4 俺のこと好きか?
俺がデリヘルの料金プランにあるサービスを使いだしてからユメは俺に堂々と甘えてくるようになった。今まで俺にされるばかりで何もできなかったことが気がかりだったらしい。ユメは驚くほど素直で飲み込みが早い。俺がしたいことは何でもするし俺を一目見るだけで嬉しそうな顔をする。
スーツで外を歩いてる時に仕事なのかユメが車で移動している所を見た。目が合ったので手を振ると嬉しそうに大きく手を振り返してくれた。顔を真っ赤にして目をキラキラと輝かせるユメは俺のことを好きだろう。
毎日ユメを呼び出すようになって俺はそろそろ次の段階に進むかと冷静に考えていた。
ユメの尻を枕にしながら雑誌を読む時間は俺の日常だった。すでに失えるものじゃない。
時間が終わって帰ろうとするユメを見下ろす。この頃はいつも玄関先でキスをする。
ユメは今日もそれを待つように俺を見つめて薄っすらと頬を赤らめる。
「俺とずっと一緒にいたいか?」
考えることもなく即座に頷くユメに俺は笑いかける。
「俺のこと好きか?」
首を縦に振って当たり前だと訴えるユメはかわいい。
やわらかな指先を撫でる。
滑らかな肌に貼られている血の滲んだ絆創膏。
「じゃあ、怪我するな」
それはユメからすると無理難題なのかもしれない。会うたびに生傷が増える。
いじめっ子のサンドバッグをしているからだ。
「俺のことを好きで俺のモノになるなら傷つけられるなんておかしいだろ」
「で、でも、あの、あっ」
何を言いたいのか自分でも分からなくなったのかユメは泣きそうな顔で「あの、あの」と繰り返す。
涙ぐむユメの鼻にキスをする。
ユメはわかっていないだろうけれど、イジメっ子に対して微妙に依存している所がある。
殴られて痛めつけられて苦しいのにそのおかげで居場所を与えられている気になっている。
何も考えないで殴られていればデリヘルから追い出されることはない。借金は減らないけれど死ぬことはない。ひとりぼっちにはならない。暴力だとしても与えてくれる人がいる。そう、歪んだ依存をしている。
俺の尻枕であるユメの尻が使えなかったことがある。
なかなかユメがイジメっ子のところに来なかったからお仕置きと称して尻を叩かれたらしい。見せてもらったら白い肌に真っ赤な手形がついていた。普通に座ってもじんじんと熱くて痛いという。ユメの肌はすぐに白くなる。首に手形がついていたこともある。だからイジメっ子の良い標的なんだろう。自分の跡がよく見える。
ユメの傷は全部イジメっ子の所有痕。ユメは自分のモノだとイジメっ子は主張している。
それを放置して俺に会いにくるユメは仕事とはいえおかしいだろう。
デリヘルなので本番のセックスはないけれどオプションでオモチャの使用ができる。
尻が痛いというユメに俺は胸と性器と会陰のあたりにピンクローターを当てて悶えさせた。
少しずつユメの未使用のアナルを拡張しているけれど基本的にはだらだら喋っている時間が長い。
まだ目標までは程遠い。
「なるべく、指名されても断ってもらうように」
「……まあ、ユメの意思じゃないなら許してやるよ」
店側と繋がりのある客をユメが完全に避けられるわけがない。
俺が折れるとユメはホッとしたように顔を緩ませる。
「じゃあ、また明日な」
毎日で大丈夫なのかと言いたそうな微妙な間の後に「ありがとうございます」と微笑むユメ。
去り難いと言いたげに玄関を出た後もチラチラと振り返るユメに笑う。
あんなに懐かれたら俺が飼うしかないだろう。
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