・どうして俺は怒られているんだろう
会長受けです。
理事長の親戚だという転入生がやってきて二週間。
学園は混乱している。
写真を見てもじゃもじゃ頭が地毛かどうかを確認しなければならない義務感に駆られた俺は案内役を買って出た。
生徒会長はそんなことしないでいいと言われたが俺の決意は変えられない。
正門を飛び越えて侵入してきたエキセントリックな転入生は写真のアフロのボンバーヘアと違う、ただのベリーショート。写真のことを聞くと照れ笑い。彼は寝坊助で天然パーマ爆発頭で写真を撮ったときは時間がないからセットしないままで挑んだらしい。時間をかけてセットしたらそれなりに見れる頭になると普通の髪型の範疇内で彼は言った。
写真通りのもじゃもじゃが見たかったと不満を漏らす俺に転入生は肩をすくめる。
どうせ寝坊したら写真通りだと言われたので次の出会いを期待することにした。
翌日の昼の食堂でもじゃもじゃを見たので思わず駆け寄る。ちょうど生徒会役員たちと一緒に来ていたことなど忘れていた。
転入生に声をかけようとして四人掛けのテーブルを見て俺は驚愕する。
そこはもじゃもじゃパラダイスだった。
転入生がもじゃだとすると隣に座る生徒はもじゃもじゃだった。
髪は普通のちょっと硬そうな剛毛。問題は腕だ。暑いのか春先なのにすでに半そでシャツ。指先から二の腕まで体毛で覆われている。
顔は毛深いということはなく普通。もしかしなくても毎朝、ヒゲをそっているんだろうか。
雄々しいわけではない平凡極まりない生徒に負けた気持ちになった。
転入生の向かい側に座っている不良は雄臭い太い眉毛。
三十代にしか見えないおっさんくさい顔でオムライスを食べていた。
彼も半袖で指先から二の腕まで毛むくじゃら。毛の量が転入生の隣にいる奴よりも多い。
しかも第二ボタンまで開けられたシャツの間から見えるのは見事な胸毛。もさっとしている冗談みたいな胸毛。
めまいをさせながら不良の隣に視線を向けると爽やかに微笑むスポーツ特待生。
もじゃもじゃを感じさせない爽やかさ。
けれど、俺は信じられない。コイツも見えないところがもじゃもじゃに違いない。
騙されたりはしない。
爽やかスポーツ野郎の足元へ行きズボンの裾から手を入れる。もじゃもじゃの感触を堪能しつつ、すね毛程度でこのメンバーの仲間入りは出来ない。そう考えた俺は爽やかスポーツ野郎のベルトに手をかけた。きっとへそからすごいことになっている。俺は半ば確信していた。周りの悲鳴なんか聞いちゃいない。
結果からいうと俺は役員に押えられベルトは外しても爽やかスポーツ野郎のズボンを下げることは出来ずに風紀に捕まってしまった。頭がおかしい行動はしないようにと注意をされて終わったがその日から俺は変わった。変わらざる得なかった。
俺が知らないだけで周りはみんな毛深さを隠しているんじゃないだろうか心配になったのだ。
親衛隊を十人ずつ三十分呼びつけて全裸にさせて全身を点検する。
裸を見られて勃起をする変態が多かった。それはあまり問題じゃない。
彼らの変態性を指摘するとそのまま達することもあったが小さいことだ。
意外だったのが小柄な生徒で男性ホルモンなにそれという顔の親衛隊員でも陰毛はもさもさしていた。へそまでもじゃもじゃなのもいた。裏切られた気分だ。嘘つきだ。
きちんと剃って整えたり処理している隊員も少なくなかったが大体はジャングル状態。
かわいい顔をしてチワワを気取って「はわわ」なんて口にしてても股間はもじゃもじゃ密林。
無法地帯な秘所を四十人分は見たところで俺は自分に近い生徒会役員たちはどうなっているのか気になった。
生徒会長は役員たちを取りまとめる存在だ。役員のことを知らないでは済まないだろう。
親衛隊を帰して生徒会役員を呼びつける。
深夜に限らず会計、庶務、補佐はやってきた。
補佐は三人いるが一人しか来なかった。
副会長は休暇中に実家で足を折って一ヵ月後に戻ってくるので除外だ。
書記は寝汚いやつなので起きない。
諦めが肝心なので来なかった役員は気にしないことにする。
眠そうにしている会計、庶務、補佐を裸にしてじっくりと尻の穴まで確認する。
なぜ尻の穴までかといえば、意外なことに下半身にあまり毛がないと思っても尻の穴の周りだけがもじゃっている奴がいるからだ。補佐は小柄で姫なんてあだ名がつけられているがケツ毛の男だった。すね毛は自分で剃っているがわりと毛深いタイプだと聞いた。知らなかった役員たちの情報が増えて会長としてワンランク上の存在になった。深夜にもかかわらず俺のテンションは上がりっぱなしだ。
会計は脇の毛が濃かったが処理しているらしくぼさぼさではない。形が綺麗だった。
庶務は胸毛がうっすらとある。本人曰くコンプレックスらしい。もっと毛深かったら誇れるのに半端だと嘆いた。
補佐姫はケツ毛をそのままには出来ないと俺に剃毛を要求してきたので仕方がなく刈り取ってやった。
庶務の立派な胸板に少し不釣り合いな胸毛もついでに剃ってやる。
会計も何かされたがったので下の毛の形を整えてやった。
俺は大体満足したのだが親衛隊をセフレにして生徒会役員を深夜に呼びつけていかがわしいことをする最低生徒会長の烙印が押されてしまう。
まったくの誤解だが姫呼びをされる補佐のケツ毛や庶務の胸毛を処理したというのは彼らに不名誉かもしれないので俺は黙ることにした。会長として役員のために汚名を甘んじて受けるのも必要だろう。
呼び出しに応じなかった書記と補佐二人は俺を汚いものを見るような目で見てくるが負けない。
脱毛したわけではないので伸びてくる毛に役員三人がまた剃ってくれと言ってくるので周期的に剃ることを約束した。
生徒会が分裂状態になったが副会長が戻ってくれば仲間はずれにされたと拗ねている書記と補佐二人も気分が落ち着くだろう。
書記と補佐二人どころか全校生徒からの視線が痛くなったと気づいたのは転入生がやってきて一週間経ってからだ。俺は自他ともに認める鈍い男だ。副会長には威張るなと言われるが誰が見ても分かりやすい特徴があるのはすごいことだ。
俺の探求心は留まることを知らなかった。
どうやったらもじゃもじゃになるのか知るために転入生をストーキングした。
そして、爽やかスポーツ野郎の下半身を見るためにすぐそばを陣取った。トイレで隣になって覗き込む作戦だ。これなら風紀に怒られたりはしないだろう。
そう思っていたらなぜか転入生を狙う俺様生徒会長なんていう記事を報道部に書かれてしまった。報道部というのはプチ権力の集まりだ。プチなので本気を出した俺に敵うわけがないからだ。その気になれば彼らを俺は簡単にひねりつぶせる。生徒は娯楽を求めていると報道部の部長に言われたので記事の訂正は求めなかった。優しさをみせれば俺様会長なんて言われることもないだろう。
変に寛容さを見せたそれが悪かったのか転入生がやってきて二週間目で生徒会長のリコールなんていう話題が飛び出た。
風紀委員長はなぜかとてもお怒りだ。
俺は何も悪いことはしていない。
もじゃもじゃを追っていただけだ。
補佐姫をケツ毛姫と呼ばせないように定期的に処理してやっていただけだ。
庶務は胸毛がなくなって喜んでいた。
会計が下の毛の処理中にもじもじしながら別の処理も頼んできたりするが俺が何かをする暇もなく勝手に果てている。
ハンドフリーでオナニーをする会計は上級者間違いない。
役員たちの毛の処理だけではなく親衛隊たちも適度に構っていたら風紀委員長に自分の立場が分かっていないと仮眠室で裸にされる。
今まで数多くの人間を裸にしていたが俺は誰にも裸を見せなかった。
恥ずかしかったからだ。
「……うっ、うぅっ」
悔しさから泣きだす俺に風紀委員長が全身を撫でてくる。
毛の有無を確認しているのは間違いない。
そう、俺は体毛が薄い。つるつるだ。
女性らしい体格をしているわけではないが産毛程度にしか毛が生えていない。
もさもさもじゃもじゃしているのが羨ましい。
転入生たちのグループを追えば俺もきっともさもさもじゃもじゃになると思ったのだ。
風紀委員長に体毛の薄さを指摘される前に俺は自分から懺悔した。
情けないと思うが毛深くなりたかった。
学園を混乱させたかったわけじゃない。
仕事をサボったりしたのはいつものように副会長がいると思って気を抜いていたからだ。
残念ながら自宅療養から副会長は帰ってきていない。
仕事が溜まったら副会長が文句を言ってくるので俺はそれを合図にしていた。自分でスケジュール管理をしていなかったせいで信頼をなくしたのだ。最低だ。
副会長さえいればこんなことにはならなかった。
とはいえ居ない人間のせいにするものじゃない。
だが、俺にとって体毛のことは大問題だ。
俺は涙をぬぐって風紀委員長にどうしたらいいのか問いかけた。
結果、画期的なことを教えてもらえた。
効果が出るかはともかく頑張っていこうと思う。
帰ってきた副会長は怒髪天。
なんでか首をかしげていたら風紀委員長が仲間外れにされて拗ねているのだと教えてくれた。
なるほど、賢い。
副会長はまとめ役を買って出てくれるがみんなで騒ぐのは嫌いじゃない。
「俺な、フェラチオすげー上手くなった!!」
「風紀……おまえの息子をつぶす」
褒めてもらえると思って口にしたのにまさかのスルー。
そして、風紀委員長に隠し子がいるという衝撃の事実。
「年齢詐称? だから、もじゃもじゃなのか?」
「もじゃ?」
「あぁ、副会長……風紀委員長はとてももじゃもじゃな陰毛ですね毛もボーボーだ」
「汚らしい」
「わかってないな。それが男らしさというものだ」
「加齢とともに男性ホルモンは減少して体毛は薄くなっていく」
慈愛に満ちた瞳で副会長が俺を見つめる。
言わんとすることが飲み込めずにいたら頭を撫でられた。
「ふわふわな髪の毛、薄い体毛。何も悪くないどころか逆に大人」
「なんと! 逆に大人!!」
思わぬ副会長の発言に俺は目を見開いた。
「だから、頭ん中がお花畑なのはいただけねーっすねぇ」
「ダメっすか?」
「お仕置き部屋直行」
風紀委員長を蹴り飛ばし踏みつけた後に俺は副会長の部屋で三日三晩オシオキを受けた。
周りは溜めこんだ仕事をしてると思っているようだけど違う。
コックリングをハメられて穴という穴を舐め回されたり入れられたりという過酷なオシオキだ。
むしろ試練だ。訓練だ。
風紀委員長に他人の遺伝子情報、精子を口から摂取すれば俺も手軽にもじゃもじゃボーボーになれると聞いたが嘘だったらしい。よくよく考えると副会長の精子を粘膜で吸収していても俺の毛事情は変わりないので諦めるしかない。
一足早く青年から中年になったのだ。薄毛に悩む年ごろだ。仕方がない。
「もう絶対に馬鹿な話には乗らないことっ。ってか、一人で物事を判断しない!!」
約束させられたがどうして俺は怒られているんだろう。
そのあたりはいまだに分かっていない。
永遠の謎なのか。
※美人副会長と美形男前でボケてる会長は公認カップルみたいになっていますが、なにせボケてる会長なので言葉で説明されないと副会長の気持ちを理解しないし周りからどう見られているのかも分かってない……。
副会長が手綱を握りつつ流され系(ちょっとビッチ)な会長です。
続きを書いたらフルネーム出しますが会長は瑠璃川です。
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