青い鳥を手に入れる努力は並大抵のことじゃない | ナノ

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 ニコニコと笑う宇宙人。
 名前は鯨井青葉というらしい。
 覚える気もなかったが心底腹立たしいがそうもいかない。
 俺はコイツの名前を覚えて呪わないとならないのだ。
 こんな屈辱あっていいわけがない。
 本当なら俺はコイツを八つ裂きにするべきだ。
 それが許されないなんておかしい。
 玖波那に抗議すると苦笑いを返されるだけだった。
 
「永遠はオレのこと好きだよな〜」
 
 ふざけたことを言い出す口を縫いつけたいが堅太が「二人は仲良しだな」と微笑んで鯨井の頭を撫でる。
 堅太の指使いはなかなかなのか鯨井は目を細めて気持ちよさそうにした。
 
 ありえない、ありえない、ありえない!!!!!
 
 堅太は気軽に笑わない。人の頭は、まあ自分より背が低いなら撫でるかもしれない。
 俺の親衛隊長の天利祢雨音の頭を撫でているのは見たことがある。
 同室の頃から俺のことだって堅太は頭を撫でていた。
 嬉しそうな顔をする鯨井の顔面をぐちゃぐちゃにしてやりたい。
 
「なんだ、永遠もケンタに嫉妬してんのか? オレのこと膝に乗せたいなら、乗ってやってもいいぞッ」
 
 お前を膝に乗せたいわけがあるか!
 死ね。俺の膝は堅太専用だ、バカめが。
 堅太に頭を撫でてもらうとか呪われろ。
 今すぐ血反吐を吐いてのたうち回って苦しんで死ね。
 
 
 ここは生徒会室だ。
 
 
 現在は放課後で俺は生徒会長としての責務を全うしている最中。
 そんな場所でなぜ転入宇宙人、鯨井という一般生徒の顔をした未確認生命体が我が物顔でお茶とお菓子を飲み食いしているのか俺は理解できない。
 生徒会室への立ち入りは役員と一部の人間以外厳禁とされている。
 堅太はいい。俺の一部だから堅太の出入りが禁止されることなどありえない。
 俺に異議を申し立てられる人間などこの世に居ないから堅太の存在は何も問題ない。
 鯨井はさっさと自分の惑星に帰るべきだ。
 エイリアンアブダクションの経験者かと思ったがコイツ自身が宇宙人だった。
 地球を乗っ取られる前に駆除しなければマズい。
 俺の堅太を籠絡しようとするなんて生まれ直しても許されない大罪だ。
 鯨井が一度死んで生まれ変わってまだ人間だったら家畜にも劣る扱いをすることを俺は来世に誓う。
 ちなみに来世でも俺と堅太は人間で恋人同士だ。決定済みだ。
 性別が違っても許そう。堅太がたとえカエルの姿になっていたとしても俺は見つけ出して愛を誓い合える。
 きっとキスで魔法が解けるだろう。
 カエルとキスするのは気が進まないが堅太であるなら話は別だ。
 カエルとキスをすると考えるのではなく堅太とキスをすると考えればいい。
 
「堅太がカエルでも俺は堅太を愛してる」
 
 俺の言葉に感動したのか堅太は無言でお茶菓子のクッキーを食べた。
 堅太の特技、聞き流しだ。
 
 副会長である孤塚が転入生という名の宇宙人を捕獲して生徒会室に連れてくるのは迷惑極まりなかったが堅太がついてくるとなれば話は別だ。
 そう、ありえない話だが堅太は目の前の宇宙人と常に一緒に行動しているという。
 うどんの件からして二人がそばにいるのはありえないことのはずだった。
 あの時に食べていたのが蕎麦じゃなかったからセーフなんてそんな話じゃない。
 確実に堅太から嫌われただろう鯨井は宇宙人らしい催眠電波で堅太の思考をジャックしているとしか思えない。
 
「鯨井、あまりクッキーを食べると夕飯が入らなくなる」
 
 宇宙人の口元についたお菓子のクズを堅太が払う。
 暇でもないのに孤塚がそれを恨めしそうな顔で見た。
 宇宙人の唇に触れたいとでもいうんだろうか。
 俺は堅太の指先を唇で感じたい。羨ましい。
 クジラは超音波で意思疎通を行うというから宇宙人もクジラを名乗るだけあって音波攻撃で堅太を洗脳しているんだ。
 そうでもなければ穏やかな顔の堅太はおかしい。おかしいんだよ!
 
「ボロボロとこぼすな。掃除してから帰れよ」
 
 常識的な発言で堅太からのポイントを上げようと思ったら堅太に謝られた。
 掃除をしようとする堅太に「堅太に言ったんじゃない」と告げても納得しない。どうして堅太が非常識な宇宙人の世話を妬いているんだ!
 俺の堅太が宇宙人に汚染されている。
 こんなに悲しいことはない。
 
 涙で前が見えない。
 まあ実際は泣いてないので前が見えないのは目を閉じて真っ暗だからだ。
 これがお先真っ暗というやつか。
 
 
 
 こんなことになったのは先日のことが原因に決まっている。
 思い出しても憎々しい。
 この世のすべての悪意をまとめて宇宙人にぶつけてやりたい。全力で!
 堅太に構われてる位置は、どう考えても俺だろ。
 

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