瀧野晴人(双子弟)

「三周年記念短編リクエスト企画」
リクエストされた単語はラストに掲載。
先に知りたい方は「三周年記念部屋、短編企画」で確認してください。

※双子(弟)イケメン受け。(わりと総受け?)

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 親切心はいつでも空回りする。言わなければ良かったと後悔ばかりが駆け巡る。大声で後悔を叫びたいのに一人ぼっちでは声も出ない。誰も聞いていないなら、声を出すだけ無駄に思える。いつからかオレはおしゃべりな無口になってしまった。
 
「水山、ヤろう?」
 
 メガネのクラス委員長をたらしこんだのはたまたまだ。目の前にいたからという理由以上のものはない。
 セフレをふしだらと言うくせにオレが誘えば拒まない。そのくせ、男は好きじゃないと言い出す。
 水山がどんなプライドを守ろうとしているのかは知らないが、オレからするとちょうどいい。絶対に言いふらさないし、周りに知られないように気を付ける。教師からも信頼されているのでオレへのフォロー役としてこれ以上にない。
 
「瀧野、おまえの性欲どうなってんだよ」
「なあに。水山ってばイヤなわけ?」
「そうは言ってねえけど……」
「放課後じゃん? 教師に頼まれたプリントの仕分けも終わって、あとは帰るだけ」
 
 机の上を指で叩くと「そうだけど」と煮え切らない水山。教室でするセックスに興奮するくせに最初はいつも焦らすのだ。教室にあるカメラの死角で何度ヤッたか分からないぐらいにヤッているのに未だに戸惑う。面倒くさいと思う気持ち以上に愉快だった。
 
 真面目を絵に描いた優等生がオレの手のひらの上で転がされている。
 オレも水山と同じで男が好きなわけじゃなかった。でも、今は男を自分の支配下に置くのが気持ちいい。それとも、不特定多数の男という括りじゃなくて水山をどうにかするのが楽しいのかもしれない。
 
「ご褒美やるって言ってんだよ」
 
 最初からネクタイをしていないシャツのボタンをいくつか外すと水山は分かりやすく唾を飲む。オレの体で興奮する水山は男が好きなわけじゃないという言い訳がそろそろ嘘くさい。
 
「水山がいっぱいつねるから乳首がこんなにぷっくり腫れちまって、かわいそうだろ」
「……今日は、舐めるだけにする」
 
 舐めるといっても執拗にしゃぶるので、どちらにしてもオレの乳首は腫れが引かずに敏感なままを維持する。
 でも、きっとこれでいい。オレは間違ってはいない。
 これでオレは双子の兄である瀧野ハルトと同じになる。
 
 
 一卵性の双子である瀧野ハルトと瀧野ハレト。
 ふたりとも漢字で晴れる人でハルトとハレトという別の読みという両親のやらかしのせいで、オレたちの幼少期は自分というものがあやふやなままに過ぎていった。
 
 ハルトが兄だというのは分かっている。けれど、見た目が似ているし、名前の漢字も同じなので兄と区別をつけられずに接する大人は多かった。もう面倒くさかったのか「お前たちはどっちでも同じだろ」なんて言われることすらあり、オレもそういうものだと納得していた。
 
 オレは別にハルトはハルト、オレはハレトだなんて主張しない。
 だって、どっちだっていいのだから、適当にその場をやりすごせばいい。
 けれどある日、ハルトの担任教師に体を撫でまわされて拒絶してから、世界は変わってしまった。
 気持ち悪い男だと思ってオレは自分の担任に告げ口をした。それは大問題に発展してハルトの担任はさようなら。オレからすると不快な男が視界から消えて幸せだが、ハルトからはキレられた。どうやらハルトはペド男と付き合っていたつもりらしい。オレとハルトを見分けられずに性欲を高ぶらせる変態がまともなわけがない。
 
 男が好きだとしてもまともな人間を探せと伝えてもハルトの機嫌は直らない。
 オレもハルトも見た目は確実にいいので、相手がいないなんてことはないと同級生とキスしてみた。
 案の定、オレのことを好きだと言うようになったので、同性の恋人を持つなんてハードルが低い遊びだ。
 でも、ハルトがあまりにも怒っているのでオレはハルトと間違えられないように髪を脱色してピアスを開けた。
 優等生が多い学校というよりは小学校で弾けすぎと受け取られたのか、遠巻きにされることになった。
 ちなみに学校側は以前の男から性的に触られたことがショックでという適当な言葉を鵜呑みにして特例でゆるしてもらえた。ハルトは大人しく優しいがオレはそうじゃない。顔が同じでも髪の色や制服の着方で双子であるオレたちは確実に見分けられる。
 
 高校でハルトは生徒会の副会長になった。
 とくに部活に入る予定がなかったから、放課後の時間つぶしに奉仕活動をしようと思ったんだろう。
 オレは複数の運動部に籍だけおいて適当に試合に参加する不良部員をしていた。
 対照的なオレたちはハルトが望んだとおりに間違えられることはなくなった。
 
 でも、それが寂しかったのかもしれない。
 
 ハルトを見にこっそりと生徒会室を覗いたことがある。
 地味な仕事をこなしているかと思いきやハルトは生徒会長である青森のチンコを受け入れていた。
 ちょうどよくハルトの中を出入りするチンコが見えて、オレはビビった。
 男が好きだからと言ってハルトが男とセックスするとは思っていなかったからだ。
 小学校の頃から自分の担任とそういった行為をしていたのかもしれない。
 分からないまま気づけばオレはトイレで自分の尻に指を入れていた。
 絶対に気持ちよくなるわけないのにハルトが尻にチンコを入れているだけで、オレもやってみたくなった。学校の中でセックスするなんて真面目なハルトらしくない。なのに生徒会の仕事と偽って放課後にヤリたい放題だ。
 
 オレが知らないことをハルトが知っているのが嫌なのか、ハルトと同じことをしたくて尻の中がうずく。
 そんなときにトイレにやってきた大きすぎず小さすぎないちょうどいいチンコもとい人間がクラス委員長の水山だった。
 水山は最初はもちろん嫌がった。「俺はホモじゃない」と叫びながら逃げようとしたが、チンコをしゃぶれば腰を抜かして言いなりだ。オレは初体験を騎乗位で済ませて、以降は定期的に水山とセックスしている。放課後の生徒会室でハルトが会長である青森のチンコを入れているのだと思うとオレの尻は犯されるのを待つようにチンコを呼んでしまう。
 
 水山に腰がエロいと言われながらいろんな体勢でするセックスは不思議と飽きない。水山が真面目すぎて勉強熱心なのか、ハルトが今日も青森に抱かれているのだと想像して感度が上がるせいなのか。オレのこの色情狂状態の謎は解けないが、今のところ問題ない。
 
 わざとハルトがいることを知った上で脱衣所に突入して、裸チェック。オレよりも白い気がするハルトの肌。キスマークはほぼなし。ただし、乳首はオレよりも充血したように赤くて痛そうだった。会長と言っても真面目じゃないらしい青森は乳首責め男なのかもしれない。ハルトを大切にしろと言いに行きたいが、ハルトから怒られそうなので耐えている。
 
 オレがハルトの双子の弟であるのは青森も知っているので、あちらからハルトと交際していると挨拶をするのが筋だ。
 
 気になるのは生徒会長である青森の動向ぐらいで、オレは水山というちょうどいいチンコと日々ちょうどよく暮らしていた。
 
 
 
「精液でパンパンなゴムがバンバン入ってるレジ袋ってゴミ捨て行くやつカワイソウ?」
「べつにゴミの中を漁ったりしないだろ。ってか、瀧野」
「え。終わりだろ。もっとヤリてえの?」
 
 水山は案外絶倫なのかもしれない。オレが下半身をタオルでふいてるところを見て、またチンコを元気にさせていた。
 
「そうじゃなくて、アレってお前の兄貴だろ」
「ハルトめ! これから恋人と放課後デートか」
 
 教室の窓の外では校門に向かって歩くハルトと青森。
 生徒会室でエロエロした後に帰り道でもいちゃいちゃとは、青春を楽しみすぎだ。
 オレの意見に水山が驚いたように「会長と付き合ってんのか」とつぶやいた。
 
「アレは恋人の距離だろ」
「普通の会長と副会長の距離に見えるけど」
「水山って鈍いよな」
「おまえにだけは言われたくない」
「なんでだよ!」
「おまえ、会計にストーカーされてんじゃん」
 
 理由になっていないが事実なので否定できないことを言われた。
 オレは今の生徒会会計である最上(さいじょう)からストーカーされている。
 最上はオレにとってストーカーというよりも友達だ。キスフレだと思っているが、なぜか押し倒してこようとするので距離を置いている。小学校の同級生で、キスをしてたらしこんだオレを好きすぎる第一号だ。キスは今でもときどきするし、好きだとも言われるが、最上とどうにかなることは有り得ない。
 
「あ! 水山の精液も入ってるけど、これを最上にやろうか」
「おまえ、ホント常識ねえな」
 
 レジ袋いっぱいの使用済みのコンドーム。ストーカーなら喜びそうだが、水山の精液もあるので微妙かもしれない。
 
「おまえの頭ん中って、どうなってるわけ?」
「うーん、ハルトでいっぱい?」
「よくそれを、俺に言えるよな」
 
 ムッとした顔をしつつも、きっちりとネクタイを締め直す優等生水山。
 クラス委員長はクラスの人間を採点する役職なのか、水山はときにこうしてオレを試して勝手に減点する。
 
「瀧野のことが、マジでムカつく」
「怒んなよぉ。ぜったい、人生は笑ってる方が得だって! 水山はただでさえ神経質な優等生ですって顔してんだから、スマイルスマイルゥ」
「バカにしすぎ」
「頭いいって知ってるから、日曜に勉強教えて?」
「犯すぞ」
 
 それは自然の流れなので「一時間は勉強しねえと」と返した。水山は呆れてオレの頭を軽く叩く。
 どうやら返事に失敗したらしい。
 
2018/07/29

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