鵜の目鷹の目藤高の目

 他人にどう思われてもいいと感じるのはオレが他人を何とも思っていないことの証明だ。
 逆に言えば、嫌われたくない、好かれたいと思える相手は何より特別。
 特別なものはオレの世界を豊かに彩ってくれる。
 そんな考えでいたから藤高派閥の人間から、怒られる。
 藤高がオレのためにこの世に生を受けたんだみたいな気持ちが前面に出ていることへのクレーム。
 聞き流し続けていたけれど、お怒りはごもっともかもしれない。
 藤高が好きなようにできる空間こそが正義だというのはオレよりも親衛隊たちの気持ちだったりする。
 リーダーシップをとってくれることを藤高に期待して彼らは何もわかっていない。
 けれど、オレを批判していた側面だけは正しかった。
 
 スタイリッシュな見た目に反して動かざること山の如しという不屈で不変で強固な態度。
 それが藤高であり、この先も変わらない。
 藤高の常識の外にあるものを求めるべきじゃない。
 
 
 ただ藤高にとっての常識とはなんだ。
 
 
 ゴムを装着したオレの息子をどうするんかと思えば、なんと玉袋さまを口に含んだ。
 藤高が餅巾着に染み込んだ出汁を吸うようにオレの玉を吸う。
 オレのおいなりさんは美味しいのかと聞きたくなるがグッと我慢する。
 噛まれはしないだろうけれど、余計なことを言うなとでこぴん責めを受けそうだ。
 藤高の魔法の指先にかかれば痛気持ちいいぐらいの強さだろうから怖い。
 今後、玉を責められないとイケない身体になりそうだ。
 
 転入生は絶対に藤高に踏まれないとダメになっている。
 目隠しされて藤高以外に踏まれて藤高じゃないと一瞬で看破して怒り狂っていた。
 踏んでくれるなら誰でもいいビッチではないらしい。
 すこしだけ感心した。
 とはいえ藤高が踏んでくれるのが当たり前だと思い込むような自己中心的な考えの持ち主だから近いうちにお預けプレイを味わってもらいたい。
 
「なに考えてんだ?」
 
 ちゅぽっとエロい感じの音を立てながらオレのおいなりさんを解放した藤高は首をかしげる。
 勃起して天井を向いたオレの息子が藤高の顔にかぶっているので表情がわかりにくい。
 チンコが左寄りになることを念じてみたがムリだ。
 
「早漏脱出のためにムカつくことを思い出したり、しておりました」
「出したいなら出していい」
 
 そう言いながら藤高が指で先っぽを責めてくる。
 ゴム越しだからか指先の力がいつになく強い。
 
「どうせ出しても、すぐ復活するだろ」
「そう言われましても」
「俺のことだけ考えてろ」
「はい、喜んで!」

 つい声を張って答えると苦笑しながら「ばか」と言われた。
 いつになく愛情を感じる。
 にやけていたからか「笑ってんな」と玉にでこぴんされた。
 このタイミングでくると思わなかったので小さく悲鳴を上げつつ軽くイッた。
 オレは転入生と違ってマゾではないが藤高の嗜虐的な視線に快感を覚える。
 禁欲的に見えた藤高が一転してどこまでも性的に見えてしまってギャップに射精感が高まっていく。
 藤高の口の中に出したいとか、藤高の顔にかけたいとか、藤高に精液を飲んでほしいとかいろいろと要望はあるが今日は我慢する。
 オレに発言権はない。
 今日は全部、藤高主体だ。
 
「なにか希望あるか」
「ナマがいい!!」
 
 慎みも遠慮もなく反射的に答え自分に絶望する。
 瑠璃川水鷹は欲望だけで生きている。
 知ってたけどオレはあまりにもバカ。
 
 藤高が無言でオレの息子をしごきだす。
 玉をちゅうちゅう吸いながらしこしこされてあっさりと限界を迎えた。
 熟練の技というよりは天性の器用さをこんなところで見せつけてくる藤高。間違いなく最高で最強。
 
「出したらこのゴムは使えねえな」
 
 ゴムを外してゴミ箱に捨てに行く藤高。
 新しいゴムをつけるでもなくオレの様子を見る。
 オレはバカだが鈍いわけじゃないので藤高がオレの希望を叶えてくれるために手こきでイカせてくれたのはわかる。
 だが、藤高が次にとるアクションは予想がつかない。
 
 戸惑う気持ちを反映したようにオレの息子は再度立ち上がりながらも左右に落ち着きなく揺れる。
 それを観察するように見つめる藤高。
 どんなタイミングなのかオレの息子に軽くチョップをしてきた。
 
「大切な息子をいじめんでください」
「落ち着きがなかったからな、つい」
「会いたくて震える的な? 藤高の中に会いたくて震える?」
「ちょっと待ってろ。計算してる」
 
 計算なんてこの場で一番不釣り合いな言葉が飛び出るけれど、だからこその藤高かもしれない。
 藤高の中でGOサインが出ない限り局面に動きはない。
 それを甘んじて受け入れるのが藤高に主導権を渡したオレの責任だ。
 
「動くなよ」
 
 そう言って藤高が自分の右手とオレの左手を手錠で繋ぐ。
 オレを動かなくさせるために使うと思っていた。
 藤高の手がすこし汗ばんでいて息を飲む。
 オレが藤高を特別だと思うように藤高をオレを特別だと思ってくれている。その証のような手錠の繋がり。
 
「たぶん、まあ……いける」
 
 藤高には珍しい歯切れの悪さ。
 オレが口を開こうとしたら藤高が先に動いた。
 
 勃起したオレの上に腰を下ろそうとする藤高。
 ふと何かに気づいたように「口は閉じてろよ」と言われてオレが吐いた時を思い出した。
 現実はそれどころじゃなかった。
 失敗の記憶も何もかもが塗りつぶされ、押し流され、かき消される。
 
 思いの外すんなりと藤高の中に侵入した。
 握られた手は汗ばんでいるのではなくローションで濡れていたのかもしれない。
 オレから見えない角度で藤高が自分の指でおしりをいじっていたのだと思うとたまらない。
 けれど、その興奮も一瞬のことだ。
 目の前が真っ白になった。
 現実としては真っ暗だ。
 
 騎乗位でオレの息子を迎え入れてくれた藤高は射精した。
 
 まさかこのタイミングで来ると思わなかった衝撃で頭の中は真っ白だ。
 ところてんがエロすぎると茶化す言葉も出てこない。
 アイマスクの穴を藤高の精液が上手く塞いだのかオレは本当に目隠しの状態になった。
 暗い視界の中で藤高の喘ぎ混じりの吐息が聞こえる。
 今すぐにアイマスクを外して藤高の顔を見たい。
 
 思いが通じたのか視界が明けた。
 まぶしさに目を細めていると口に指が入ってくる。
 オレと繋がっている右手は動いていないので藤高の左手の指だろう。
 口の中に広がる味と匂いにまばたきを繰り返す。
 
「精液、なめたいって言ってたから、な」
 
 照れているのか嬉しいのか恥ずかしいのか分からない藤高の微笑み。
 これ以上になく満足気で綺麗なことだけは確か。
 
 息子復活おめでとうとか今日から楽しくセックスライフ開始だねとか顔まで飛びそうなら口を開いて待ってたとか言いたいことはいろいろある。
 
 でも、口から出た言葉はシンプルで言い慣れたものだった。
 オレが藤高に伝えたいものは最初から最後まで一言だけしかないのかもしれない。
 何をどれだけ犠牲にしてもとめられない感情と言葉。
 
「すき、だいすき、あいしてるっ!!」
 
 呆れながらもいつものように藤高は「知ってる」と言って笑う。
 いつもと同じだけれど「俺も同じだから」といつもと違う言葉が付け足された。
 胸がいっぱいだと思ったら泣いていた。
 藤高が右手でオレの涙をぬぐってくるので手錠の鎖が音を立てる。
 繋がっていることを主張するような手錠にものすごく興奮した。

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