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おしりペンペンされても萎えるどころか勃起する俺は淫乱な変態かもしれない。
落ち込む俺を元気づけるように「おー、よしよし」と頭をなでてくれる小海烏は格好いい。
おしりで気持ちよくなりたがる俺の堕落した肉体を見捨てることなくデートの約束をしてくれた。
電車デートだ。
俺が痴漢からかわいい小海烏を守ることができるのか試験を兼ねているに違いない。
満員電車を言い訳にして人前で抱きしめても許されそうだと夢見ていた俺は知らない。
知識で知る電車は本物の電車はある意味、ファンタジーだった。
他人と距離が近すぎる。
初夏という時期も悪かったかもしれない。
一駅で意識が遠のきかけた俺は電車から降りてベンチに座り流れていく人々を見ていた。
「駅によってはベンチもねえからな」
「不親切だな」
「ホームに並ぶ人の邪魔だからか、長時間ホームにいるなよってことなのか」
「あぁ、ベンチで眠る人々に困るという理由かな」
俺の手を握ってくれる小海烏。
頼りになりすぎる恋人はプランを変更してくれた。
小海烏に連れられて乗った電車は立っている人がほぼ居なかった。
スカスカだったので座れたのだ。
「タクシーで乗換駅に来るとか笑えるな」
肩をすくめる小海烏の様子に皮肉なのはわかる。
俺は電車に向かない体質だ。
それは認めざる得ない。
だが、痴漢が現れたら絶対に小海烏を守りきってみせる。
固い決意を裏切るように電車内の人々は消えていく。
降りる人が居ても電車に乗ってくる人が居ない。
異様な状況なのは電車初心者の俺でもわかる。
小海烏は気にしたところもなく俺のアナルバイブの強弱を切り替えて遊んでいる。
座席に座っていて、車両内に俺と小海烏のふたりっきりになったとはいえ声を漏らすわけにはいかない。
口を手で押さえながら電車の様子を探る。
「か、からすぅ」
「なんだ? イッちゃいそうか? コックリングつけてるから出せねえだろ」
「ちがう。ちがくないけど、ちがってて! 電車のとびらが、ひらいてないぞ」
上機嫌にバイブのスイッチをいじる小海烏がかわいすぎて思わずされるがままになっていたが、俺は異常を見逃さない。
さきほどまで駅に着いたら開いていた電車の扉が開かない。
これは確実におかしい。
やけに乗っている人が少なく赤字にならないのか心配していたが問題はそこではなかった。
俺たちは乗ってはならない電車に間違って乗ったのかもしれない。
ホームに着いたのに電車の扉が開かないなんて故障しているか、回送電車だ。
これから電車は車庫に入るのではないだろうか。
俺の危機感は小海烏には伝わらないらしい。
立たされたと思ったら電車の吊り革を握るように言われた。
「あ、吊り革より手すりがいいか? あっちの棒」
「え? いや、それより、どうにかして降りたほうが」
「常葉は我慢強くねえからな。すぐちんぽいじりたがるよな」
「そんなことないっ」
「アナルかき回される方が好きなのは知ってるって。でも、前に壁があったらこすりつけるだろ、えっちぃの」
笑いながら小海烏は俺のわきの下に冷却スプレーを吹きかけた。
冷たくて体がふるえる。
「もらすなよ。ゴムしてても処理が大変になるから」
「うぅ、立っていられなくなる……」
「人がいないからって電車の床に座り込むのはマナー違反だぞ」
その通りだったが射精感も排泄欲求もおさえきれない。
「泣かれると俺が弱いって知っててやってるだろ」
小海烏の服の裾をつかんで気づいたら泣いていた。
情けない自分に座り込んでしまいたくなる。
足に力が入らないのは満員電車の気持ち悪さが尾を引いているせいかもしれない。
「車両を移動するようなやつは居ないだろうってことで、常葉、脱げ」
何を言われているのか分からない。
笑いながら俺の服を脱がせる小海烏が上機嫌でかわいいことしか分からない。
2017/07/14
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