男も女も裏切るけど金は裏切らない

※タイトルそのままです。


 大学の知り合いの知り合い。
 有名な金持ちの性格の悪い束縛男に俺は捕まった。

 男は好きでも嫌いでもなかったし面倒事が嫌だったので俺はそいつを好きだと言ってやり過ごすことにした。好れて嫌がる奴はいるがそれはそれで早く縁が切れていい。

 男に粘着質に付きまとわれるなんて普通に考えたら精神を病みそうだったが問題ない。元々俺の性格は悪くて個人主義だ。友達は年上の大人で優しい奴が一人しかいない。
 束縛男にあれするなこれするな他人と話すなと言われても何とかなる。

 勝手に強制的な同棲生活が開始していてもセックスを強要されても好きなものを食べて好きなものに囲まれているので妥協できた。俺の性格が悪いところは束縛男の愛を全部受け流していたところだ。正直、どうでもよかった。
 
 一緒に暮らして三か月が経ったころ、平凡としか思えない見た目の高校生がやってきた。

 見た目はどこにでもいそうな少年だったが口の利き方がなっていない奴だった。非常に生意気だ。とくに束縛男への言葉があらい。

 新しい俺のお目付け役かと思ったらどうやら違うらしい。どちらかと言えば意外にも新しい恋人候補だ。
 
 俺の目の前で束縛男は少年にキスをして顔を思い切り殴られていた。少年は平凡な見た目に反して勝気だ。無謀さは若いからか。

 自分を叩くような少年の反応を面白がっているあたり、刺激に飢えたのだろうと想像できた。俺は従順に振る舞うことで束縛男から飽きられて離れようと思っていた。作戦大成功だ。

 平凡少年のように「男同士なんて」と戸惑ったり「やめろ」と嫌がったり「冗談でやっていいことと悪いことがある」と怒ってみたり「ふざけてやることじゃない」とかなんとかぎゃんぎゃん騒ぎ立てるのは逆効果だ。束縛男のようなタイプはきっと好きだ。少年への入れ込み具合からも俺の考えの正しさがわかる。

 今までにない反応というのにこういう男は食いつく。
 
 俺の予想は大当たりで、男同士の行為を受け入れたりしない平凡少年に束縛男は夢中になった。家にいる間はずっと少年の後ろをついていく。好きになったら一直線らしい。

 性欲はもちろんあるので平凡少年が寝入った隙に俺を抱いたりするギリギリのプレイを楽しみだした。少年に知られたら嫌われるだろう。

 どうして平凡少年が束縛男につかまったのかと聞けばどうやら借金で困っていたところを金の力で何とかしてもらったらしい。
 
 それを聞いて恩返しとしてケツぐらい差し出してしまったほうが男らしいと言ったら平凡少年は言葉に詰まった。少年には少年のと思うところもあるのだろう。

 それでも、個人的に借金の肩代わりをしてもらいながら束縛男にぎゃーぎゃー文句を言っていた少年にビックリする。

 束縛男の束縛はたしかにウザったいが大金をもらっておいて恩を感じないのはどうかしている。
 恩を感じてもそれはそれと思っているならお金の価値を知らないのかもしれない。
 
 そんなことを考えつつマンションで平凡少年と共同生活をしていると寝に帰ってくるような束縛男よりも俺は少年と仲良くなる。少年に夢中な束縛男は当然面白くないだろう。
 俺のことを嫌いになったというよりも興味が失せたのだろう男は束縛をやめた。
 きっちりと別れを告げられたがとくに悲しい気持ちもない。
 元々、俺は男自身のことは好きじゃなかった。
 
 年上として平凡少年に「自分の命綱がこんなすぐに気分の変わる奴だって知った上で立ち振る舞いを考えろよ」と言い残して自分のものをバッグに詰めてマンションから出た。
 あの部屋は俺の好きなものであふれていた。
 そういう意味ではいい時間を過ごしたのかもしれない。
 
 男から交際中に与えられたものはしっかりと持ってきたので大学は中退してしまっていいだろう。
 
 
 
 
 
 風のうわさというか情報源は俺の一人しかいない友達だが――彼から元束縛男が俺を探していると聞いた。
 もう恋人でもなんでもないんだから勘弁してほしい。
 俺は今日も今日とて男から買い与えられて大量に持っている金(きん)を売りに店に向かった。
 ゴールドは最高だ。輝きもいいがその日その日で値段が違う。
 安い日に買って高い日に売れば差額は儲けになるのだからこんなにおいしいものはない。
 
 元々、金の輝きが好きなので金のオブジェが盛り沢山な元束縛男の成金な部屋は最高だった。
 純金の置き物は重いがそれがまた嬉しい。
 俺が欲しいと言えば金のオブジェから金の延べ棒までほいほいくれる元束縛男はいま思えば気前のいい奴だった。
 普通の大学生が手に入らない量の金を手に入れられたのは間違いなく男と関係を持ったからだ。
 
 束縛男の粘着質なところは覚えていたが金を売ろうと思っていた俺は警戒を怠っていた。
 平凡少年がお払い箱になったとしても俺にまた戻ってくるなんて考えるわけがない。
 
 実際は金の手錠をはめられて懐かしのマンションに連行。
 
 
 平凡少年はどこに消えたのかと思えば自分の部下にお金になるようしつけさせているという。
 どうも、俺のアドバイスは少年に響かなかったようで男にツンツンした態度を続けたらしい。
 最初は自分の思い通りにならない奴は面白い。だがそれは、攻略する楽しみがあるからだ。
 
 難しくてやりがいのあるゲームと本当にクリアできないクソゲーは全く違う。
 少年はバランス感覚を間違えたんだろう。
 すぐにセックスしないならしないで好きだと言ったり言わなかったりある程度の隙を見せておかないと本当に難攻不落でアタックしている方も面白くないだろう。
 
 自分のものになるからこそ大金を叩いたのに体も心も手に入らないとなっては不良債権。
 
 平凡少年がうまく取り入ることができずに最終的にどこに着地するのかはともかく問題は俺の方だ。
 粘着質な束縛男の束縛が復活されてもいまさら困る。
 
「おまえが居ないとメシが食えねえ」
「それさあ、平凡少年がご飯作れなかったからでしょ」
 
 高校生男子なんてそんなものかもしれない。
 家事をしない子はまったくしないから久しぶりに見る部屋も片付いていない汚い状態。
 俺は自分のことは自分でするというタイプだから食事も掃除も洗濯もしていた。
 大好きな金のある部屋だから綺麗に保ちたかったというのもある。
 自分でご飯を作れるから、ちらし寿司に金箔を散らして食べたりできる。
 ちょっとしたご飯に飾りとして金を散らしてうっとりしながら食べる至福のひとときは、平凡少年には理解を得られなかったが俺の最上級の幸せだった。
 
「戻ってきてくれ! やり直そう? もう絶対に浮気なんかしない。他の奴じゃダメなんだ!!」
 
 熱意にちょっと心が惹かれなくもない。
 男自身というよりも男の瞳に、なのだが。
 
「俺、友達からいい職場もらって幸せなんだけど」
「わかってる!! オヤジのところで働いて構わねえから! 俺のことを捨てないでくれっ」
 
 俺に抱きついてくる男の瞳は涙でぬれて煌めいている。
 綺麗な金色に見惚れていると「いっしょにいてくれ」と再び言われた。
 
 まあ、嫌いじゃない。
 この金色の瞳は俺の心を揺さぶるに値するものだ。
 
 ただ俺の唯一の友達であるこいつの父親と違って髪の毛を赤く染めているのが、だいぶマイナスだ。
 出会った当初は友達に若いころの自分だと言って見せられた写真とそっくりだと思った男だが、性格は友達と全然違う束縛男で面倒な奴だった。
 
 俺の交友関係を探って自分の父親の繋がりを知ってから束縛が激しくなっていったので、俺が友達と友達以上の関係になったと告げたらどうなるんだろう。
 義理の息子になるから見捨てないと言ったら自殺しそうなメンタルだからしばらくは秘密にしておこうと思う。
 
 優しくて頭がいい友達兼旦那さまがなんとかしてくれるだろう。




※タイトルの金はカネではなくキンと読んでゴールドの話と思ってもいいですが友達のことでもOK。
(金髪、金色の瞳な親子です)
この後は金色親子×主人公でもいいですがラブラブな年の差カップルに息子が悔しがっていてもいいです。
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