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電車の中で全裸。いや、かろうじて靴下は残してもらった。
これはもう犯罪だ。
俺は成人前から犯罪者になってしまった。
許されるわけがない。
「さっすが、上級者。常葉はかわいいなぁ」
あざけるように小海烏は俺のペニスを指で撫でる。
勃起しているのが恥ずかしい。
電車は密室じゃない。窓がある。大自然が広がっていたとしても誰かが車内の様子に気づいたら通報される。
俺は泣きたいし逃げたいがそれより何より。
「ケツでイキたいか?」
俺の内心を見透かした小海烏は興奮で頬を赤らめていた。
この異様な俺の姿に幻滅するどころか悦んでくれている。
はしたなくて浅ましくて目を覆いたくなる俺を隅々まで見ている。
恥ずかしいのにドキドキしている。身体の皮膚感覚がおかしくなっていく。
少し揺れて乗車口の扉にぶつかる。冷たい感触に声を上げる前におしりを叩かれた。
「やっぱ壁にちんぽこすりつけて一人でオナッちゃうよなぁ」
「ちが、ちがうっ、たまたま」
倒れ込んだのは足に力が入らなかったせいだ。
踏ん張ろうとしても電車の揺れにふらついてしまう。
「都内より、ゆれねえだろ」
「……っ、うぅ、わかんない、ごめん」
「そっかそっか、常葉は振動ゼロの運転手つきの車しか乗らねえんだっけ」
振動は運転する人によると思う。
ただ車移動ばかりだったのは事実だ。
電車がここまで休みなく上下や左右に揺れると思わなかった。
ずっとガタッ、ガタッと音と共に振動がくる。
「バイブ抜いてからっぽにしたらヒクついててホント、エロいわ」
俺のおしりに視線を合わせるように少し屈む小海烏。
自分の身体がどうなっているのか教えられるのは恥ずかしい。
苦しくなって「カラス、もうっ」と助けを呼ぶとコンビニで買ったペットボトルを渡された。
ビニール袋の中にあるのは一リットルぐらいの水だ。
封も切っていないペットボトルをどうすればいいのか分からない。
ペットボトルをおしりにいれるのはさすがに無理だ。
充分に拡張しているといっても一リットルのペットボトルは小海烏の腕より太いかもしれない。
「それ、中身飲んじゃえよ」
俺の想像と小海烏のやろうとしていることは違うらしい。
よかったと安心していたら「ペットボトルの中に射精していいぞ」と言われて泣きたくなった。
射精を我慢できない俺が全部悪い。だからこそすぐに電車から降りるべきだ。降りなければならない。
公共の場所で全裸で勃起してるなんて犯罪者だ。
扉が開かないので電車から降りられないとはいえ全裸な俺は痴漢として逮捕されるかもしれない。
2017/08/03
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