副会長は何がなんでも頑張らない | ナノ

  017 腐男子Dの喚き


完全な外野側からの視点。





「ちくしょうっ、なんでこの学園は王道じゃねえんだよ」
 
 生徒会長と副会長、それと親衛隊のやりとりを見終わって俺は毒づいた。
 そもそも新歓は鬼ごっこがドロケイだろ。
 この学校は新歓がそもそもねえでやんの。
 王道学園っていえば無駄に行事が山盛りで生徒会大忙しだろうが!
 三人で回せるレベルってどうよ。ってか、行事は必要最低限だし。
 せめて、修学旅行みたいなのやれよ。
 学費はどこに消えてんだ。設備か!?
 生徒会の仕事って何してんのよ。
 去年にやったこととかつらつら説明する集会あったけど寝たし。
 副会長はアルファ波出す声してると思う。
 マジ安眠できる。
 
 って、そうじゃねえ。
 書記はどうした。ワンコ書記。双子庶務はどこだ。
 
「副会長は美人受けかと思ったらドジっ子アホの子枠だし。
 総受けの囲い込みが出来てんのに自販機のリンゴジュースで大喜びってどうゆうことだよ。
 危機感何それおいしいの。
 何気にノンケっぽいから誰ともくっつかずに卒業する気配っ。
 あれ? なに、現実ってそんなもん? 生BLどこいったぁー」
 
 ブツブツ吐き出していたら一緒に登校していた同室者が溜め息を吐いた。
 
「転入生が王道だって喜んでたじゃん」
「転入生の話題より副会長心配宗教団体に学園が汚染されてたじゃねえか」
「宗教……たしかに」
「もっと会長様に近づくんじゃないわよぉ攻撃がないと王道とは呼べない」
「転入生をイジメて欲しかったのか?」
「そういうわけじゃねえって」
「……そういってるぞ。あの人が副会長で秋津先輩が風紀委員長である限り、制裁みたいなのは起こらねえよ」
「はぁ? なんですかー?」
「この学園に一年以上いてまだわかんねえのか?
 副会長は自分の都合のいいように校則変えてるんだぞ。
 自分がやりたくない行事は潰してるし」
「は? え、初耳なんだけど……ちょ、マジで?」
「知らなかったのか?」
 
 この学園が王道じゃない諸悪の根源は副会長だっていうのか!?
 アホの子受けと見せかけて腹黒受けかよ。
 
「実際に動いたのは浅川会長と葛谷隊長、フォローに秋津先輩と釣鐘先輩が入ったから誰も文句は言わなかった」
「潰した行事って何?」
「大きいのだと体育祭とか文化祭ないだろ」
「あぁ、去年がっかりした。
 でも、部活対抗とか委員会対抗とか親衛隊大作戦とかそういうのはあった」
 
 なかったのはクラス別とか全校生徒が一丸になってやるもの。
 
「体育祭だと会長も隊長も先輩たちも引っ張りだこになるから、あの人のそばが空いちまうんだよ。中学はそれで失敗したから中等部からの持ち上がり組はみんな今の状態に納得してる。お前みたいな外部生にはきついかもしれないけど、校則で委員会や部活に参加は強制ってなってるから体育祭っぽいことや文化祭っぽいことには参加できる」
 
「ってもなあ、似てるだけの違うものじゃん。
 外部の客とかいっぱいで友達とはぐれて柄の悪いやつらに絡まれたとき、
 助けてくれた相手と恋に落ちる……そういうもんじゃないの?」
「柄の悪いやつらに絡まれないための処置だ」
 
 何それって思ったけど新興宗教副会長心配団体か。
 二次元ならともかくなんかおかしい。
 王道じゃないって言いながら二次元的でおかしいっていうのは俺も矛盾してるけど。
 
「そういや副会長心配団が生徒会長を批難しだしてたけどアレってどうなるんだ?」
「浅川会長はあの人が学校を辞めるって言わない限り三年でも会長を務めて円満に次に引き渡すよ」
「なんでそう言えんの?」
「副会長がそう望むだろうから」
「だからさぁ、なんで副会長にそんな権限あるわけ?」
「ここの創立者や今の理事長の名前を知らねえのか、お前」
 
 目を見開いて驚いている同室者。
 そんなに誰でも知ってんの?
 銅像とかあった??
 
「もしかして、朝霧……とか?」
 
 この流れからするとそうだよな。
 副会長にそんないろいろと肩書きがあるなんて。
 チート?
 チートなのかぁ!?
 
「バカか? 釣鐘だよ」
 
 言われて俺はポカーンと口を開け放ってしまった。
 そういえば聞いたことがあると俺は納得した。
 パーフェクトな最強と名高い先輩。
 剣道部にいる三年生が次の理事長になるらしい、と。
 現在は親戚筋の人が代理でやっているだけで釣鐘先輩が候補ではなく正式な後継者。
 だから、今の学生たちは幸せだと口にする。
 偉大なる人と一緒に学ぶことが出来た幸運に感謝をしている。
 釣鐘先輩の家というよりも釣鐘先輩自体が稼いだお金が奨学金に充てられている。
 特待生が問題なく学業に専念できているのは釣鐘晴太先輩のおかげ。
 
「俺も釣鐘先輩に恩があるってことか!?」
 
 学費免除の申請を受けている。
 たしかに釣鐘先輩と面接前に話しかけられたことがある。
 緊張がほぐれてイケメンってすごいと思った。
 いや、ちゃんと申請を受けて学校に通ってるんだから恩とか関係ないか。
 でも会ったときに「最近どう」って聞いてくれて一年の時にすごい助かったんだよな。
 外部生はそれなりに人数いるけどやっぱ幼なじみとか何年も一緒にいる奴とかの中にいると疎外感を覚える。
 そんな時になんでもない世間話を振ってくれる先輩はマジイケメンだった。
 顔以上に性格イケメンに男だと分かった上でときめいちまった。
 その人が理事長様。いや、理事長でもいいけど途端に二次元の存在になってドン引きしたけど!
 
「ハイスペックすぎるだろ」
「でも、あの人は考え方とか精神面では普通なんだよね。
 親族経営で直系の血以外は理事長になれないんだ」
 
 お前は釣鐘先輩の何を知ってるんだ。
 もしかして、付き合ってんのか。
 付き合ってたら子供的に困るの。
 どうなの。
 BL的にそこは重要だ。
 
「理事長っていっても今は代行をやっている秘書の人の手腕だから釣鐘先輩は関係ないかもしれないな」
「転入生って理事長の血縁だかなんかだったよな」
「そうだよ、だから名字が――」
 
 話しているとベストタイミングで生徒会長に転入生が近寄っていった。
 アイツの名前。
 
「朝霧だよ」
 
 どういうことだよ。
 

prev / next


[ 拍手] [副会長top ]

×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -