≫アンケート ≫拍手 ≫文章倉庫 ≫サイトtop

◆ すべての裏側


 藤鳥(とうどり)は眠っている自分の愛しい子の目元を撫でる。
 泣いたのですこし腫れている。夕飯も食べていないので朝ご飯は豪華にするように指示をしようと藤鳥は決めていた。
 この家の基本的な権限は藤鳥のものだった。
 組長からの信頼も厚く細かいことは全て任されている。
 
 藤鳥はふと思い立ち義理の父ともいえる相手がどうなっているのか部屋に顔を出して確認した。
 愛しい子の傍を離れたくはなかったが放置するわけにもいかない。
 部下たちは単細胞なところがあるので馬鹿をやらかさないとも限らないのだ。
 
 部屋の中を覗きこむと特に変わりのない乱れた義父の姿。
 指示通りに目隠しだけは外していない。
 自分の息子に見られていたことも保護者同士ということで顔を合わせた知り合いである藤鳥がそばにいることも気が付いていないようだ。
 
 男を咥えて悦んでいる姿は理性の欠片も見当たらないがどうだろう。
 彼は本当に快楽の奴隷になってしまっているのか。
 違うのなら相当の演技派だ。
 
 あまりにもケダモノ。
 人と呼ぶのが恥ずかしくなるほどの晒された本能。

 理知的な愛らしい少年とは似ても似つかない。
 親子なのか疑問になるほど印象が違う二人だ。
 まあ、それもそのはず二人に血の繋がりはない。
 
 それこそが目の前の義父がこうなってしまった理由だ。
 
 妻の浮気の結果として藤鳥の愛しい子はこの世に生を受けた。
 彼は妻の不貞を知っていた。知っていたが止めるだけの力がなかった。
 問いただすことも出来なかった。
 
 人とコミュニケーションをとるのが苦手だったのだろう。
 彼が外に働きに出ずに主夫でいる理由。
 少ないながらに在宅の仕事をしているとはいえ稼ぎは妻の方が圧倒的に上。
 夫婦の間で納得済みならば多少は変則的な家庭というだけの話だが妻の浮気から考えて違うだろう。
 夫の稼ぎが少ないことも夫が家にいるということも周囲を気にしてプライドが高いタイプの妻にはマイナスだった。
 
 それでも彼が働きに出ないのは就職が難しかったからではない。
 ツテはいろいろとあっただろうが他人との接触を少なくしたかったからだ。
 人と意思疎通を彼はうまく取ることが出来ない。
 訪問販売で必要ではない布団を購入してしまうタイプの人間だった。
 その押しの弱さや優柔不断さも妻が彼を嫌う原因の一つだ。
 
 彼ら夫婦はお見合い結婚で家同士の繋がりの意味合いが強かった。
 政略結婚で性格的にも合わないふたり。
 上手くいくはずがなかった。
 妻は家庭を顧みずに仕事で出張の予定ばかりを入れて家を空ける。
 浮気をして作った子供と見合いで手に入れた夫と一緒にいるのが息苦しいのかもしれない。
 
 彼はいい夫ではなかったがいい父親ではあった。
 子供のことを第一に考えて、自分の血が流れていなくても気にせずに愛情を注いだ。
 彼と彼の息子である藤鳥の愛しい子の関係は良好だった。
 血よりも濃いものが二人の間にあったのは事実だ。
 息子のためなら何でもできると彼は心から思っていただろう。
 そのせいで悪い男に騙されたのだ。
 
『息子に血が繋がっていないことをバラされたくなかったらケツを出せ』
 
 無理矢理から始まった関係。
 突然あらわれた男に脅されたのだ。本位じゃなかった。
 だが、冷え切った夫婦関係とはいえ彼もまだ若いので性欲はある。
 風俗に手を出すことも出来ないような小心者。
 次第にのめりこんでいった。
 血の繋がらない息子のために耐えていたのがいつの間にか自分の快楽を追うために身体を開いて結果として息子を傷つけてしまうという本末転倒。
 皮肉にも父が文字通り身体を使って守ろうとした秘密は秘密のままになったが父の性癖は息子に全部バレてしまった。
 
 息子は息子で父が男を求めることへの嫌悪ではなく家族を壊そうとする行動に怒りを覚えていた。
 年ごろから考えると当たり前かもしれないし、母が離婚を口にするような気配を出していたのかもしれない。
 
 どちらにしても藤鳥からすると自分が愛する相手から頼られたという結果で満足だ。
 そのためだけに父と息子の間に血縁関係がないことを父のような意志薄弱で性欲を持て余した男が好きな相手に情報を与えた。
 別室で拷問のような性行為を受けている間男と藤鳥は顔見知りだ。
 既婚者を篭絡させるのが好きな男で女なら関係を持って金を出させ、男なら肉便器や手足のように従属させる。
 間男との関係なので脅されても被害届は出せないし、罪悪感から配偶者に相談も出来ない。
 精神的に追い詰めながら快楽の鎖で飼殺すのが男のやり方だった。
 同じことを返されてひぃひぃ言っているのは自業自得だろう。
 
 愛しい子が自分の自作自演ともいえる報復劇に満足してくれた、それだけで藤鳥は労力に見合ったと微笑める。
 
「……むす、こには……むすこにはなにもっ」
 
 肉欲に溺れながら血の繋がらない息子を気遣う父。
 そもそもこの父親が暴れたり抵抗する姿を見せないのは息子を誘拐したと伝えているからだ。
 この場所が息子のクラスメイトの家だと気づいてもいない。
 帰ってこない息子に心配していたところに電話で呼び出されておとなしく目隠しをして車に乗ってやってきた。
 
 男に抱かれることに慣れた身体は簡単に快楽に啼くが息子を忘れたわけじゃない。
 逆らえば息子に危害を加えられると聞かせられたせいで従順だ。
 
「そりゃー、おまえ次第だなぁ?」
 
 柄の悪いやつらがぎゃはぎゃはと笑う。
 絶望から身体を震わせるが根からのMなのか萎えることがない。
 
「なんでもするから、息子には手を出さないでくれ」
 
 心から息子を思っているのかそういうプレイで楽しんでいるのかは藤鳥には分からない。
 ただ、自分の愛しい子に対して彼がいい父親でいてくれる限りストレスのない永遠に続く快楽を届けるつもりだ。
 人は苦痛よりも快楽でこそ支配できる。
 
 複数人に毎日のように犯され続けて性的な道具のようにされて心が擦り切れたときに手を差し伸べた人間がいれば彼は間違いなく縋るだろう。
 
「ちゃんと録画しているか?」
 
 あくびをしながら組の跡取りが現れた。
 自分の愛しい子と同い年とは思えない悪辣な思考の少年。
 恋心を抱いている人間に対してなんとも雑な扱いをする。藤鳥には信じられないことだ。
 クラスメイトの父親に惚れるというのも相当異常だが、自分の力量と年齢を考えて一から相手の身体を開発するのではなく他人にオトさせてから自分で拾い上げるという行動に出た。
 この年齢でその選択が出来てしまうのが恐ろしい。
 
 息子と同い年ということもあって義父から警戒されず心の中に入っていける。
 そして肉体関係になったとしたら目の前の眠そうにしている少年ではなく義父は自分を責めるだろう。息子のために身体を張ったような精神構造の人間だ。
 肉欲にうずく身体を年下の少年に慰めてもらった情けない男、自分をそう思いながら少年から与えられる愛に甘えて逃げられなくなる。義父は弱い人間だ。
 
 藤鳥とやり方は違うが少年もある意味、頼られることを待っていた。
 
 普通なら大の大人は子供に甘えたりしない。
 いくら精神が弱くても虚勢を張るものだ。
 年齢差があればあるほど年上は大人の顔をする。
 仮に少年が告白したとしても息子と同い年である相手の言葉を真剣に受け取る人間はいない。
 クラス委員長として大人っぽくて組長の孫と言われても年齢差は埋められない。
 子供は子供でしかない。
 
 そのどうしようもない現実を砕こうとするのならそれ相応のシチュエーションが必要になる。
 
 たとえば孤立無援で精神的に疲弊しているとき。
 何も分からない子供でも頼ってしまう。
 何もわからないだろう相手だからこそ油断できる。子供だから安全だろうと思ってしまう。
 気を張り続けていることは誰もできない。
 気を緩めて隙を見せて相手を心の内側に入れてしまう。
 そうしたらもう、何があっても逃げ出せない。
 
 いま、義父が与えられている複数人からの暴力的な快楽。
 肉体的には最高だろうが精神的にはつらいだろう。
 組長の孫である少年は愛する相手にそれよりも極上のモノを渡せると断言していた。
 自分にはあふれるほどの愛があるから現在の凌辱行為など簡単に上書きできるのだと笑う。
 
「ホント、エロくてかわいい〜」
 
 早く自分の手で触れたい、抱きたいと口にしながら自分の部屋に戻っていく。
 少年は根っからの悪人だ。
 自分の行動を悪いと思っちゃいない。
 愛する相手を手に入れるために必要な行動だった。
 開き直りかもしれないが少年に罪の意識は芽生えていない。
 
 それでこそヤクザというべきか。
 
 いずれは自分の上に立つ相手として藤鳥は少年を認めている。
 男の趣味は最悪だし、執着心が相手にとって害悪だがやり方に文句はない。
 少年が居なければ藤鳥は愛しい子に会えなかったし、手に入れることも出来なかったのだ。
 
 喘ぎながら時折、思い出したように息子のことをたずねる義理の父ともいえる相手に藤鳥は心の中でエールを送った。
 
 
※アンケートの項目が結構該当している(と思っている)話です。
(「年上ヤクザ攻め」「言いなり下僕系(またの名を最上級ヤンデレ)」「ゲスクズ攻め」「腹黒画策年下攻め」が対応)

もうすこし主人公のぼくが成長したら藤鳥さんは「年上エロ紳士攻め」の姿を見せるかもしれません。
がっつかない紳士的なエロで攻める藤鳥さん。
そして腹黒画策年下攻めの本領発揮してエロエロなクラス委員長な組長の孫もちょっと見たいところです。
(コミュ障の押しに弱い性格の中年が淫乱開花した身体を持て余して罪悪感に駆られながら年下にぐちゃぐちゃに攻められるというのはロマンかな……って)

言いなり下僕(年下に対して敬語)に見せているゲスクズなヤンデレ攻めって最高ですね。
受けの前では良い子のふりです。便利に使ってねとか健気さを見せておいて実のところはっていう。

需要は置き去り……と思っていましたがアンケートで腹黒画策年下と言いなり下僕は票数あったので許されるかなと。調子に乗りました。


≫アンケート ≫拍手 ≫文章倉庫 ≫サイトtop
×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -