青い鳥を手に入れる努力は並大抵のことじゃない | ナノ

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 堅太に同室者が出来ると聞いた時にきちんと対処するべきだった。
 写真を見て堅太の好みどころか苦手なタイプだろうと放置してこの有様だ。
 
 さて、これから俺はどうするべきなのか。
 幸いとでもいうべきか俺は宇宙人に好かれているらしい。
 宇宙人がいれば堅太もいる。
 なら、まだ最悪の展開ではない。
 
「男は逆境を跳ね除けてこそ輝くものだ、そうだろう?」
「陛下、かっこいい〜!! ヒューヒュー!!!」
 
 気を取り直した俺は玖波那に礼を告げて、最後に一言、懺悔のように今の心境を口にする。
 
「俺は本当に大馬鹿者だった。……俺は堅太が泣いているのを見て一生堅太のそばに居るのを誓った。それは堅太を泣かさないためだ。堅太が泣かなくていいように俺は永遠を誓った」
 
 俺の想いは永遠だったが堅太には俺がブレて見えただろう。

 それこそが俺が堅太にした裏切りだ。

 泣かさないことをあの日に誓ったのに俺は堅太を泣かそうとしたのだ、故意に。
 これが裏切りではなく何だと言うんだ。過去に戻ることが出来るのなら俺は自分を刺し殺しておくだろう。
 なぜなら堅太を裏切ろうと行動する俺は木佐木冬空という俺自身を裏切っているのだから俺は俺に殺されても仕方ないのだ。

 堅太と別れたことによって堅太がいない日々を送ることがつらいと感じていたので自分の行動を反省したが俺の堅太への愛情は変わりがないので根本的に裏切った自覚などなかった。
 たとえば道に迷ったときに人に行き先を尋ねたとして相手が間違った場所を教えてくれたとしても迷っている俺には辿りつくまで目的地が合っているのか間違っているのか分からない。
 道の途中で察することが出来なかった点は反省するにしても堅太を求めて歩いていた事実は変えようがないのだから愛も感情も俺の全ては堅太に向けられていて批難されるいわれはない。
 もちろん、普通は地図を参照するから俺の進み方はおかしかったのだと外野から言われるのは分かる。事実、親衛隊の中でさえ俺の行動に対して批判や戸惑い、呆れなどの感情があった。
 玖波那にも色々と言われたが所詮は出来る人間の言い分だ。
 俺は他人に対して気を遣ったりすることを生きていて殆どしてこなかった人間だ。
 それは異常であるのだと堅太や玖波那に教えられて多少は考えるようにしているが他人に意識を払って配慮したり大切にしたりする気持ちが全く芽生えない。
 例外が堅太であり俺は堅太を中心にして世界を再構築しているといっていい。
 以前の俺なら自分の親衛隊長の名前を覚えることなどしなかっただろうし、サッカー部のエースの名前など思い浮かぶこともなかった。
 それは俺の人生に必要のない名前だからだ。
 堅太に関わっているというそれだけのことで俺は天利祢雨音と伊須海夢の名前を記憶した。
 俺という存在が人間という常識から外れているのは理解しているそれを問題だと考えたのは堅太と玖波那だけだ。
 俺は俺という人間がズレていることをもう少し心得て玖波那を頼るべきだった。
 蛇は甘言を囁いて堕落に導く存在だ。
 知恵の実であるリンゴを食べて全裸であることに羞恥心を覚えるように俺は初めて俺の存在が恥ずかしくなった。

 俺は分かっていなかった。何も理解していない。

 玖波那に「人のせいにしないで自分が悪かったこと認めなさいってば」そう言われても俺は心から自分が悪いと認めたりしていなかった。
 俺を変な方向へ先導した人間が悪いのであって俺は堅太を思っていたのだから結果はどうであれ俺の堅太への愛は間違ったものではない。
 そう誇っていた。
 俺は俺の間違いを認める気がなかった。
 そもそも堅太を不安にさせていたことこそが間違っていたというのに。
 宇宙人を猫可愛がりする堅太を見るまで気づけなかった。
 あの猫に俺は勝った気になったのが敗因。
 猫は堅太を不安になどさせない。だからこそ、堅太は猫を愛していた。
 俺もそうであると、堅太を何より愛する存在であることを誓ったのだ。
 
「木佐木冬空、お前がちゃんと正しく反省してるならまだ間に合うだろ。なあ、永遠陛下?」 
 
 一生モノの想いを疑われたことが俺には理解が出来なかった。
 どんな行動をとったところで俺の愛が疑われる意味が分からない。
 反省点を他者に求めて、人の甘言に乗ったことが失敗の元だと考えたが違う。
 俺が大切なことを見落として、忘れていたのだ。


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