期待した。
俺の行動は愛が基準だったから拒絶される可能性など考えもしない。
堅太は俺を愛していて俺に愛されることを求めていた。
なら、どんなことをしても二人の繋がりが切れるなんてありえない、そう思ったのだ。
愛にあぐらをかいた恥ずべき行動だと今なら分かる。
『俺を好きだって言って、俺だけを愛して、俺が泣いたら傍に来て慰めて』
見せることが少ない堅太の感情爆発。
見合いなんてしたとしてもただの付き合いでしかない。
婚約や結婚などするわけがない。
俺に必要なのは全部俺自身が決めるのだから堅太が不安に思うことはない。
恋をして愛しているのは堅太だけだ。
堅太にそれを理解してもらいたくて甘やかすのは楽しかった。
だから、堅太の激情を深く考えずに流していた。
『だって、ずっとそうしてくれてた!』
果たして感情を乱したその瞳は俺を見ていただろうか。
学園に居るはずのない猫を幻視してはいなかっただろうか。
青い鳥の羽を切る以前の問題だ。
鳥は猫の牙で傷つけられて飛び立てる力もなかった。
青い鳥を手に入れる前に治療と手入れこそが必要だった。
けれど、青い鳥からすれば猫の腹の中に納まってしまうのが一番幸せなのかもしれない。
幸せな鳥籠のカタチを誰も知らないのだ。
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