恋人が間接的に双子の兄のセフレに抱かれてる状況を取り消したい

水山視点。
 
 
 俺が付き合おうとハレトに告げると「子供できないのに?」「男同士なのに?」と驚いた後に「水山ってオレのこと好きだよな」と嬉しそうに笑った。俺の告白に嫌がるそぶりを見せないハレトと晴れて両思いということでいいのだろう。
 
 あっさりしすぎていて実感はないが、ハレトが俺を好きなのは間違いない。
 誰にでも体を許す変態ではなくハレトは最初から今まで俺しか知らない。
 ストーカーである最上から言わせると双子の兄であるハルトの経験分だけ、ハレトも経験豊富と感じるかもしれないが俺にはそうは思えない。
 
 一度はハレトから感じる不自然さから信じたハルトからのフィードバック。俺が与えた愛撫以外を受信しているようなハレトになんだか、独占欲が湧き上がって下半身は熱く燃えた。これに関して、ハレトがボロッと「水山とのエッチの最中に水山とのエッチを思い出して感じて困る」と言い出した。
 
 ハレトの中にはハルトが感じたものを自分のモノとしている自覚がない。
 見てしまったハルトのエッチに感化されてセックスに興味があるし、セックスを試してみたくなるらしいが、愛撫してない部分に反応があるのはハレト自身の想像力のせいだという。バレていたのが恥ずかしいとハレトは言葉を濁したが、俺が次にすることを想像するとフライングでその部分が気持ちよくなるという。
 
 つまり、散々犯されて脱力して水を求めていたにもかかわらず、この後にガツガツ容赦ない責めがあると思ったら、触れずともあんあんかわいく喘ぐほど感じるという。双子の言い分のどちらを信じるのか、考えるまでもない。
 
 
 
「今日はちゃんと勉強をやりました〜。オレってえらいっ。すごいっ。最高だなっ」
「ハレトは良い子だな」

 頭を撫でると自慢げに胸をそらす。
 褒められるのが心の底から嬉しいらしい。

「オレは水山と同じ大学へ行く」
「それには勉強時間が足りねえかもな」
「くそっ。優等生はこれだから! 真面目くんは勉強と付き合ってんのかよ」
「おまえと付き合ってんだよ」
「同じ大学に行けるって言えよ」

 不満そうにむくれる子供っぽいハレトの姿が不快じゃない。
 居心地がいいと判断しているからこそハレトは俺に対してわがままをぶつけてくる。
 信頼してるからこそ無茶を言う。

「同じ大学じゃなくても一緒にいられるだろ。違う会社に入った時の練習だと思って耐えてみろ」
「ちがう、かいしゃ」
「大学でも会社でも行く場所が違ってても帰る場所が同じなら、いくらでも一緒にいられるだろ。ハレトは嫌なのか」
「嫌じゃない。水山がそんなにオレと居たいんなら、仕方ねぇーな」
「セックス漬けになって大学生活を破綻させる奴とかいるから気をつけろよ」
「水山が居ればそんな馬鹿なこと起こんねえだろ」
 
 無邪気に笑うハレトは発情していない。
 昨日に散々エッチをしてスッキリしているので問題ないらしい。
 ハレトのムラッとするスイッチは、双子の兄であるハルトじゃない。
 それがたったの二日で判明した。
 
「それより、みずやまぁ」
「なんだよ」
「コンタクトやめねえ? 似合ってない!! 絶対メガネがいいって。クラス委員長って感じがする。メガネの方が!」
 
 眼鏡眼鏡とうるさいハレト。
 
「童貞で何も知らない優等生水山がオレとのセックスで野獣化すんのがいいのに……」
 
 ぶつぶつとつぶやくハレトは馬鹿かわいい。
 俺の童貞を自分がもらったと思っている世間知らずさを愛でていたい。
 ハレトの考えているような真面目な人間じゃないと知ったらものすごくショックを受けそうなので、黙っていたいが目の前でタバコを吸って見せたい気もする。駄々っ子のように「水山、めがねぇ」と言ってくるハレトがかわいいので、折れてやることにする。ハレトに関してだけは際限なく甘やかしたくなる。
 
「ちょっと眼鏡とってくるからテレビを見て待ってろ」
「お昼作ってやろうか」
「作れんのか」
「ハルトが作ってたから、たぶん出来るだろ」

 理由になっていないと口にする俺にハレトは自信満々に自説を語る。
 いわく、兄弟の才能は大体同じ。
 兄が泳ぐのが上手いなら、弟はもっと上手くなる。
 ハルトがやっているのを見て、どのぐらい力を入れればいいのか、どのような姿勢がいいのか、力の入れ方などのコツを把握してきたという。ハレトが泳ぐ前にハルトが泳いで見せるので、泳ぐ前からハレトは泳げるのだという。
 
 ハルトが気持ちいいから、セックスをする前からハレトが気持ちいいと感じるのは決まっていた。
 そういった斜め上に放り投げた持論をハレトは持っていた。だからこそ、ハルトが言うフィードバックについて、ピンと来ない。ハレトからすると自分の考えたものが自分の体に影響を及ぼしているのが分かっているので、ハルトのせいとは言えない。ハルトのエロさが伝染したと感じても超能力などオカルト的な発想に飛ばない。
 
「ハルトよりたぶん美味しい」
「食べ比べる可能性ねえからな。俺は今後もハレトしか知らねえよ」
「なんだよそれ。エロくねえ?」
「そっちの意味でも同じだ」
 
 嬉しいのか背中をバシバシと乱暴に叩かれた。ハレトにとって俺は「水山はオレもの」と思っているのだろう。かわいいので、女も男も遊びでも手を出したい気持ちにならない。昔ならノリで軽くいろいろと遊んだかもしれないが、ハレトはダサめな服をチョイスする俺の方が好きらしい。
 
 堅苦しい服を着る俺を乱れさせたいとヤル気を出しまくるので分かりやすい。
 
「眼鏡とるついでにコンビニで適当に何か買うな」
「水山のばかっ。オレの飯を食わせねえぞ」
「お菓子いらねえの。風呂上りにアイス必要だろ」
「いる! 三種類買ってくれ」
 
 わがままと言いたいところだが、三回は風呂に入ると思っているからこその言葉だ。
 性欲が強いが俺がいいと甘えてくるハレトを邪険にする気は起きない。どろどろに甘やかして、俺以外と話していると寂しさを感じさせるぐらいに俺を染み込ませたい。
 
 
 
 俺の家はマンションで二部屋借りている。
 一部屋は父の仕事のものを置いたりする作業場だ。
 基本の居住スペースはハレトのいる方だが、両親が家にいる場合は父の作業場のある方でハレトと一緒にいることもある。
 だからか、ハレトは俺の眼鏡が別室にあることを不思議に思わなかった。
 
「床にあるって気づかないで踏んだって言うとハレト笑うだろうな」
 
 フレームのゆがんだ眼鏡を持ってブルーシートの上に寝転がる人物に問いかける。
 口の中にハンカチを入れた上でさるぐつわをしているので、完全に声が出せない。
 
「俺のドジが嬉しいみたいでキラキラした顔するんだよな」
 
 弟として扱われすぎているからか、甘えまくりなくせにハレトは俺に対して「やってあげる」ことが好きだ。ご飯作りもそうだ。きっとレシピを検索しながら頑張って作っている。不器用ではないのできっと悪くないものが出来ている。それをハレトは双子の兄であるハルトが作れていたからと、自分の成果として認めない。
 
 それはハレトが自主的に考えたことではなくハルトが教え込んだのだろう。
 双子の兄弟は普通の兄弟よりも共有する時間が長い。
 親より、教師より、ハレトはハルトからの言葉を聞いて育ってきた。
 
「なあ、知ってたか。ハレトは教えてやりたかったらしいぞ。おまえが知らない気持ちよさってやつを」
 
 バイブを尻にくわえこんで身悶えているハルトに俺の言葉は届いているんだろうか。
 弱音とすら言えないハレトの本音がときどき俺の耳に飛び込んでくる。
 
 ハルトの力になりたい。ハルトの助けになりたい。ハルトが楽しんでいることを自分も楽しんでみたい。ハルトが居ない世界がさみしいから置いて行かれないようにしたい。
 
 そう言って、俺にくっついてセックスに明け暮れるハレトは馬鹿かわいい。
 俺とならハルトが知らないものも手に入ると思ったのだ。
 きっとそれは正解。
 
「叫ぶなよ」
 
 ハルトにしていたさるぐつわを外す。
 口の中のハンカチをとるとき、手が噛まれるかと思ったが、何もされなかった。手の拘束はまだ外せない。
 
「おまえにとっては不服な結果かもしれねえけど、おまえがバイブでよがっててもハレトはなんの変化もなし」
「……うるさい」
「ハレトが喘ぎまくってても、おまえにはなんの変化もない。演技だったのか?」
「だとしたら?」
「馬鹿なことしたな」
 
 もっといい方法などいくらでもあったはずだ。
 
「俺にこんなことしてるって、はっちゃんが、ハレトが知ったら」
「何も変わらねえよ。誤魔化さずに俺は実験したって言うだけだ」
「はあ? 俺のことやらしい目で見てる変態。はっちゃんが許すわけない。はっちゃんはお気に入りのぬいぐるみを俺が抱いたら嫌がって捨てちゃうんだよ。てめーをはっちゃんから引きはがすなんて楽勝なわけ」
 
 ハレトとは違って、陰険で性格の悪い表情のハルト。
 美しい副会長だなんて誰が言っていたんだろう。
 
「俺の計画の一部として、はっちゃんとヤレる機会があっただけで、勝手に彼氏面してんじゃねえよ。勘違い野郎」
 
 つばを吐きかけられそうになったので、距離を置く。
 面倒な双子に関わったという自覚はあるが、後悔はしていない。
 ハレトは今日も昨日もかわいい。
 
「計画ねえ。最後は何があってもハレトが自分のところに戻ってくるとか、そういうのか?」
「そうに決まってるだろ」
「なんで? 双子だから?」
「はっちゃんが横やりが嫌いだからだ。俺からの影響で体がおかしいなんて嫌だって言い出すに決まってる」
 
 ハレトの性格をさすがはよく把握している。
 よくわからないがエッチな気持ちになったとハレトから「ヤろう?」と誘いがくることは多い。
 
「俺とヤリまくってて発散してるから、ハレトが困ることはねえから気にするな」
「俺の性欲が強いってことは、はっちゃんだって」
「だから、だいじょうぶだって。俺が全部付き合ってるから」
 
 同じぐらいの性欲持ち同士として、ハルトはハレトと一緒にいようと思ったのかもしれない。
 やっていることはともかく、そういう視点で見るなら弟思いな兄にも感じる。ただ、ハレトが病的なまでに寂しがり屋になった原因はハルトにもある。
 
 電話がかかってきたので出ると「コンビニで悩んでんの?」と聞いてくる。
 ハレトは俺が居ない空間に飽きたらしい。
 アイスも眼鏡もどうでもいいから帰って来いと言い出した。
 馬鹿かわいい。
 料理を手伝って欲しくはなくても近くで見ていられたいんだろう。
 
「ハルトと会ったんだけど、連れてくか」
『え。ダメ。水山とレンタルした映画見るって約束』
「はっちゃん、いいじゃん。俺も映画見たいよ」
『ダメに決まってんだろ。ハルトが好きなホラーなんか絶対見ない!!』
 
 怖がるハレト見たさに俺もホラーを選びそうになったのでハルトの気持ちはわかる。青春恋愛映画やファミリー向けアニメを恥ずかしそうに手に持つハレトがあざとかわいかった。ハルトが見たがらないから、見る機会がなかったという映画の数々をハレトは俺とこれから見ていく。
 
 ハレトのやりたかったことを諦めさせていたという自覚がハルトにはないんだろう。
 自分を選ぶに決まっていると驕っている。
 そのせいで現状を理解していない。
 きっとこの先も永遠にハレトは自分のものである、自分のところに戻ってくるという前提で考えるはずだ。
 つまり嫌がらせに近いことをやらかしかねない。
 
 ハレトを洗脳するのは無駄だと分かって手を引いてもらわないといけない。
 
「ホラーじゃなくたって文句言わないよ」
『ハルトは最上といちゃついてればいいだろ、オレは水山といちゃついてるから』
「……俺はべつに最上のことなんか」
『好きじゃない奴に好き勝手されんのが好きなんだろ。だいじょうぶ! ハルトの趣味が変でもオレは気にしないからっ』
 
 ちょっとさみしいけど、と言いながら話を終わらせるハレト。
 呆然としているハルトは自分が歩み寄ったらハレトが喜び近づいてくると思い込んでいた。
 今までずっとハレトのほうが、味わっていただろう喪失感。
 ハルトと一緒にいようとして蔑ろにされて感じただろうさびしさ。
 
 意図せずにハレトはやり返している。
 
「電話ありがとう。すぐ戻る」
『えっと、あのな、オレはハルトと違って、好きな奴に好き勝手される方が、いやいい』
 
 かわいいことを言って電話を切ったハレト。
 早くかわいがりに行くしかない。
 
 
2018/08/05

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