02 後ろの快感なんて知りすぎてるっての
生徒会役員に口説かれ続けるものの俺はトモダチは欲しいがホモダチはいらない。
その気持ちは曲げるつもりはなかった。
「琉希《るき》、俺様の何が問題だ」
生徒会長、倶頻仏《くひんぶつ》泰吏《たいり》は俺が迷惑してても言い寄ってくる。
そのせいで副会長の仕事が増えていると噂があるので注意したら、仕事をしたら付き合うのかって話に持って行く。
それとこれとは話が別すぎる。
何でもかんでも恋愛に結び付けるんじゃない。
会長は運動部員ほどじゃないにしてもしっかりとした筋肉の付いた身体つきをしていて体格が貧弱な男子から大人気らしい。
確かに格好よくて男前で背の低い生徒を片手で持ち上げられそうな男らしさがあるけれど、それがどうした。
付き合うとか恋愛関係において男の色気とか男の肉体美みたいなものがプラスになるわけがない。
何度も説明しているのに理解しないのはすでに嫌がらせだ。
泰吏には悪いが自分がなりたい理想の男とか憧れの体格ではあっても恋する相手にはならない。
きっぱりハッキリしっかりと振っているにもかかわらず泰吏《たいり》はしつこい。
「お前、男じゃん」
「男であることの何が悪い。琉希も男だろ」
「そういうことじゃねえっての。お前らが同性愛者だってのは好きにすればいいよ? でも、俺を巻き込むなよ」
「彼女と別れたんだからオレらにワンチャンあるでしょ」
「ねーし」
会計である氷熊留《ひぐまる》可也《かなり》は身長は会長である泰吏と同じぐらいだけど身体の厚みは薄い。
髪の毛も耳の下で二つ結びなんていう女子っぽい感じ。
けど、当然骨格からして男。かわいい髪留めで天然パーマでうねった黒髪をまとめているけれど男。
茶目っ気のある言動は話していて楽しいし友達としてなら軽口が叩けて一緒にゲームも出来て楽しい奴だ。友達なら。
「後ろって気持ちいーんだってぇ。オレ、タチしかしたことないけどミンナいっぱい喘ぐから絶対気持ちいーって」
うるせぇと綺麗な顔に顔面パンチをお見舞いしたい。
氷熊留可也、俺はナリって呼んでるコイツはセフレ持ちまくりのヤリチン男だったらしい。
らしいっていうのは同室者である不良から聞いたことで本人からは何も言われてないから俺からも聞かない。
デリケートな話題だからな。
けど、折に触れてこういった発言をするからセフレはともかく男同士のことに慣れているんだろう。
「絶対に痛くしないって! 気持ちよくさせる自信あるよん」
語尾にハートマークがつきそうな声で言いながら俺に抱きつく会計を書記である曽谷巳《そやみ》ろろが引きはがす。
ろろは良い奴だが言葉が少ない。
帰国子女で日本語が不自由とかイジメられっ子の過去があって言葉が口から出てこない、わけじゃない。
喉が乾きやすい体質らしくて話をするには飲み物が必須らしい。飲み物があっても出来るだけ声帯を震わせたくないとアホみたいなことを言っていた。
わりと表情が豊かなので面白いと思って会うたびにのど飴を渡していたら懐かれた。
俺よりも頭一つ分大きなろろは眼鏡をかけているので角度によっては悪巧みをしているような顔に見える。
純粋な奴は何処にも居ないんじゃないのかと溜め息を吐くとろろに頭を撫でられた。
「自分はオレを引きはがしといて何、ルキの頭撫でてんのさ〜」
ぷんぷんと言いながら唇を尖らせるナリ。
ちなみにここは教室でこいつら三人が俺に対して何かしらリアクションをとるたびに悲鳴が上がる。
うるさい。
以前と違って目に見えるイジメはなくなったものの蓄積されていく何かを感じる。
いつか爆発するんじゃないのかと俺は気が気じゃない。
「おい、俺様を無視するな」
一人称が俺様って時点で残念臭がすごい泰吏は俺が付き合うと言うまで教室から出て行かないつもりだ。
遠まわしに委員長から生徒会役員を追い払うようにお願いされている俺は心を鬼にして「もう休み時間終わるだろ」と言い放つ。素っ気なくしているのに食いついてくる泰吏は俺様どころかM奴隷じゃないのか。
「後ろで気持ちよくなりたいなら、そこの会計なんかより俺様にしておけ」
俺の尻を触ろうとしてくる泰吏《たいり》に「マジ引くわ」と言い捨てるとさすがに傷ついた顔で肩を落とした。
俺様のくせに案外やわなハートな泰吏がキライになれない。
もちろん恋愛的に好きじゃないし、今後、俺の尻を差し出すこともない。
俺の青春が台無しになっているのは母親が再婚したことで新しい父親の母校に転校しないといけなくなったことでも、その学園で人気者たちに好かれていらない嫉妬を買いまくったことでもない。
始まりはやっぱりミオだ。
俺の元彼女。
泰吏に教えられた通りミオは俺が転校してから同じ学校の奴と付き合いだした。
俺と似たタイプの男らしいというよりもかわいい系の外見。
歌って踊れる系のアイドル男子な顔。
自分で言うことじゃないが俺はブサイクじゃない。
それなりに見れる見た目だっていう自覚がある。
身長は背の高い女子や高さのある靴を履かれたら女子に並ばれたりするぐらいではあってもチビなんて言われたことはない。
まあ、俺より小さい親衛隊に所属している奴らにチビチビ言われて落ち込んだりしたけどな。
生徒会役員たちも同室者の不良も身長が高い。
男は高身長じゃないと許されないのか。
そんなに身長が高いことが誇らしいのか?
見下ろしてんじゃねえよと卑屈になったのは三日間ぐらいだ。
元彼女であるミオは俺よりも身長の低い男を新しい彼氏にしていた。
ってか、俺と連絡取り合いながら付き合い出したらしいから浮気だ。
俺は寮に入ったせいですぐには会えないイコールさよならだけどキープはしとくっていう精神。
人間不信になりかける。
ただでさえ友人だと思ってた奴らから告白されて混乱しているのにこの扱い。
ありえないだろ。
「前立腺ってマジいいんだって」
なおも言う会計であるナリは書記であるろろにデコピンをされた。
前立腺?
後ろの快感?
そんなの知りすぎるほど知っているっての。
尻のことは知りまくりだ。
始まりはやっぱりミオ。
俺は中学時代、彼女に犯されていた。
男なんかごめんだし、今後一切、世話になる予定はないけどアナルは開発され済みだ。
そして、ミオと別れたことで俺は自分の性欲を持て余してる。
でも、友達とエッチをするなんて考えられない。男を受け入れるなんてありえない。
アナル拡張用の道具とかは全部ミオのものだったから俺の手元にはない。
手元にあっても俺の部屋は人の出入りが激しいのでオナニーなんかできやしないからまた困る。
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