「一周年記念
単語リクエスト企画」
リクエストされた単語はラストに掲載。
先に知りたい方は「
一周年記念部屋、単語リクエスト企画」で確認してください。
※人外受け。
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むかしむかしというほどのむかしでもない時に淫魔がおりました。
淫魔として劣った見た目の無価値にも等しい存在です。
淫魔は人間を誘惑する存在なので美しさこそが絶対的な価値であり武器です。
武器を持たないものは滅びるのが定めです。
そんな死すべき時を待つ淫魔は吸血鬼の後ろ盾と数人の人間の支援を受けて消滅の危機を脱しました。
それからしばらく時間が経ち、とある部屋で異常が報告されます。
淫魔が暮らしていたある部屋が調査対象です。
あらゆる観点から部屋は調べられました。
けれど、変わったものは見つからずじまい。
異常は気のせいだったのだという結論にならなかったのはラプラスの魔と呼ばれるある種の予知能力者の発言のせいです。
目には見えなくても部屋の中に必ず何かがあると断言されていました。
最終的に動き出したのはデウス・エクス・マキナ。
さすがは物語を終息させる機械仕掛けの神さま。その二つ名は伊達ではなく彼は一発で部屋に住みつく怪異を発見しました。
怪異の原因となっているのは、自身の時を止め仮眠状態になっている淫魔でした。
魔の存在とは暗がりで増殖することがあります。
自然発生の魔が一体いたら五十体はいると思えというのはもはや常識です。
五十体いてもたいして強くないので物理的な干渉が出来ない魔はいてもいなくても同じようなものです。
ただ、ここで問題となるのは淫魔のまわりにあった魔から魔物が増殖したのではなく同じ淫魔が発生したことです。
ブサイクな言ってしまえばレベルの低い淫魔が無意識に生み出した新たなる淫魔。
誰が言わなくても分かるほどにメチャクチャ弱い存在でした。
生みの親とも言えるブサイクな淫魔にも気づかれることのない希釈された存在感は時間にすら忘れられてしまったのです。
そのため時間を停止する能力を持っていました。
時間停止能力だけをあげるならば最強クラスにもなれるのに能力ですが、残念ながら使えるのは限定的な場面です。
食事の時間だけ世界を止めることができるのです。
淫魔の食事とはすなわち精液集め。
そんな幸せになるビジョンが見えない出生の秘密を持ちながらも賀茂(かも)葵(あおい)、俺は今日も生きている。
賀茂(かも)という家で育てられ「徳川しかない」という鶴の一声で葵(あおい)という名前を与えられた俺は裸の男たちを見上げていた。
シーツが汗と精液でぐちゃぐちゃで不快だし、体力がないので身体がくるしい。
「あおい、大丈夫か?」
比較的、気を遣ってくれる良い奴なのが生徒会長である徳川だ。
むかしからの知り合いというか人間としての成長を参考にさせてもらったところがあるので今の関係になるのは嫌じゃなかった。
徳川だけなら絶対に楽だったと断言できるがそうはいかない。
咳きこむ俺を徳川があたためるように抱きしめてくれる。
優しく良い奴な徳川だが、俺が淫魔であるせいで徳川の良さはマイナスに作用した。
生まれて消滅させられずに育ててもらった恩はあるが余計なことをされたと思わずにはいられない。
親とも言える淫魔から弱っていて死にそうなら元気になるために人間の精液をあげてほしいとデウス側に伝えられた。
俺を保護してくれたデウス側はそれを了承してすぐに新鮮な精液をくれた。
その方法が「このバケツの中に射精してくれ」と人には見えない状態の俺が入ったバケツを生徒会の人間に託すことだった。
馬鹿げているが精液は手に入ったし、俺の存在消滅の危機は回避された。
そのはずだったが俺は時間停止を解除して肉体を持ったり動いて会話をしたりしなかった。
弱っていたというよりも育っていなかったせいで活動が開始できなかった。
だが、俺はそれを説明できない。言うなれば胎児の状態で世に出ていたので肉体を作り上げて固定化するだけの力がなかった。俺を生み出した親ともいえる淫魔にとって、俺の状況は未知のことだった。そのため俺の状態は勘違いされた。
精液が足りないから元気がないのだろうと思ったらしい。
ドジな淫魔の余計な助言と人間たちの欲望によって俺の身体は淫魔として最悪の素質を持って育ってしまった。
物心ついたときには男のチンコに吸いついていた。
人間が母乳で育つというのなら淫魔の俺は精液で育つ。それ自体はそこまで淫魔としておかしくはないのだが人間たちは優しすぎた。
バケツに休みなく与えられ続けた精液は俺にとって羊水のようなものになっていた。
精液を取り込むことが日常であり精液なしで生きていけない。
俺は精液ごしに息をするような精液ベビーであった。
事情を知っている面々はバケツの中でうごめく俺を怖がることなく祝福した。
そこは畏怖の感情を持ってほしかった。
怖がってくれたなら魔の存在としての立場を維持できたはずだ。
だが、誰も怖がらないどころか蘇生が成功したと喜ばれパーティーが開かれる始末。
このときに俺の身元引受人を買って出てくれ育ての親になったのが賀茂生徒会長。
現生徒会長である徳川の親父さんも当時の前会長ということでこの精液バケツのことは知っていた。
俺の正体を知りながら徳川との仲を放置する謎っぷり。
お腹がすいたら押し倒して息子の息子から搾りとっていいからと学園に入るときに言われた。
親として息子の精液をスナック感覚で提供するのはどうなんだろう。
ともかく、俺は当時の生徒会役員たちの欲望で何とか育まれた。
それ自体はありがたくあったかいことだと思うが俺はあまりにもひ弱だった。
転んだら怪我をするし、熱を出すし、頻繁に貧血になる。
腐っても淫魔は魔に属するものだ。病などにかからない。病魔は魔の内だ。言うなればお仲間。
病弱などという言葉とは無縁でないとならない。
それなのに俺は弱っていた。
多大なる優しさとして与えられる精液。
健康を取り戻すことのない弱い俺。
出された結論は俺は元々が病弱でありいくら精液を与えても体調が良くならないという残酷なものだった。
その上、淫魔として致命的な欠点も浮き彫りにされる。
俺はただの精液ではなく複数の人間の精液の混合液でないと吸収できない。
知性の発生以前に与えられていた生徒会役員たちの精液。
それを吸収して存在を強化し、さらに幼少期に健康になるようにと毎日大量に与えられた。
淫魔に精液が必要といっても摂りすぎは体に悪い。
そのため無意識に俺の身体は数人が混ざり合った状態の精液からだけ栄養を補給する身体になった。
バケツの中の精液の海で呼吸を開始した俺は本来なら生きているだけでありがたいのだが、毎日の食事に泣きたくなる。
生みの親である淫魔が悪いとか、延命に協力してくれた当時に生徒会役員たちが悪いとか、そういうことじゃない。
あえて言えば、俺をまともに育ててしまった賀茂家や徳川家は大きなお世話をやらかした。
淫魔としてこうなるのは仕方がないと思いながらも人間としての人格を育ててしまった俺は現在、大変憂鬱だ。
「あおい?」
心配してくる生徒会長である徳川の時間を止める。
俺から少し離れた場所に座らせる。
そして、会計の時間を動かす。
「あおちゃん、かわいいね」
俺の見た目は親である淫魔とはあまり似ていない。日本風の平凡な顔立ちだ。
淫魔として失格と言える。
「あおちゃん、キスしよう」
徳川の姿を会計は見れない。
二人の時間の流れが違うからだ。
この場にいるのは生徒会長と会計の二人だけじゃない。
複数人と俺は同時にセックスという食事をしている状況だが、誰一人としてそう思っていない。
俺が時間を停止させ、時間をずらしているからだ。
同じ空間に複数人が滞在しても時間が違っていればお互いはお互いを認識できない。
たとえば午前八時に俺を起こしに部屋を訪れた会長と午後二時に俺をおやつに誘いに来た会計は出会わない。
同じ場所でも時間が違えば顔を合わせたりしない。
原理としてはそういうことなんだろう。
時間停止させた人間は俺以外に観測されない。
一定期間で時間停止は自然に解かれてしまうので停止したり解除したりと忙しい。
それでまた力を使うので食事のたびに憂鬱でつらい。
俺を抱いている誰もが自分だけで俺を抱いているつもりで俺は複数人に同時に抱かれているのだから笑えてしまう。
誰かが射精したものが別の誰かにかからないように角度を考えたりするのも大変だ。
本当は時間停止という小細工を使わずに輪姦されるべきかもしれないが、そうなれば俺の彼氏は誰なのかという話になってくる。考えるだけで頭が痛い。
最初、徳川以外の生徒会の人間にそれぞれ強姦されかかった。
俺が精液を複数ブレンドしたものでないと栄養として吸収できない。
そのため、逃げるのではなく受け入れる姿勢を見せて時間停止と解除を使って複数人に一度に襲われることにした。
無事にエネルギーは手に入れられて淫魔としては幸せなはずだが、徳川のことを思うと憂鬱だった。
普通に生きて良識人な生徒会長は俺のこの状態を受け入れるわけがない。
幻滅されるに決まっているので食事量を減らそうとも思うが、なぜか俺を抱こうとするやつらがいる。
淫魔というのはやっぱり抱き心地が良いんだろうか。
それはそれで誇らしい気分になるが同時に気分も悪くなる。
咳き込みながら俺は自分の肉体的な弱さと心の置き場のなさに溜め息を吐きたくなった。
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「
平凡受け、強姦、輪姦」+「
時間停止、よわよわ、学園、病弱、食事、憂鬱、彼氏、複数」
NG「
暴力」という単語リクエストからでした。
(複数との)エロ中心になる予定だった話(過去形)です。
エロ描写薄いので冒頭で注意などしていません。
欲張ったリクエストの取り方からお分かりいただけるように中編を予定していました。
でも、これはこれでいいかなみたいな気持ちになったので短編として掲載しておきます。
輪姦なのに一対一という特殊空間のエロを思いついた時に「どうかしてる!!」とテンションが高くなり萌えて書きたくなったのですが、いざ書いてみると両片思いと片思いと三角関係な話の流れになって目新しさが少ない先が読めそうな展開なので続きはなくてもいいかなと。
あとで作中で要素が薄いリクエストを他作品に移動させるかもしれません。
2017/10/05