【前】
全寮制の男子校なんていう得体のしれない閉鎖空間にわざわざ進学することを決めたのは知り合いが先に入学していたからだ。
良い先輩とは言い難かったけれど何だかんだで世話になったし、中学で卒業まで苛められなかったのは彼のおかげだと思ってる。
商売の拠点を海外に移すと両親から聞いて俺はとっさに先輩の話を出した。
海外に行くのはどうしてもいやだった。
一人暮らしはダメでも寮ならいいだろうという目論見は大当たり。
俺だけを日本に残していけないという両親を先輩から聞いた学園のいいところをアピールして、寮のルールや充実した設備をのおかげで許してもらえた。
寮はちょっとしたビルになっていてアーケード型のゲームを各種揃えている。
理事長の趣味らしく数台しかないようなマニアックな機種もありお風呂は温泉で地下には温水プールもある。
進学校というよりは生徒の自由を尊重しているという校風で先輩がのびのび暮らしている理由が分かる。
学園に入って驚いたのは見た目が整った生徒が多いことだ。
芸能学科なんてものがあったかと確認するほどにモデルやアイドルレベルの顔の人間が多かった。
女子がいない男子校なのでむさ苦しかったり手入れなんかしていない男臭い人種ばかりかと思えばそんなことは一切ない。
予想外に周りが身ぎれいなので普通な俺が逆に浮くほどだ。
授業への出席確認はアバウトな学校だが先生の教え方は丁寧で親切。
それだけで、得した気分になる。
どこか塾講師のような教え方をする人や変人に感じる人もいたけれど学校の説明にも個性豊かな先生たちとして紹介されていたので違和感はない。
全寮制とはいえ生徒の年齢が年齢なので干渉しすぎることはなく、かといって放置せずという理想的なバランスで先生は生徒を見ていた。
一つのクラスで生徒数が控えめだからだろうと思ってこのことに疑問はなかった。
あとから知ったことだが先輩によれば一年前にちょっとした学級崩壊が起こり学園の人気が下がってしまったらしい。
そのため高校から学園に入って馴染めないかもしれない俺に対する扱いが特に優しいという。
このあたりの事情に俺は関係ない。
先生たちは俺だけに特別優しいわけではなく全体を見ていた。
その理由が生徒が減ると困るからという打算的なものだとしても私立なので責めることはできない。
残った生徒に心を砕く先生がいるのはいいことだと思う。
先生たちは最高だし、知り合った友達はみんないい人ばかりだった。
先輩が学園にいるのはろくでもない奴らばかりだから関わり合いになるなと言っていたけれどそれは大きな間違いだ。
心が貧しいぼっちの先輩は人の優しさを受け取れない。
俺はそんなふうにならない。
この学園で一番仕事が多くて大変なのは間違いなく生徒会だ。
そして、教師以上に優しいのは間違いなく生徒会役員のみんな。
入学して数日後に学園の印象を聞かれたりと気にしてくれた。
そんな交流を経ていつの間にか学園での一番の友達になった。
彼らはみんな気さくな上に親切だった。
美形が多い学園の中でも特出した美形だというのに偉ぶったところもなく思いやりにあふれていた。
これは女の子がいたら放っておかないと思ったら、すでに各人、婚約者がいるという。
クラスの人が教えてくれた。
お金持ちは俺と常識が違うらしい。
俺が高校からの人間だとクラスのみんな知っているので生徒会役員についていろいろと情報をくれた。昔から同じ学園にいるので有名人のプライベートのように何かすると噂になるらしい。
聞いた噂は話半分にうなずいてはおいた。
俺は噂というものを自分の目で確かめたり実害がない限りは気にしないようにしている。
先輩の噂なんて相当な脚色がされていて事実はあっても真実はなさそうで笑えた。
一匹狼として周囲におそれられているということになっているぼっちな先輩。
たしかにガチムチな肉体美を持っていて近寄りがたさはあるけれど一匹狼ではなく百獣の王タイプだ。
リーダーとしての資質が強い先輩に群れから追い出されたはぐれ者である一匹狼なんていう表現は似合わない。
夏休みは誘われたこともあり生徒会長の家で半月ほど過ごした。
両親が隙あらば俺を海外にある今の自宅に連れて行こうとするので新しくできた友達と遊ぶからという理由で断った。
誰が主催で何のためのパーティーかもわからないが俺は立食パーティーにも連れて行かれた。
知り合いがいないのであいさつ回りの必要もない。
俺は美味しいものが多いのでひたすら食べていた。
ああいうところは食べていると話しかけられない。
食事の手を止めさせるのは不作法だと思われているらしい。
その影響なのか夏休み明けに会った先輩に「太ったな」と直球で言われた。
会長の家に泊まっていた半月以外にも生徒会役員に誘われて車で移動して食べ歩いた。
それぞれみんなが「こんなことするのは初めて」というものだから俺もハメを外した。
楽しいときにはいっぱい食べていっぱい騒ぐそういうものだ。
食事を控えようとかいう気持ちにならなかった。
それでも太ったままでいるには先輩から言われた「太った」の言葉が気になる。
悩んだ末に俺は隣の席のサッカー部である飯島に相談した。
男なのにダイエットについて悩むなんて恥ずかしい。
口の重い俺をうざがることもなく飯島は笑わずに俺の話を聞いてくれた。
この学園の生徒はみんな優しい。
少し考えたあと、飯島は寮の地下にある温水プールを勧めてきた。
この学校の設備は俺の想像を超えて豪華だ。
水泳部ではない一般生徒でも自由に使えるプールがあるなんて驚きだ。
泳ぎは得意じゃないと話したらサッカー部なのに飯島もダイエットに付き合ってくれるようになった。
持つべきものは友達だ。
一人じゃないのはとても心強い。
用意していた海パンが変に食い込むのでこれは太ったと俺は認めた。
更衣室から出て来ずに立ち止まる俺を飯島はプールサイドに引っ張っていく。下半身の苦しさを訴える俺に良い考えがあると今度はシャワー室に連れて行かれる。
飯島はチンコのサイズがデカいから一回射精して縮ませればいいと言った。
勃起してないのに縮ませるも何もないと思うのだが尻を揉まれながら「この脂肪を消したいのか、消したくないのか」と聞かれる。わざわざプールまで来て引き返すわけにはいかない。俺が「消したい」と言ったら飯島は尻とチンコの両方を揉んできた。俺は三回ぐらい射精した。
責め方がねちっこくて海パンを脱がされて尻を叩かれたり胸を揉まれたりした。
寝転んでいるとシャワー室の床のタイルの跡がくっついてしまう。
自分の身体を理解しろとスポーツマンらしいことを言われて俺はやっと自分の太り方がヤバイことに気づいた。
タイルの跡がついて段々になった皮膚を撫でられたり引っかかれたりする。
乳首がいつの間にか肉に埋もれている事実も教えられた。
何の理由もなく友達の胸を揉むわけがない。
飯島は優しいだけだ。
射精したところで海パンがきつい事実は変わらない。
それでも飯島に身体中を揉まれて熱くなった。
全身マッサージを受けることで脂肪燃焼効果が高められるのだと飯島は言う。俺は一つ賢くなった。
これならすぐに痩せるに決まっていると大きめの海パンを買い直して温水プールへの再戦を誓う。
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