【人の話を聞かない恋人との復縁 ノーマルエンド:ヤンデレ】
前提1・2を読んだあとにどうぞ。
俺の恋人は情緒不安定だ。
それは俺が愛されいる自信を持てなかったせいで追いつめてしまったからであいつのせいじゃない。
ちゃんと俺がかげろうを見ていないといけないのにその手を放してしまった。
俺への愛情証明として飛び降りた松葉かげろう。
退院して俺のことを他人のように接してくるかげろう。
それも仕方がない。俺があいつを信じなかったんだ。
誠意を伝え続けたらかげろうは心を開いてくれた。
またやり直せると思った。
けれど、翌週からかげろうはまた余所余所しくなる。
俺が問い詰めても視線が合わない。
ふざけてやがる。
でも、その理由が分かった。
俺の親衛隊にイジメられていたらしい。
かげろうと俺が付き合っていた時は何もしないように言い含めていたから平気だが俺達が別れたと思い込んだ親衛隊のやつらはかげろうが俺に付きまとっていると思ったらしい。
誤解は解いたから平気だとかげろうに伝えてもかげろうは俺を避ける。
親衛隊の人間がかげろうが生徒会会計を誑かしたなんていう質の悪い冗談を言ってきたが俺は信じない。
俺はもう噂なんかに惑わされてかげろうの気持ちを疑ったりしない。
かげろうは俺を好きに決まっている。
「死んでもいいぐらいに俺が好きなんだろ」
首を横に振るかげろうは素直じゃない。
俺の親衛隊や会計の親衛隊から制裁を受けて正常な判断が出来なくなっている。
「かげろう、俺のかげろう」
松葉かげろうは取り立てて秀でた見た目ではない。
そばにいて苦痛を覚える不細工でもない。
高校に入って男に転ぶ日が来るとは思わなかったが松葉かげろうなら仕方ない。
かげろうを手に入れるためなら世間の風当たりが厳しくなろうがどうでもよかった。
卒業したら別れるカップルばかりなんて聞いても俺には関係ない。
かげろうは俺を愛していて俺もかげろうを愛している。
だから不安なんてない。俺はそう思っていた。
けれど、降り積もる不満。
編入生がやってきて苛立ちは加速した。
かげろうが俺を軽視する。
俺が何度も愛を囁いて未来を誓い合おうとしても曖昧な微笑みで濁される。
結局かげろうも俺との付き合いは学園内だけだと思ってる。
そんなの許せない。納得できない。
心が削られていった俺はかげろうを思うことが苦痛になっていた。
仲良くなった編入生に相談すれば潮時なんだと言われた。
熱が冷めた後の恋はそんなものだと励まされて恋より友情だと編入生の手を取った。
それでも俺はかげろうが俺を追いかけてくれると期待していた。
事実かげろうは俺を思ってくれていた。
やっぱりかげろうはどう言いつくろっても俺のものだ。
「素直になれ。お前が俺とずっと一緒に居たいって思ってくれてるのは分かってるから意地張るなよ」
かげろうの首を絞めながら俺は微笑みかける。
嫌がらないかげろうは俺のことを愛している。
「お前の愛を俺は忘れない。どんな言動をとってもお前は俺を愛してる。忘れない、疑わない」
恥ずかしがり屋で照れ屋で臆病で不安定な松葉かげろう。
なら俺は不安にならずに貫き通せばいい。
「信じてる。お前には俺だけだって」
生徒会会計なんて何もないに決まっているし、生徒会長とだって何もない。
俺に隠れて会っていたなんて嘘だ。
俺はかげろうを信じてる。かげろうの愛を信じてる。
手を首から離すとかげろうが大きく咳き込む。
かわいそうになって背中を撫でてあげると泣き出した。
情緒不安定だ。
俺と付き合っていた頃のかげろうは儚さがありつつ何かを諦めているような姿ばかり。
浮世離れしているかげろうが俺を好きだというある種、俗物な感情を持っていてくれたことが男同士とかどうでもいいぐらいに欲しくなった。かげろうがどこかへ行ってしまわないように繋ぎとめるつもりで恋人になった。
「……ハ、……っ、あ、あぁ、ぁ」
いまのかげろうは幼くて子供のようだ。
感情のままに泣き叫んで抱きしめれば俺にしがみついてくる。
どうしたのかと聞けばかげろうはいつものように「死にたくない」と言った。
「愛してたい、俺だって……愛してたい」
死ねばそれで永遠だと口にしたかげろう。
けれど、死んでしまえば俺達はもう二度と会えない。
泣きながら「一緒に居たい」と言うかげろうが心底かわいい。
週末に情緒不安定になることが多く月曜日には反動なのか俺に冷たくなったりする。
この頃はその対処法もわかってきた。
かげろうは寂しがり屋なんだ。
「日曜日は丸一日一緒に居よう。月曜の朝まで離さない」
学校があるからか月曜日の朝にかげろうは俺を遠ざけて一人で登校したりする。
遅刻するのが嫌だとしても恋人にその対応はないと俺がいくら言っても聞かない。
なら強制的にかげろうを動けなくするのがいい。
抱きつぶして動けなくなったかげろうが俺に支えられながら登校するのがこの頃の月曜日。
距離を取ろうと、俺を拒もうとするようなかげろうを無視して世話を焼き続ければその内ちゃんとかげろうは甘えてくる。
きっと俺のことを試している。
それとも素直に甘えられないから意地を張るんだろうか。
誰にも渡さないよう、離さないように密着していると次第にかげろうが自分からくっついてくる。
その瞬間が毎週たまらない。
まるで初めて告白するかのように俺に告白するかげろうに満足感とともに惚れ直してしまう。
これはきっと一度別れを経験した俺達に必要な儀式なんだ。
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