クラス委員長、水山
水山視点。
瀧野ハレトはムカつくぐらいにかわいい。
見た目はイケメンと言うべき人種で、体も鍛えているのが俺よりも筋肉がありそうだ。
だが、そんなところは問題じゃないぐらいに言動が無邪気で幼くてかわいい。
裏表のない馬鹿はきっと俺がタバコを吸ったら、ビックリして怒り出すだろう。
俺のことを本当に真面目なクラス委員長の水山だと思っている。
どちらかといえば、不真面目代表選手だが、学校内では隠している。
クラス委員長を押しつけられたのは、担任が俺の裏の顔を理解しているからだ。
人に注意したりする役職になれば、外面のいい嘘の俺が本当になると思っている。
ハレトのことを思うと本当にしてやりたくなる。
頭がよく真面目な俺という偽者があいつは好きでたまらないのだ。
自分の兄と似た臭いのする俺に全力で甘えて求めてくる。
双子と言えども末っ子気質なのか、ものすごく構われたがりな姿をハレトは見せる。
いつでも気にされていたいとキラキラとした瞳で口にする。
付き合ってるわけでもないと言いながら恋人でも面倒なぐらいの束縛を求めるハレトは馬鹿かわいい。
双子の兄に素っ気なくされると俺に抱きついてさみしいさみしいとうるさい。
共働きの両親が悪いとは言わないが、ハレトは愛情不足なんだろう。
ある時期までは兄であるハルトから構われて満足していたが、あっちがあっちで男に目覚めてハレトから距離を置いた。
きっと双子だからと自分の真似をしないようにと気を使ったんだろう。真面目さが仇となって、気遣いは空回りだ。ハレトは兄と出来た距離に戸惑って、俺を襲うほどに切羽詰まっていた。さみしかったんだろう、涙に瞳を湿らせて、一生懸命に慣れない俺のチンポを口に入れる。
まったく気持ちよくなかったが、どこにも行かないでとすがる視線に下半身は反応してしまった。
さみしさで男を襲うような危険人物を放置できないと自分に言い訳をしたのは最初だけだ。
綺麗な顔立ちでイケメンでしかないハレトが、俺に全力で寄りかかって甘えてくる姿はどうしようもなく股間にクる。
儚く美人と形容したくなる副会長をしている兄、ハルトが美しい正統派ショートケーキだとするなら、弟であるハレトは欲張りなフルーツタルトだ。生クリームもカスタードクリームも入っているのにこぼれんばかりのフルーツを盛り付ける。土台のタルトはしっかりとした硬さがあり、俺好みの噛みごたえ。胃もたれしそうに見えて、いくらでも食べられてしまう。
そんなことを思ってハレトにフルーツタルトを出したら、普通にショートケーキがいいと文句を言い出した。
どこまでもブラコンだが、なんだかんだでフルーツタルトを気に入り、俺の分まで狙いだす。
ちょろくてかわいいので、フルーツタルトを食べさせてやる。
男から食べさせられることに違和感がないのか、馬鹿だから何も考えていないのか「おいしい、うれしい、やさしい」と語彙のなさを見せつけてくる。仕方なく俺は自分が買ってきたフルーツタルトを勉強を教えるハレトに全部与える。
未だかつてないほどに他人を甘やかしている。
俺は今まで、情け容赦ないと言われることが多かった。
ちょっとでも俺を知っている女は「自分勝手男なんて彼氏にはムリ」と口説いてもいないのにフラれる。
だが、ハレトから見た俺の評価は優しくて格好いい真面目なクラス委員長だ。
騙してるわけじゃない。ハレトの前では気づけばそうふるまってしまう。ハレトが好きなタイプがそういう人間だとわかっているからだろう。
「勉強しに来たのに……」
フルーツタルトを食べ終えたハレトが発情した顔で俺を見る。
平気で教室の中でもエロい顔をさらすので、俺としては対応に困る。
お調子者として愛されているハレトがエグイセックスしているところをクラスメイトに見せつけたい気もするが、今のところ俺だけのハレトとして守っている。さみしいからと言ってハレトは俺以外を誘おうとはしない。俺が拒否しないとか、放っておかないということもあるが、何かあれば一番に俺のところに甘えにくる。
「水山のメガネっていつ見てもエッチだ。ふでばこ、投げつけてきそう」
訳の分からない評価をしだすのもハレトの愛情表現だ。褒め言葉が下手くそすぎる。
一度、俺から抱きしめたら、苦しがって嫌がるのではなく、恥ずかしくて嫌がっていた。
自分から抱きつく分にはいいと言いながら、俺が唐突に抱きしめると「いいのか?」とうかがってくる。
抱きしめられたくて仕方がないらしいくせにそれに気づいていないハレトがかわいすぎて、コンドームのストックを忘れても抱いてしまった。
「おなか、たぷたぷ、べっとぐちゃぐちゃ」
何戦目を終えたのかコンドームがないせいで分からないが、ハレトが動けないほどヤリまくった。
休日に会えたからというよりも、違和感があるからだ。
「みずやまぁ、みずー。みずくれよぉ、みずやまー」
「はいはい」
どうせ洗濯するのでシーツに股間をこすりつけて立ち上がる。
ハレトから「エロエロがすぎるエロ」と馬鹿っぽい言葉をもらったが、気にしない。
いつでもハレトは馬鹿かわいい。
「……あっ、あぁっ、ひぃ!」
俺が部屋から出る直前、急に声を出して、痙攣するハレト。
あえぎ声がかすれていると思ったら「みずや、あぁ」と呼ばれたので仕方なく再挿入。
抜いたばかりなのですんなりと俺を迎え入れるハレトの中は気持ちいい。
訳が分からないという顔で「みずやま、うごいて」とねだるので今日初めてのピストン運動のごとくキレッキレな腰の動きを見せた。ゆっくりじっくりよりも早く気持ちよくなりたい、堪え性がない奴だ。
「おれの、からだ、へんになったぁ。みずああのせいら、みずあー」
「水が欲しいのか俺を呼んでんのか、わかねえな」
「ちんこ、ほし、ぃ! みずや、しまの」
「誰だよ」
「み、みじゅるぅぅ」
だから誰だと言いながら急に連続で絶頂をむかえるハレトを犯す。達している最中に刺激を与えられて苦しむハレトがかわいいので、チンポをつかんでしごきあげる。透明な液体がぷしゅっと音が出そうなほど勢いよく出てきた。わけがわからず泣きながら「みりゅ、みりゅ」と言い続けるハレト。無理と言っているのか、俺を呼んでいるのか。
気づいた時にはハレトは失神していた。
かわいそうだが、俺がまだイッてなかったのでそのまま腰を動かし続けて奥の方で射精する。
その後に意識のないハレトの顔に俺の股間をこすりつけていると、どこからか着信音がした。
音はハレトのカバンの中からだ。ハルトからの着信。無視しても良かったがブラコン馬鹿は無駄に悩むだろう。俺はクラス委員長に恥じない声を心がけて電話に出る。「はい」といういたって普通の第一声に対して「誰だお前」と知らない声。
ハルトは双子の兄なのでハレトと声がそっくりだ。テンションから雰囲気が違うが電話だったら間違うレベルに似ていた。ハレトがハルトと会話をしているのを横で聞いていたことは何度もある。ハルトのケータイから別人がハレトに電話をかけている。おかしな話だ。
「……もしかして、青森か」
生徒会長である青森とハルトが付き合っているとハレトは言っていた。
俺はそんな噂を聞いた覚えはないが、ハレトがそう思っているなら、恋人同士ではなくとも仲がいいのかもしれない。
『そういうお前は水山か? ハレと一緒か』
「ハレトは勉強に飽きて寝てる」
『嘘つけ、お前……ハレを抱いたんだろ。嫌がる、あの子を無理やり』
ハレと馴れ馴れしい呼び方が気になったが、クラス委員長モードで華麗に対応した。相手が普通じゃなければ、これで話は終わったはずだ。
『ハレは純粋だから自分とハルをごっちゃにすんだよな。かわいい』
「ハレトがかわいいのは異存ねえけど、てめえ誰だよ」
『決まってんだろ。ハレの彼氏だ』
どうやら電話の向こうはいるのは青森じゃないらしい。
2018/07/29