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  032 俺をチョロインって思ったやつは表出ろ


 水色の髪から以前に屋敷の中とはいえ裸に白衣だけという変質者な格好で歩いているところからしてベルトヤカの人間だろうツインテール。
 新しいベルトヤカに会うことになるとは思っていたけれど案外早い。
 A兄さんとの痴態を出会い頭に見せつけるという変態プレイをかました俺に白衣オンリーのツインテールを責める言葉は持っていない。
 何か言ったら全部跳ね返ってくるって怖い。他人を批難できるのは規則正しく清廉潔白な人だけだと実感した。今の俺に自分のことを棚に上げたツッコミとか出来るわけがない。
 
 着替えるかと聞かれたけれど、汚れは全部A兄さんに舐めとられたし気力ゲージの低下が著しいから好意に甘んじることが出来ない。
 さっきのことがなかったみたいなA兄さんの優しさが傷口に塩をすり込むような痛みになる。
 親切に苦しむなんて俺はなんて贅沢なんだろう。
 A兄さんに口内射精して蹴り飛ばすという最悪なことをしたにもかかわらず俺を見るA兄さんの目に蔑みなんかは全くない。
 
 膝を抱えて部屋の隅で落ち込んでいたいのに白衣一枚だけの変態さんはテンション高くテーブルを叩いている。
 
 昨日A兄さんと一番最初に顔を合わせた部屋だ。内装に覚えがある。
 お茶とビスケットというよりも乾パン的なものがテーブルに乗せられている。
 食事の時も思ったけど誰がいつ用意したんだ。
 部屋に入ったらすでに用意されていたお茶たちはちゃんと温かい。
 カップに注がれたお茶は赤茶色をしていてホコリなんか浮いていない綺麗なもの。
 濃い紅茶かと思って口にすればプーアル茶っぽい味つけ。
 でも、完全なプーアル茶でもない気がする。
 ブレンド茶かそもそも俺の知らないものが原料なのか。
 いつか用意している誰かと顔を合わせたりするかもしれないけれど、今回みたいなタイミングじゃないことを願うばかりだ。
 
「ビーちゃんかビー君って呼んでねん。びーさんはビーチサンダルの略称みたいだからノーグッド」
 
 Bにはビーチサンダルとかビーサンという単語が通用するらしい。
 いつからビーチサンダルがあったのか分からない俺ではあまり役に立たないけれど、覚えておくべきだろう。
 A兄さんが言っていたこと、Dと話していて思ったこと。
 記憶と経験、能力の継承の深度について俺は確認しておかなければいけない。
 
「ビーってだけだと淋しーから敬称はつけてねえん?」
 
 男が耳の上ぐらいの高さで二つ結びをしている衝撃なんかは白衣以外は靴しか履いてないことに比べると小さい。
 歩いている間、常時チンコがぷらぷらりん。フル勃起状態じゃないだけマシなのかもしれない。
 見せるのが好きな変態じゃなくて着るのが嫌いなだけな自由人だと思う方がダメージが少ない気がする。
 髪の長さは縛った状態でも胸辺りまである。
 風があったら綺麗になびくんだろうとDの腰まで届く髪を見ても思った。
 風呂以外で髪をまとめたりしていないけれど弄るのが好きな奴ならアレンジしたくなる細くて長い触れたくなる髪。
 それはBも同じでツインテールだけとりあげるとかわいくて似合っている気がする。
 けれど身長はA兄さんより若干小さいだけでDよりも上な気がするので百九十センチあるかないかぐらいだろう。
 縦にひょろっと長いわけじゃなくそれに見合った体格なので正直でかい。
 顔立ちはDと同じように美女系だけど体格のせいでオカマさん臭がするB。
 Dよりも釣り目で性格がきつそうに見えるから尚更ニューハーフ臭がするのかもしれない。
 腹に一物あったとしてもDは笑うと美しいと感じてしまうオーラがある。
 今のところBからは変態を覆すものは何もない。
 A兄さんと一緒にいると顔立ちは違うものの兄弟だっていうのがよく分かる。
 
「ハチ野郎さんはどうして白衣だけなんですか?」
「寒くないからだろう」
「Beeってこと!? オレがミツバチハニーなんて言われたの初めてだわぁ」
 
 Bの代わりに答えてくれたA兄さんにお礼を言いながら俺は乾パン的なものを食べる。口の中の水分が消えていく。お茶を飲む。乾パン的なものを食べる。お茶を飲む。エンドレスになる前にBが動いた。
 
「さっきからオレと目を合わさないのはどーしてさ!」
 
 自分がイッたのを見られたことが気まずい以外の理由があると思ってるのか。
 廊下でやらかしていたこっちが悪いのは百も承知してる。
 ただ恥ずかしいものは恥ずかしい。
 そして、全裸に白衣なんて姿の男を見つめる趣味もない。
 
「長男とはイチャイチャしてるクセに〜。なんですの? 贔屓ですかー?」
「彗星は禁断症状が出かかっているようだ。先程のは治療行為だからあまり気にするな」
 
 頭を撫でられて俺の気持ちは簡単に浮上した。
 A兄さんへの好感度が上がりすぎて怖い。このまま身も心も持ってけドロボーって言わせたいのか? そうなのか!?
 
「禁断症状が出かかってるならさっさと精液やればいいじゃん。長男はどんな時でも自由自在に勃起して射精できるんだから」
 
 Bが唇を尖らせてA兄さんを睨む。
 
 ちょっと待って、A兄さんは射精するにはムードとかどうとか言ってなかったか??
 
 嘘ですか? 俺は騙されましたか??
 いま泣いたカラスがもう笑うって、子供の感情は変わりやすいって、ことわざがあるけど俺の心境もそんな感じ。
 いまのトキメキがもう醒めた。
 浮かれたらすぐに水をぶっかけられるように出来てるのか。
 もう何なんだよ。酷い。
 

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チョロイン=ちょろいヒロインの略。主人公などにあっさり惚れるヒロインに対する言葉。
A兄さんの好感度は上がったり下がったりだから彗星には(まだ?)適応されない。

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