触手と奴隷の楽しい実験 【人体変化編】
アインの意識を取り戻した時、サイトが口に食料を運んでくれていた。無意識に開いていた口をサイトがゆっくりとこじ開ける。それは排泄に使う穴を触手で広げられた動きに似ている。優しいけれど絶対的な触手の動き。口を閉じていられない。
与えられるものをアインは何とか飲み込みながらサイトを見る。
自分自身が光るようなキラキラと輝く触手と本体である巨大な円柱。
以前よりも艶が増して感じられるのは粘液のせいだろうか。
ペースト状の栄養食品は奴隷として普通のものだがベルトヤカは口にしたことがないらしい。
アインは食べたいものを聞かれて知識がなく応えられなかったので食べていた物のことを話した。
ベルトヤカからするとアインの食事は食事ではないらしいが袋に入ったペースト状のものがアインにとっての食事だった。他は知らない。
サイトの粘液は飲みにくいがアインの仕草で読み取ってくれたのか水も混ぜてくれるので飲み下すのは難しくない。
この食事をアインは美味しいと感じたことはない。そもそも生きていてこれまでて美味しいと思えたのはサイトの粘液だけだ。
ネバネバでヌルヌルしていて知らないものは怖かったので最初は口にするつもりなんかなかった。いつの間にかキスしてすするのが挨拶の一環に変わり、サイトが喜ぶからヌルヌルをいっぱい出させてあげることがアインの仕事に変わった。
自分のせいで怪我をしたこともあってアインは献身的にサイトに尽くしていた。サイトがしたいことを感じ取れるようにアンテナを張ってサイトの望みを叶えていた。それはサイトも同じだ。自分のことを思ってくれるアインの望みを叶えてやりたいと思っているからこそ意識が半分ほど飛んでいるアインに食事を与える。二人あるいは一匹と一人はお互いを大切にしていた。
その関係は変わらないと思っていたのに大きくなったサイトは触手を増やしてアインを翻弄する。
刺激が強すぎて気絶することも多い。サイトにやめるように言えばやめてくれるのかもしれないがアインはそうはしなかった。アインの口はもっと激しくしてほしいと頼んでいた。理性は肉体の限界を訴えるのに感覚は快楽を欲していた。
触手で攻められ続けて意識を失い、起きると食料をもらいまた粘液を体内に排出される。
お腹が張って苦しくても気絶して目覚めると大きく膨れた腹部はぺったんこ。夢でも見ていたようにアインの身体はいつも通りだ。
強い快楽と虚脱感にアインは身動きが取れない。触手で掴まれて宙に浮いていることもあってアインの身体は疲弊していた。これほど全身の筋肉を使ったことなど奴隷とはいえアインにはない。サイトに何もしてあげられない。アインは何も返せない。指一本も動かす気力がない。一方的にサイトから与えられる快楽に身体を任せている。それは傍から見たら捕食されていると言われても不思議ではない光景だった。
排泄に使う穴はサイトが入ってくるため器官にいつのまにか変わりサイトを体内に収めていないと落ち着かないぐらいだ。気持ちよくなって欲しいという考えがいつの間にか塗り替えられて自分を気持ちよくしてもらいたいと願っている。アインは奴隷だ。基本的に求めていい側の人間ではない。人ではない存在だとしてもサイトの方が立場が上だといえるのに理性を捨てて「もっと」とねだる。
触手と淫靡に交わることをベルトヤカに望まれたわけじゃない。これは誰に見られているわけでもないのに快楽に浸る。
「はぁ、あン……それぇ、いぼいぼ、きもちいぃ」
アインの要望を受けて触手の種類がドンドン増えていった。身体が疲れたと言えばサイトの本体の円柱を傾けてアインを横たわらせる。その際にサイトはアインの背中にツボを押すようなイボを作った。疲労回復を狙ったのか無意識なのかアインには分からない。ただその突起で身体中を刺激されるのは気持ちがいいと思った。背中だけではなく別の場所にもイボイボで擦って欲しい。その気持ちをサイトに伝えると触手を変化させて答えてくれた。
頭がどうにかなってしまうような快楽が立て続けにアインに襲い掛かる。意思を持つ水に全身をいじりまわされるような触手の増量と肥大と責め立て。パターン化することなくアインの反応を見て変わっていく動き。
慣れて少し余裕が出たと思ったら急に速度がゆるやかになって焦らされたり早急になって突き上げてくる。自分のモノなのに下半身はすでにサイトと一体化したような感覚にアインは陥っていた。
捕食される恐怖はない。自分こそがサイトを食べてしまっている気がしてアインは胸が苦しくなった。
足の指の間を柔らかく程よい弾力のあるイボでこすられる。アインの反応がイマイチだとイボの間から更に柔らかな繊毛が出てきて足を包み込んだ。身体中がぞわっとする感覚にアインは失禁しかけた。サイトが尿道を触手で満たしているのでアインの排泄物が外に出ることはないけれど酔いが醒めたように正気に戻る。
サイトに色々と指図して好き放題。こんなこと許されるわけがない。自分の快楽のためにサイトを利用している。アインの排泄物が欲しかっただけのサイトに気持ちがいいからといって自分の身体をいじるようにアインが仕向けたのだ。意識が飛び飛びとはいえ自分の口から出た欲望のままの言葉は覚えている。
奴隷であるアインに羞恥心というものはなかったが自分よりも無垢で実直なサイトを利用したような状態は恥ずかしかった。
「ア、あぁ、……どう、して」
こんな状態はいけないと粘液で全身を汚しながらアインは虚ろな瞳で首を左右に振る。このままではダメだと時折戻る理性。それを打ち崩すように責め立てるサイトの触手。気持ちよくて何も考えられないと感じるのと同じくして満たされるという充足感を得る。
サイトに触れられていない場所などない。身体の表面はくまなく触手が探り、身体の中も柔らかく細長い触手が入っていく。口から入ったこともあるサイト。全部くまなくアインはサイトに染められていた。
栄養を得るためだけならここまでする必要はない。大きくなった体の分、お腹が空いているにしてもサイトが欲しがるならともかくアインがサイトを求めてねだるのは奴隷の領域から逸脱している。ハメを外し過ぎている。
下半身はサイトの触手が出入りしては中に何かを吐き出していく。アインの知識はいろいろと足りない。否、知識しかないせいで現実に自分に起こっているものと結びついていない。
男が射精するという知識はあってもサイトが触手から出す粘液が精液だとは考えることはない。
自分の身体の異常にもまた気がついてはいなかった。
連日ずっと触手と絡み合っているアインはすでにペースト状の食料も水も口にはしていない。甘えた声で「サイトしかいらない」と粘液をすすったことをアインは覚えていない。
アインの願いをサイトが断ることはないという事実をアイン自身まだ知ることはない。
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