青い鳥を手に入れる努力は並大抵のことじゃない | ナノ

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「あぁ、だから生徒会長を辞任して一般生徒になって堅太と同室になる。堅太は同室者が不在だろう。問題ないはずだ」
 
 友人である以前に風紀委員長だから義理を通して玖波那に一番に話をしている。
 自分の犯した過ちの後悔を懺悔として吐き出しつつ明日のために向き合わなければならない。
 
「いや、無理だから」
「風紀には部屋替えや同室者の指定ができるはずだ」
「問題行動がある奴とか相性の悪い奴を一緒にしないとかそういうので風紀として口出しはするけど……そういうことじゃなくって生徒会長辞めるのが無理」
「無理でも押し通す」
「陛下、俺様過ぎる。凛々しい顔でこっち見ないで」
「俺の何が問題だ?」
「問題がないから生徒会長辞められないんだってば。陛下以外に会長できる人もいないし」
「あぁ、前会長は初恋の君を追いかけて転校してしまったな」
「そういうこと。三年の先輩たちだって今更役員やりたいって人はいないだろうしさあ」
「二年でいや、この際べつに一年でも」
「それは風紀が荒れるので絶対反対ッ」

 両手を交差してバツ印を作られた。
 生徒会長なんて誰がやってもいいじゃないか。
 
「俺の人生において堅太よりも大切なものなんかないんだ。どうしてそれが分からないっ」
「どうしてそこまで好きなのに浮気するかなあ〜」
「お前はティッシュペーパーで鼻をかんだら浮気だと言うのか?」
「陛下ひどすぎる……ってか、ケンちゃんに妬いてもらうつもりだったんでしょ? だから、親衛隊に……なら、道具として見たとしてもそれなりに愛着とか」
「だからティッシュだと言っているだろティッシュ。愛着も何もティッシュはティッシュだ」
「陛下はティッシュに妬くの? ティッシュに欲情すんの?」
「俺は堅太の体液を吸収してゴミとして生涯を閉じるティッシュに嫉妬するし、堅太を思えばいくらでもティッシュに射精できるぞ」
 
 玖波那《くなみな》は当たり前のことを聞いたり確認を取ることが多い。
 俺たちの常識は噛みあうことが少ないという証明だろう。
 
「ドン引きするレベルで陛下がケンちゃんを好きなのは分かったけど会長職はそのままね」
「食堂で土下座をした件で俺の支持率は下がったんじゃないのか」
「あ、分かった上でやってたんだ。……あれねえ、なんか逆に『一途な会長素敵』って」
「頭がおかしいな」
「俺もそう思うけど衆人環視の中で土下座ってどうなの」
「あそこまでしたら逃げられないと思ったんだ。まあ、さすがは俺の堅太。雰囲気に飲まれることがなかった」
「そういう腹黒いとこがケンちゃんに嫌われたんじゃない? ケンちゃんは派手なパフォーマンスみたいなのキライだから謝罪は誠意を見せないと」
「誠意ってなんだ? 俺が謝ったら許すものだろう」
「そういう俺様発言を自重するとこから始めたらどうかなー」
 
 何が俺様発言なのか分からない。
 堅太にも常日頃から気分屋だよねと言われてきたが俺のどこに問題があるって言うんだ。
 
「俺に問題はない。土下座しても恋人とよりを戻せなかった男を有難がっているやつらがおかしい」
「その通りだと俺も思うけどね。今までの陛下の功績をなかったことにできないし」
「何かをした覚えがないが……問題はどうやってもう一度堅太と付き合うかだ。復縁したらより一層、二人の絆が深まってめでたしめでたしという流れだろう?」
 
 分かっているぞと玖波那《くなみな》を見るが遠い目をされた。
 俺の堅太を思った特上スマイルに対して魅了されないのはともかく疲れた顔をするなんて舐めてやがる。
 
「――そういやあ、陛下ってケンちゃんとそんなに喋らないよね」
 
 四六時中堅太と一緒に居ても俺たちに会話は少ない。
 熟年夫婦というやつだ。
 

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