副会長は何がなんでも頑張らない | ナノ

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 みんなが魔法にかかっているように釣鐘はどんな場所にでも馴染み、誰とでも仲良くなれる。
 羨ましいと思うが釣鐘は簡単に言えば資格を持っている。
 国家資格などではなく相手の心を開くためのカギ。そういったものを持っている。
 人の痛みが分かる人間。
 俺とは逆だ。
 無意識に俺は人を威圧してしまうらしく相対する人間に警戒心を抱かせる。
 危害を加える気がなくても相手は怯えて挙動不審。
 俺の考えや内面など関係なく人は外側から本心を読み取る。
 俺の考えが俺のものではないのは寂しいけれど仕方がないと割り切った。
 永久凍土だと揶揄されたとしても俺の表情筋は仕事をしない。
 
 
 治そうと言ってくれたのはきよだけだ。
 もちろん、原因を聞いたのは俺だがきよが向き合ってくれなければ俺たちの関係は始まりもせずに終わっていた。
 人から嫌われたり怯えられたり厭われるのが当たり前であるのはそんなに良い気分じゃない。
 何も感じていないように見えると言われ続けても俺の理想は釣鐘だ。
 
 朝霧きよらは得難い人間だ。
 
 俺はその釣鐘の意見に同意していた。
 得難いというのは二つの意味がある。貴重であるというのと手に入りにくいというもの。
 普通の文脈として貴重な人間だという意味のはずだが、いま、釣鐘がきよを見る視線の熱から連想するのは手に入りにくいというもの。
 諦めではない。
 渇望と焦燥感を封じ込めた瞳。
 どんな感情を持っているのか読み取りにくいが長い付き合いの俺から言わせてもらうなら失くしたくない大切な気持ちというものなのだろう。
 大切だからこそ簡単には表に出さない。それでも漏れ出しているのが見える。

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