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01:倒れた俺にシステムは告げる。
※メカメカ国という機械でなんでもかんでもしているせいで人間性が未成熟だったり人格面に問題が出たりする人々と本能優先の獣人たちのお話。

王子様×男前平凡ネズミ

基本わりと攻め視点。


※後日、あらすじと作品傾向などをまとめた前書きを掲載予定です。


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 倒れた俺にシステムは告げる。
 
【王子ヴェーダには安眠が必要でちゅー】
 
 茶目っ気にあふれているとはいえ機械なのでシステムの発言に間違いはない。
 俺の睡眠時間が健康でいるための指針を逸脱しているのは分かっていた。
 それでも、眠れないのだから仕方がない。
 
 根詰めて作業をしてようやくやってきた眠気に任せて椅子を後ろに倒して目を閉じる。
 静寂が数時間せず破られることによって気怠い体を引きずって数字の羅列を見る作業に戻る。
 
 
 メカメカ国の地下深くに様々な人種が冷凍保存されている。
 目覚めさせていいのか悪いのかというのを管理するのがメカメカ国の王子であるヴェーダ、俺の役目だった。
 過去の歴史を知るために過去に生きていた人間を現代によみがえらせるのが一番の近道だ。
 けれど、目覚めさせた人間が真実を口に出すとは限らない。
 犯罪者だったり人格に問題がある可能性を考慮しなければならない。
 そのため誰をいつどんな状態で目覚めさせるのか予定を決めるのが俺の仕事だ。
 
 場合によっては目覚めた人間を安全上の観点から再度眠ってもらうか永遠に眠ってもらうことになる。
 言葉が通じないこともあるし、そもそも脳死状態で目覚めないこともある。
 
 様々な状況を想定して事前に準備をしても失敗と判断せざるえないこともある。
 
 誰からも礼を言われない最悪の立場だが、文句だけは延々と聞くことになる。
 誰も目覚めさせなければ、どこからも苦情はないという意見もあるが、メカメカ国が所有しているメインの機械は不安定だ。
 
 構造を分かった上で使用しているわけではない。
 システムが状況を見て自動的に修理個所を直したり不要なプログラムの削除をしたりと処理してくれている。
 俺たちはシステムから指摘や依頼を受けて部品の調達をしたり、システムが出来ない点検をする。

 システム至上主義派はそれで未来永劫構わないというが当のシステム自身が人間である俺たちが主導権を持たないとダメだと指摘する。
 
 システムに直接働きかけたり、システムが異常行動を起こした場合の対処が今の状態では出来ない。
 自分が壊れないようにシステム自身が各所にバックアップを取っているし、他国からの侵略にシステムが気づかないはずがない。
 問題は外側ではなく内側だ。
 メカメカ国の国民がシステムからの離脱を決めた時にシステムを封印することも消し去ることもできない。
 至上主義派は未来永劫システムと共に生き、システムと共に滅びたがるが、システムは道具として使用されるべき時期が終わったなら気持ちよく消えると言っている。
 
 システムの願いをかなえるためにも失われた知識の探索は必要だ。
 かならずシステムを熟知する人間がどこかで眠っているはずなので俺たちは地道に彼らを起こしていく。
 
 眠っている旧人類ともいえる相手と関わっているからか俺の睡眠障害は根深い。
 気づいた時にはベッドに横になっても眠れなくなっていた。
 
 無性にイライラして部下に当たり散らして嫌な顔をされる。
 ストレス解消用の機械を何度も壊した。
 壊すことでストレスが解消されるという触れ込みだったが、イライラが募るだけだった。
 頭痛はするし、指先は変に震える。
 寒気はするし、吐き気が酷い。
 
 そんな俺に「寝るでちゅー」と告げるシステム。
 電子音声は壁に埋め込まれたスピーカーからだ。
 
 システムは正しい。
 システムの言う通りの行動が出来ない俺が壊れている。
 どうするかと思っていたら部屋の扉が開いた。
 赤毛の少女は下から何番目かの妹だ。
 仲は良くないが地下の人間を皆殺しにしようとしたり人が苦しむときの脳波チェックを自分の親を使ってしようとするので誰かしらに見張らせている。
 彼女が俺の下に堂々とやってくるのは異常だ。
 見張りの誰からも連絡がない。
 
「不眠症には添い寝が一番だとシステムが断言しておりますね」

 システムの返事は「ちゅーちゅー」だった。
 どういうことかと思ったら赤い髪をかきあげながら「どうぞ」と床に転がったカタマリを指さす。
 哀れでしかないボロボロの姿のネズミの獣人がそこにいた。
 縄に縛られて引きずられてやってきたのが見てとれる。
 
「こんな運び方はないだろ」
「乙女の細腕には限界がありますの」
「呼んでくれれば面会しに行った」
「もう持ってきましたから貰ってくださいな」
 
 笑いながら「断られると持ち帰りが面倒ですので殺します」とネズミを踏みつける。
 システムがとめないのでパフォーマンスの一環かもしれないが気分が良いものではない。
 俺はあちらこちらに作りたての怪我をしているネズミにマクラと名付けて家に連れ帰った。

 自分の居住区に戻るのも久しぶりのことだと気づいたのは散らかった部屋とよどんだ空気と直面してからだ。


2017.02.03
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