蛇足なオマケ 肉便器使用状況
エロというよりもはやギャグというのをご理解の上で「蛇足なオマケ」をお読みください。
本編で満足している方は「蛇足」なので読まなくてもOKです?
----------------------------------
転入生と木佐木会長が浮気をしたというのは周囲の勘違いだったらしい。
会長には弁解された。思い出すと寮の部屋に来なくてもいいという話題になった時に聞いた気がする。その時にすでに浮気の噂は広がっていたから僕をスクラップ扱いする気なんだと納得してしまった。親衛隊長に言われるまでもなく僕は勝手に思い込んでいたけれどどうも勘違いだったようだ。
人目を避けて二人で密会を数多くしていたのはなんと僕の中学時代の情報を得るため転入生、高梨君と話していたのだとか。
僕のことは僕に聞けばいいと思うのだけれど会長には会長の考えがあるのだろう。それなら僕も僕の考えで動かないといけない。
肉便器としてどんな立ち回りを期待されているのか分からないので会長のパソコンを無断で漁った。中学の時に不良の先輩たちがパソコンやケータイの履歴、隠しフォルダを見ればその人間の性癖が分かると言っていた。ちなみに彼らは僕の写真や動画をコレクションしているらしい。今はまだまだでも最終的に僕は至高の肉便器になるわけだからお宝映像だと思う。
男の情欲を煽ってこそ肉便器。他人の欲望をコントロールする技術を身に着けずに肉便器は名乗れない。
そんな持論でもって僕は会長の秘密を覗き込んだ。パスワードは僕の名前だったので苦労しない。これはむしろ中身を見ていいと言われているのではないだろうか。
動画ファイルは日付だけだったのでそのままクリックで再生。
素人風な手ぶれに若干気持ち悪くなりながらヒソヒソと聞こえる声に聞き覚えがあった。多少先輩たちにAVを見せられたことがあるので心当たりはそこかと思ったらなんと動画は僕のモノだった。
もう少し気を利かせて肉便器爆誕みたいな字幕を入れて欲しかった。地味だ。
見ていて涙が出てきて再生を止める。
なんて情けないんだろう。
素人AVと言われるものよりも酷い出来だ。
これでは先輩たちに棒演技や下手くそかわいいとか言われるのも頷ける。
当時の僕にはその自覚がなく気づけなかったけれど見直すと本当に酷かった。
勃つものも勃たないと言われるのも頷けるありさまだ。
右も左もわからない頃だと言い訳したところで僕の酷さが改善されるわけでもない。
とりあえずここで喘いでおけばいいみたいな棒演技な単調な喘ぎ。
心を込めて気持ちよさそうに声を上げないとダメだと過去の自分にダメ出しをしたい。
こう考えると今の僕はしっかりとレベルアップしている。それは間違いない。
「……どうかしたのか?」
いつの間にか会長が帰ってきていた。
自分の過去と向き合っていて全然気づかなかった。肉便器失格だ。
玄関先で全裸で帰宅してすぐにハメられるようにアナニーしているべきなのに、と思ってから淫乱マゾ奴隷仕様の肉便器のことを押しやる。中学の先輩たちと会長は違う。
木佐木会長はビッチ嫌いだ。手に馴染む中古よりも誰も使っていない新品を好む。だから、男慣れしている姿は興奮要素ではなく萎え要素になる。あなたしか知りません路線がお望みな会長に合わせて僕も清純路線を歩まなければならない。
清純な肉便器なんて難易度の高い気がするけれど、だからこそやりがいがある。
エッチなところはチラ見せいつもはそんなこと知りませんという顔をしないといけない。手を握ったりキスしたり抱きしめ合ったりして会長が求めてきたら焦らしつつOKを出す。
ちなみに僕は会長が僕とエッチしたくなるまでにかかる時間を縮めることを目標にしている。アスリートがタイムを縮めるように僕もまた日々の努力を時間で見ている。毎日のコンディションを考えてアタックチャンスは逃さないしやり過ぎない。スパンが開いていた方が気持ちがいいとも聞く。筋肉は鍛えればいいという問題じゃない。休ませるのも大切だ。それと同じことがエッチにも言えるはず。
「これ、……見たのか……」
僕が見ていた動画を再生して驚く会長にここは肉便器としての腕の見せどころではないのかと自分の心の声が聞こえる。
木佐木会長が転入生が来てどこかおかしかったのが浮気じゃないというのなら高梨君にこの動画をもらったり中学でのことを聞いたのだろう。そこで以前のように「この中古のビッチ気持ち悪い」と思ったのかもしれない。
気づけば僕は泣いていた。
会長と別れることとか会長に嫌われることとかそういうことが問題じゃない。
僕の肉便器としてのプライドの話だ。
この動画みたいにフェラが下手で歯を立てるなとか注意されることは今はない。
この動画みたいに精液を飲み込むのが面倒で咳き込んで吐き出して休んで怠けようとかしない。
以前は人数がいたし体力が追いつかなかったので適度にサボるようにしていた。動画にはそれがピックアップするように映っている。恥だ。恥以外のなにものでもない。肉便器として正直適当なことをしているのが分かる。悔しい。これを見た会長はこれが僕の全力だと思ったはずだ。そんなことなにのに。
この時の僕は公衆便所扱いが不服だったのだ。
百円で使えるオナホールと同列にされるのは我慢が出来ないし手入れされずに使い捨てられるのはイヤだった。
きちんと慈しまれ大切にされ磨き上げられてこそ望んだ場所に到達できる。
木佐木会長は使いこまれた熟れた肉便器よりも慎ましやかな淑女型肉便器を求めている。
脱肛して腸が下りてきて花咲くアナルローズよりも固く閉じた蕾な菊がいいのだ。
いいや、男の本音を考えれば見た目は清純でその実、淫乱がいいのかもしれない。
最初はとりあえず拒んでおくみたいな様式美。
「……会長はこれを見て、僕のことどう思いましたか?」
使えない肉便器だと思ったのかもしれない。僕に触れるのが恐る恐るだった気がする。抱きしめると汚れると思っているのかもしれない。病気は持っていないしとりあえず行為の前後に洗浄はしているけれど気になるタイプは気になるかもしれない。
「嫌いになりまし」
「そんなわけないだろっ」
被せ気味に即答されたのでまだ大丈夫。
でも、それもいつまでなのか分からない。
だけど僕の安心を求めて「さぁ、使ってください」みたいな態度は会長のやる気を低下させる。
ここが腕の見せ所。
prev /
next