・宮塚と喧嘩するのは俺のせいじゃないプラス(攻め視点)

 瑠璃川(るりかわ)潮(うしお)は温室育ちだ。

 学園を立て直した会長と風紀委員長に気を付けてあげるように念を押されまくった。
 最初、それは世間知らずなお坊ちゃんだと揶揄しているのだと思った。
 悪い子じゃないから苛めないようになんて注意を受けていた。

 だが、世間知らずをバカにしているのではなく瑠璃川潮は文字通り温室育ちだった。
 温度や湿度が一定に保たれた場所で育った。
 そして、それが当たり前だと思っている。
 文明の利器を使いすぎた現代人の貧弱さを体現しているのかもしれない。
 
 幼少期に夏に熱中症で倒れたらしい。
 その後、俺の想像を超えて過保護の中で今の今まで生きてきた。
 本人にその自覚はないのか、梅雨の時期でもじめじめせず、夏でも汗ばまないものと思っている。
 汗をかかずに生きていると汗をかく機能が低下どころか欠落して、自分で体温の調整ができなくなるという。
 瑠璃川潮もそういう体質になっているのかもしれない。
 
 恋人同士だから何もしなくても同じベッドで眠りたいが拒否される。
 何か怒っているというわけじゃない。
 俺が入れそうなスペースになぜか抱き枕やぬいぐるみがある。
 程よい硬さのクッションが好きでリビングでいつも抱きしめている。
 そういう癖があるのかと思ったら、抱きしめるとストレスが軽減すると聞いてからやっているという。
 俺のそばにいるのがストレスなのかと問うと生きていて疲れない人間はいないと返された。
 日々蓄積しているはずの疲労をクッションを抱きしめることでリセットする。それが正しい生き方だと瑠璃川潮は口にする。
 
 頭でっかちというか真面目におかしなことを言う。
 理にかなっているかもしれないが融通が利かなすぎる。
 
 生徒会長になった瑠璃川潮がこれから普通の社会で生きていけるのか心配になった。
 好きとか嫌いとか以前に第一印象は大丈夫なのかというお節介ともいえる気持ちだ。
 年下だからということじゃないが放っていられないと思った。
 
 そして、必要以上に干渉して一線を越えた。
 美形の男にチンコが勃つわけがないと思っていたが、戸惑って身悶える姿が異様にかわいかった。
 警戒心の強い小動物を相手にするような気持ちだ。
 撫でられるのを嫌がるわりに餌は俺の手から食べるのかよとツッコミを入れたくなる。
 
 ブラコンらしい兄に甘やかされているようだが、その気持ちはよくわかる。
 怒って殴ってきても猫パンチより弱い。
 口論になっても生活態度の雑さが精神にも反映されているという謎の指摘では、口喧嘩という感じにもならない。
 
 さすがに恋人に嫌いだと連呼されるのは面白くないのでベッドでポテトチップスを食べるのをやめて、布団を床に敷くことにした。
 床に布団を敷いておくと瑠璃川潮が自分のベッドに辿り着く前にその布団の中に入る。
 俺が風呂から出てきたらすでに寝ていたので推測でしかないが、たぶんこういうことだ。
 温室育ちの瑠璃川潮は涼しくないと眠れないが冷房の風に当たるのも避けたい。
 寝ている場所を移動したい、そう思っていた。
 床にある布団につまずいて寝転がって気づく。
 自分が求めていたのはここだ、と。
 きっとそういうことだろう。
 
 朝に起きたら手を握られていた。
 俺のことが好きらしいのがこの仕草だけでわかる。
 たまたま一緒に寝たのではなく、彼は一緒に寝たかったのだ。
 なんだかんだと不満を並べながらも、結局は。
 
 口で言えばいいと思うことも多いが瑠璃川潮は温室育ちだ。
 快適な環境に周囲が調整している。
 だから、あえて自分から俺に何かを求めようはしてこない。
 ベッドの中でポテトチップスを食べるなとぽろっと言い出すことはあってもタイミングのせいで聞き流してしまう。
 小さいことにこだわりすぎだと俺からすると感じるのだ。
 
 社会に出たら俺程度のガサツさなど掃いて捨てるほどいる。
 いちいち気にしていたら身が持たない。
 そう思って聞き流していたが、温室育ちの訴えたがったのは違うところだ。
 
 ポテトチップスのカスがダニの温床を作り出すと力説して俺を不快生物扱いしていたが、あれは自分が俺と寝たいので布団を汚すなという八つ当たりだ。
 
 床に敷いた布団は洗い立てのシーツで清潔感がある。気持ちよく寝ているところから見ると相当気に入っている。
 ここでポテトチップスを食べたら半泣きでクッションで叩いてくるのだろう。
 想像するとテンションが上がるが本気で嫌われる気もする。
 
 起き上がろうとすると寝ぼけているのか肩を噛んできた。
 どうしてくれようかと思ったが小さな声で拗ねたように一緒に居たくないのかと聞いてくる。
 いつになく弱々しい雰囲気がかわいいが寝ぼけている。
 寝ぼけているとわかった上でかわいさに負けて二度寝をすることにした。
 
 最悪、朝食作り班の風紀委員が朝に起こしに来る。
 
 
 
 後日、ポテトチップスを食べていると体臭がおっさんになるとか早死にすると謎の知識を披露しだすので無理やり食べさせた。気に入ったのか食事代わりにポテトチップスを食べだすようになったので取り上げる。
 
 最終的に俺がポテトチップスの袋を開けた時に俺の手から食べることになる。
 面倒くさいと思っていたが指を舐める姿がエロいので許すことにした。
 惚れた弱みなのか、俺はだいぶ瑠璃川潮に甘い。
 
 
 
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初期構想としては、
瑠璃川潮観察日記(宮塚によるツッコミ話)側面がある二人だったりします。

自分の手から物を食べる姿エロいと思ってる宮塚の前で平気で他人の手から物を食べる瑠璃川潮。
潮からすると意味分からないと思ってる。
指まで食べるのは無意識だけど宮塚だけということを二人以外が知ってる。
延々とそんな感じ。


2017/06/21
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