会長とわんわんの食卓 中華編
※高校生わんわん
今日の夕飯は中華。
昨日に圭人がテレビで中華特集を見てそわそわしていたので翌日である今日の夕飯は早速中華にした。
小籠包をはふはふしながら食べる圭人は死ぬほどかわいい。
心臓が高鳴り過ぎてヤバい。
舌を火傷しないように俺が冷ましたものを無言のまま食べ続ける圭人。
かわいい。ヤバい。抱きしめていたい。
食べている圭人の邪魔をするわけにいかないから自分の衝動をグッと抑え込む。
潤んだ瞳で催促されて俺は圭人の口にエビシュウマイを持っていくと圭人は勢いよく食いついていく。かわいい。
以前スープの中にエビ餃子を入れたらエビ餃子ばかり口にしていた。
見た目も金魚みたいでかわいいと喜んでくれたので大成功だった。
満足そう顔で食べている圭人に満たされていたのだがデザートとも言えるものを口にした瞬間ふわふわとした幸せな空間は終わった。楽しそうに緩んだ顔をしていた圭人が無表情になった。その目には何も映さないと言いたげな虚無の瞳。
「圭人?」
何が悪かったんだろう。圭人が楽しみにしていたもののはずだ。ちゃんと冷凍とは言っても蒸し直したものだからTVで見たものと同じクオリティだ。作りたての商品は基本的にない。店頭で蒸しているものだってその日に作ったものじゃない。工場から送られている冷凍ものだ。
「桃まんの中身は桃じゃない……」
親しい人に裏切られた絶望の中にいるような圭人。
口にしている桃まんを吐き出すことなく黙々と食べながらその姿には哀愁が漂っている。
「あんまんと何処が違うというのか……」
血を吐くような悲しみのこもったつぶやき。
それに俺は「見た目が違う」としか答えられなかった。
長寿祈願とか子宝とかそんな意味合いが桃にあったような気がする。桃は仙人の食べ物とかそういった逸話。
あんまんと見た目が違うだけではあるが尻のようなものを圭人が食べている姿は大変かわいらしい。
そういう面ではあんまんよりも桃まんがいい気がするけれど圭人をガッカリさせてしまったのは失敗だ。
「白餡に桃の果肉が入ってるんだと思ってた」
泣き出しそうな圭人に俺は冷凍庫から今日は出さずにおこうかと思っていた秘密兵器を持ってきた。
桃のシャーベットだ。桃自身を器にしていて熟れた桃をふんだんに使った一品。
桃まんを食べ終えて遠い目をしている圭人に見せる。
「チープ系な味です?」
なぜそう思ったのか知らないが胡散臭そうに桃のシャーベットを口にする圭人。
一口食べると身体を震わせた。知覚過敏だったのだろうか。
食べさせるのをやめさせるか悩んでいたらキラキラした瞳で俺を見てくる。かわいすぎる。
この感動を一緒に味わってほしいという気持ちなのかシャーベットを俺にも食べさせてくれた。
桃を凍らせただけの味だが桃自体が悪くないのでなかなか美味しい。
香りは桃の甘ったるさがあるものの果物だけで生クリームなど入っていないからアイスクリームと違って口の中がサッパリする。
「コンビニアイスとのクオリティ差は当然とはいえ……あぁ、食堂の限定パフェにそっと使われていた白桃シャーベットと同じ味!!」
「その通りだ」
「単品があるなんて……」
感動して噛みしめている圭人の姿を俺は堪能した。
死ぬほどかわいい。
冷たいものを食べるとお腹が冷えてしまうという圭人のためにシャーベットを食べている間中ずっとお腹をさすっていた。幸せだ。
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