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  1 ゲイ専門ってデブ専なの?


 それは酔っぱらった末の冗談。ギャグでしかない行動の結果。
 自分でも思い返して馬鹿だと後悔してるけどその時はいい考えだと思った。
 
 ゲイ専門のデリヘル。
 
 広告を郵便受けで見た時は世界は広いと感心した。
 マニアックやコアな方が他の店と差別化が図れるのか需要があるから広告を出しているのか。俺の知らない世界だ。冷やかしお断りと書かれていてもネタにしようと思って電話するやつが多いだろう。なら俺もその大勢の中の一人になってやろうと思ったのはきっと酔っていたからだ。店には迷惑かもしれないが物は試しと最初は誰だって思うだろ。
 
 男なんか興味ないけど広告の美少年になら勃つかもしれない。
 そう思って電話して三十分後、インターホンが鳴った。ピザの宅配より少し遅い。安いボロアパートは顔を見るようなカメラはついていないので「はい、はーい」と声を上げて玄関に向かう。足取りはふわふわしていた。酔いが回っている。
 
 高揚していた気分は扉を開けて固まった。

 扉の向こうに美少年どころかずんぐりとした体形の小男。
 俺よりも年齢は上かもしれないし下かもしれない。
 
 全体的に横幅があるし身体の厚みもすごい。顔はたるんでいて元々どんな骨格をしているのか分からない。
 身体が大きいせいで顔が小さく見える。
 髪型はそれほど変じゃない。普通。カツラっぽくもない。
 
 固まった俺に男は俺が電話したデリヘルの店の名前とユメと名乗って「夢久瑠」と書かれた名刺を渡してきた。読みは何なのか聞きたいところだけれどそれよりもアパートの玄関先で立たれているのもマズいので部屋の中に上げた。
 
「ゲイ専門ってデブ専なの?」
 
 口から出てきた言葉はそれだった。無神経かもしれない。だがユメは表情を変えることなく小さい声で「さぁ」と言った。ムカッとして俺は「俺、別にゲイじゃねーの」と自分の腹の内を吐き出す。ブラックリストに入れられるかもしれないが次に電話することなんかないから別にどうでもいい。
 
「この広告の子みたいなのが来ると思ったんだけど」
「チェンジ料かかりますけど別の子を呼びましょうか?」
 
 淡々と口にするユメに苛立って「そういうことじゃなくって」と怒鳴るように声を出すとかわいそうなぐらいにビクついて顔をうつむかせた。ふくふくとした柔らかな指先がギュッと握りしめられてクリームパンのようになっている。元々興味本位で電話してゲイじゃないからセックスできるかもわからなかった。要は俺の好奇心が満たされればいい。
 
「お前に問題あるわけじゃないけどエロいことしないから、ただ……話さねえ? 金はちゃんと払うから」
 
 俺の提案にユメは顔を上げて目を瞬かせる。案外、くりくりとして大きめの瞳だ。痩せるとかわいい顔なのかもしれない。

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