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  028 これはフラグが立ちました?


 
「陛下にお呼ばれされてますから、その時に何かしら貰ってくればいいんじゃないですか?」
 
 夏村流水がくれることが前提なのは気になるところだけど、一石二鳥だと思えば気にならない。
 いろいろと話すべきことは夏村流水に対してだってある。
 
 食後のお茶は気にしていなかったけれどプーアル茶風味。
 なんかこう面倒だからカップに精液入れといて俺にくれたりしないかとDをチラッと見る。
 搾りたてじゃないとダメなら今やってくれればいいし。
 
「それでは帰って来てスイが死んでいるとか悲しいことがないように長男はしっかりしてくださいね」
「オレはすぅちゃんのために果物でも手に入れてきてあげる〜」
 
 立ち上がるDに続くベルトル。
 果物っていうのはさっき言ってたミリリカの実ってやつか?
 
「この世界の交通手段って……徒歩?」
 
 蜜鳩みたいに空を飛べるのはきっと少数派のはずだ。
 ベルトルが笑って窓際に立ち俺を手招きする。
 口笛を吹きながら窓を開けるとお約束のように飛びかかってくる白い綿毛たち。
 毛玉というほどの密度がない分なんだか分裂しているように数が多い。

 俺の頭を目指している!!
 
 血の気が引いて動けなくなっている俺の代わりに後ろからA兄さんが手を一振りして追い払った。
 外は危険がいっぱいだ。ハゲになるのは勘弁だ。
 
「来た来た〜」
 
 突風によって綿毛たちは舞い上がる。
 庭をちゃんと見ていなかったけれどだいぶ広い。
 草木が多いようで少ないと思ったら、理由が分かった。
 
「ドラゴン?」
 
 たぶん口笛で呼ばれた生物なんだろうドラゴン的な存在が庭に下り立っている。
 ドラゴンに踏みつぶされて花とかがだいぶ圧縮されちゃっている。
 ベルトルに手を引っ張られてドラゴンの前に立つ。
 綿毛は遠くに飛ばされたのか見当たらないから外に出ても平気だろう。
 ふしゅーと息を吐いてるドラゴン様はファンタジーの醍醐味とばかりにさすがの風格を漂わせている。
 全長としては二十メートルぐらいなのかもしれないけど尻尾も首も縮こまらせてベルトルに視線を合わせようとしているドラゴン様。王道ファンタジーだったら主役級なのに腰が低い。
 
「すぅちゃん、この子はワイバーンだよ」
 
 なるほどWですね。わかります。
 移動手段がワイバーンなあたりファンタジーって感じだけど一家に一台ワイバーンなわけもないから庶民はどうしているんだろう。動かないのかな。それならもっと流通が発達してないと厳しい気がする。
 
「スイ、この子は食べても美味しくないですよ」
「大丈夫。食いしん坊キャラじゃないし」
「……彗星、焼きおにぎりならあるぞ」
「なんでそんなにピンポイントなの。焼きめしでもご飯オンリーでもいいじゃん」
 
 焼きおにぎり作れる材料があるならやりたい放題じゃん。
 それは素人考えなのか?
 そして、DにWの肉を食べようとしてる奴だと思われていることが地味にショックだ。
 火内優成に食べさせられた得体のしれない肉のせいで俺にはゲテモノ食いのイメージがついてるのかもしれない。
 Wが巨体に似合わない小心者ぶりで若干俺から距離をとったのもちょっと悲しい。
 
「呪いがかかっていて焼きおにぎり以外に使えない」
 
 誰だよ呪いをかけた奴。ベルトヤカのまだ見ぬ兄弟か?
 焼きおにぎり限定にお米を縛りつけるのはおかしいと思います。
 
「焼きおにぎり以外に使っても焼きおにぎりの味と食感しかしない」
「……あぁ、うん。素直に焼きおにぎり食べればいいね。焼きおにぎりは嫌いじゃないよ」
 
 三食焼きおにぎりなのは飽きるかもしれないけどパスタよりもいいかもしれない。
 パスタはマズくないけど俺にチーズへの渇望を深くさせてくるからつらい。
 ミートソースにパルメザンチーズをかけて食べる至福。
 クリーム系のパスタの濃厚な味わい。
 思い出すと食べたくなってくるから焼きおにぎりの方がいい。
 
「途中まで私も一緒に」
 
 Dがベルトルに告げるとWは頷いて体勢をさらに低くする。
 ガチャッと機械的な音がしたと思ったらWの鱗が階段のような形になった。
 疑問など浮かべることなくDは階段上の鱗を踏みしめていく。
 メカなんちゃら的なノリなのかベルトヤカの兄弟のために進化して鱗が動くようになったのか俺には分からない。
 ただWの背中で寝っ転がっているDは転げ落ちる心配をしていない。
 ベルトルがDの隣に座っても抱き寄せて安定させようという気遣いもない。
 大丈夫なのかとハラハラしていたらWは飛び立ってしまった。
 オパールのようなキラキラとした輝きを残していくWに俺は先延ばしにしていた事を聞くことにした。
 
「ベルトヤカは水色の髪とオパールみたいな瞳や毛色が特徴?」
「遊色効果を持つ物は多い」
 
 遊色効果っていうのはオパールみたいなユラユラ揺らめくような一定しない色合いのことだったはず。
 虹色に見える綺麗な輝き。
 人が持つ色彩じゃないから考えないようにしていたけれどA兄さんの瞳はブラックオパールそのまま。赤や緑が所々に散った黒を主体にした極彩色の輝きを放つ瞳なんて普通なら不気味なはずなのにしっくりくるから怖い。
 水色の髪は光の感じでよくある銀髪にも見えるからファンタジーを感じさせないけれどA兄さんの瞳は異常だ。
 ブラックオパールの瞳に水色の髪のリーゼントを貫くA兄さんに俺はどう反応していいのか分からない。紫のシャツは似合ってるけど何かおかしい。
 きっと胸元を広く開けて純金ネックレスつけたりしていないから気になるのかもしれない。
 白い背広に紫シャツ。顔は強面だけどヒゲはないというか全体的に体毛が薄い。全裸を何度も見ているせいでA兄さんが筋肉ついて綺麗な身体なのに滑らかな肌だっていうのは覚えてしまった。
 
「彗星が聞きたいのは陛下と会った建物……あの外壁に使われている素材か?」
 
 Zがステルスといってキラキラしだした時から気になっていた。
 オパールの輝き。あの何とも言えない虹色は共通点があるんじゃないのか、と。
 
「ベルトヤカの遺体を砕いて作り上げた建物だ。俺たちの骨はオパールだ」
 
 それは人と言えるのだろうか。
 
「ベルトヤカのもっとも古い言い方は『宝石人間』だ。今では失われてしまったかもしれない伝承。髪は水晶に、瞳は宝玉、骨すら煌めく宝石に変わる。……だから放っておくとベルトヤカはただの搾取される存在になってしまう。略奪されることを良しとしない祖先は神様と契約した」
 
 A兄さんはそう言いながら俺を室内に誘導する。
 どこからか現れた白い綿毛を払いのけつつ窓を閉める。
 綿毛は白いけれどキラキラと光っている。
 ぽわぽわしていて分かりにくいけれどZが発した輝きと同じものを持っている。
 先程飛び立ったWの全身と同じ色。白を下地に虹色の輝き。
 
「記憶を繋いで世界を守る鎖にする。たとえ世界が壊れてもベルトヤカが命綱になると約束した」
「それが……上手くいってない?」
「記憶が抜けているだけなら問題なかったんだが『嘘』が混じっている。彗星は本当を手繰り寄せることが出来る」
「どうして、俺?」
「病原体が……すべての元凶が彗星の名前を呼んでいた。いずれ面会されるが時間を切り刻んだ原因が病原体なら彗星が治すことも出来るはずだ」
 
 病原体ってウイルスのことだと思っていたけれど、しゃべるんだ。
 白い綿毛が思い浮かべてファンタジーって分からないなーと受け止めるしかない。
 
「俺の禁断症状ってどういう反応?」
「実際になった方がわかりやすい」
「Dは死ぬって言ってたんだけど」
「その前に対処しよう」
「……で、俺ってどうなるの?」
 
 A兄さんは結構口が軽い。
 言わないって言いつつ教えてくれるタイプだ。
 律儀が仇になると知れ。
 
「簡単にいうと発情する。そのままだと発狂する」
 
 発情して発狂ってやっぱりエロ漫画的展開なのか?
 
「症状が重かったら口からの摂取だと効果が薄くなる」
 
 直腸から摂ろうみたいなのはどうかと思います。
 だってそれって絶対フラグだよね。エロフラグだよね。


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